永田 |
それで、いちおうこの企画の趣旨として、
というか、もちろん本心からなんですけど、
僕が宇宙に行こうとした場合に、
という話をしたいのですが。 |
中川 |
ああ、はい(笑)。 |
永田 |
ええと、引っかかるのが、まず英語なんですけど、
これをまあ、無理矢理にマスターしたとします。
となってくると、ひっかかってくるのが
自然科学系の研究歴なんですけれど。 |
中川 |
あの、永田さんの専門はなんだったんですか? |
永田 |
ええと、いちおう経営学部でした。
ですので、宇宙にまったく役に立たないという。 |
中川 |
経営学部…そうしますと、
経営工学とか、いや、う〜ん、経営学部。うーん。 |
永田 |
いや、悩まなくていいです(笑)。 |
中川 |
でも、今後はわからないですよ。 |
永田 |
はい。あれですよね、
たとえば技術がどんどん進んでいって、
もっと大勢の人が宇宙に行けるようになれば、
条件もどんどん緩やかになっていくんですよね。
これはいまの狭き門に合わせた条件であって。 |
中川 |
そうですね。もっと多くの人が
宇宙に行くような時代になれば、
いろんな素養が求められると思いますので、
幅も広がっていくかと思います。 |
永田 |
それを心から期待してます。 |
中川 |
あと、今日お話ししたのはあくまでも
宇宙開発事業団が募集している
宇宙飛行士の話なんですけれども、
それ以外に宇宙に行く方法がもうひとつあって。
あの、昨年、アメリカの実業家の
デニス・チトーさんという人が……。 |
永田 |
ああ、はいはい! |
中川 |
ソユーズの搭乗権利を自費で購入して
宇宙に行きました。つまりこれが最初の……。 |
永田 |
宇宙旅行! |
中川 |
そういうことになりますね(笑)。 |
永田 |
あれは、どういう権利を買ったんですか? |
中川 |
あれはですね、どういうことかといいますと、
宇宙ステーションには緊急帰還用のソユーズが
つねにドッキングしている状態なんです。
ただ、ずっとドッキングしていると
やはり古くなってしまいますので、
定期的に新しいものと取り替えるんです。
そうすると、新しいソユーズで行って、
古いソユーズで帰ってくるんです。
こういうフライトが年に数回あるんです。
そのフライトのとき、
パイロット以外にふたつ席があるんですけど、
チトーさんは自費でその席を購入したわけです。 |
永田 |
それはつねに空いてるんですか? |
中川 |
ソユーズは本来3人乗りなんですよ。
ただし、そのフライトの目的というのは
新旧のソユーズを入れ替えるだけですから、
ひとり分、席が空く場合があるんです。
もちろんほかのミッションが絡んでいるときは
3人が乗りますけれど、とくに必要ないときに、
ロシアが売却することがあるんです。 |
永田 |
なるほど。いくらだったんでしたっけ? |
中川 |
2000万ドルです。 |
永田 |
ていうことは……。 |
中川 |
いまのレートでいくと、25億円くらいですね。 |
永田 |
わー。 |
中川 |
それをポンと出して宇宙に行ったんです。
ちなみに彼も、宇宙に行くのが
子供のころからの夢だったそうです。 |
永田 |
わかりますよ。僕も25億あれば! |
中川 |
(笑) |
永田 |
でも、「25億くらいなら出す!」っていう人が
世界にはけっこう……。 |
中川 |
そうなんですよ。
多くの人が手を挙げているという話です。
2番目の人は南アフリカの人なんですけど、
今年の4月に宇宙に行く予定になっています。 |
永田 |
ああ、そうなんだ。いいなー。 |
中川 |
たしか、その人は28歳です。 |
永田 |
えっ! …マジかよ、年下じゃん。 |
中川 |
まあ資金的にいまは現実的ではありませんけど、
民間の利用が始まったというのは
特筆すべきことかと思います。
あと、最近ではスポーツ飲料のCMに……。 |
永田 |
はい! ポカリスエット!
あれ、最高ですね! |
中川 |
あははははは。
ええと、あれは実際に宇宙ステーションで
撮影しています。地上から指示を送って、
宇宙飛行士がカメラを持って。 |
永田 |
あ、じゃあ、大塚製薬の人が同乗したとか
そういうことではなく。 |
中川 |
そういうことはありません(笑)。
これも民間に利用が拡大したということで
意義のあることだと思います。 |
永田 |
なるほど。ついでに聞きますけどペプシは? |
中川 |
ああ〜、何年か前の企画ですか? |
永田 |
そうですそうです。 |
中川 |
あれはですね、正確には弾道飛行なんです。 |
永田 |
弾道…あ、そうか、
じゃあ軌道に出るだけというか、
宇宙にちょっと顔を出すだけというか。 |
中川 |
そうですね(笑)。
そもそもどこから上を宇宙と呼ぶのかは、
定義がふたつありまして、
アメリカの空軍が指定しているのが、
80キロメートル以上。 |
永田 |
80キロ! 80キロ上に上がれば宇宙なんだ。
じゃあ、すげえジャンプして80キロ行けば宇宙。 |
中川 |
そうですね(笑)。
国際航空連盟は100キロ以上としています。
ペプシの例は、ある民間の会社が
企画していたものなんですけど、
弾道飛行しながら規定の高さを超えて、
数分間無重力を体験して帰ってくるものです。
ですから、実現すればそれもいちおう、
宇宙旅行と呼ぶことはできますね。 |
それにしても、宇宙宇宙とうるさいですね、僕が。
こんな僕を不憫に思ったのか、
中川さんはこんな話を切り出してくださいました。 |
中川 |
そういえば、ジャーナリストとして
宇宙に行くという手もありますね。
日本で最初に宇宙に行ったのも、
NASDAの人間ではなくて、
ジャーナリストの秋山さんでしたから。 |
永田 |
ああ、はいはい。
「これ本番ですか?」が第一声だったという。 |
中川 |
そうですそうです(笑)。 |
永田 |
あれはショックでした。
宇宙飛行士は超人ではないんだなと思いました。 |
中川 |
あははははは。 |
永田 |
あれはどういう経緯で? |
中川 |
あれはTBSがお金を出して、
搭乗権を獲得したという形です。
…私、あのときはアメリカにいたんですけど、
別の意味でショックでしたね。
あのときもう、毛利が選ばれて
訓練を受けてたんですけど、
チャレンジャー号の事故があって、
搭乗が伸びてたんですよ。
それで先を越されてしまったという。 |
永田 |
あ、そうだったんですか。 |
中川 |
その後、ジャーナリストが
宇宙に行ったことはないと思います。
今後、多くの人が宇宙に行くようになれば、
ジャーナリストも求められるでしょうから、
ぜひ、軌道上で、この『怪録テレコマン』を…。 |
永田 |
ああ、いや、もう、はい、そんな、ぜひ。 |
ここで正直に告白しますが、
100パーセントのリップサービスだとわかっていても
宇宙開発事業団の人に「ぜひ」と言われて、
本気で僕はドギマギしておりました。
ドギマギついでに、こんなことも聞いております。 |
永田 |
これもう、ホントにぶっちゃけた話ですけれども。 |
中川 |
はい。 |
永田 |
中川さんの私見で、
僕が宇宙に行くとするなら
こういう方法がいちばん近いだろうとか、
こういう技術を身につけて応募するべきだとか、
そういうアドバイスをもらうとするならば? |
中川 |
そうですねえ…これはまったく個人的な意見で、
NASDAとしての言葉ではありませんけども。 |
永田 |
はい、もちろん。 |
中川 |
…大学に入り直すとか? |
永田 |
はあああああ。 |
中川 |
いまは社会人入試とかありますし。
学士入学とか、2年間くらいで、
理工系の学位を取るのが早道じゃないですかね。 |
永田 |
なるほどなるほど。
じゃあ、大学に入り直して
理工系の研究をしつつ英語を学ぶ、と。 |
中川 |
そうですね。可能性は出てきますね。
それかスポンサー見つけて25億用意するか(笑)。 |
永田 |
あははははは。
大学入試やり直しと25億の二択かあ(笑)。 |
中川 |
(笑) |