NAGATA
怪録テレコマン!
hiromixの次に、
永田ソフトの時代が来るか来ないか?!

第41回 テレコマン、宇宙へ行く 〜その5〜

さあ、いよいよ核心に近づいていきます。
そのために僕はここに来たのだともいえます。
つまり、僕が宇宙に行くためにはどうすればいいのか、
という話です。
ああ、まったくもって個人的な話で申し訳ありません。
しかしながら、好奇心の塊と化してしまっている僕は、
すでに臆面もなくつぎのように口走っているのです。

永田 それで、いちおうこの企画の趣旨として、
というか、もちろん本心からなんですけど、
僕が宇宙に行こうとした場合に、
という話をしたいのですが。
中川 ああ、はい(笑)。
永田 ええと、引っかかるのが、まず英語なんですけど、
これをまあ、無理矢理にマスターしたとします。
となってくると、ひっかかってくるのが
自然科学系の研究歴なんですけれど。
中川 あの、永田さんの専門はなんだったんですか?
永田 ええと、いちおう経営学部でした。
ですので、宇宙にまったく役に立たないという。
中川 経営学部…そうしますと、
経営工学とか、いや、う〜ん、経営学部。うーん。
永田 いや、悩まなくていいです(笑)。
中川 でも、今後はわからないですよ。
永田 はい。あれですよね、
たとえば技術がどんどん進んでいって、
もっと大勢の人が宇宙に行けるようになれば、
条件もどんどん緩やかになっていくんですよね。
これはいまの狭き門に合わせた条件であって。
中川 そうですね。もっと多くの人が
宇宙に行くような時代になれば、
いろんな素養が求められると思いますので、
幅も広がっていくかと思います。
永田 それを心から期待してます。
中川 あと、今日お話ししたのはあくまでも
宇宙開発事業団が募集している
宇宙飛行士の話なんですけれども、
それ以外に宇宙に行く方法がもうひとつあって。
あの、昨年、アメリカの実業家の
デニス・チトーさんという人が……。
永田 ああ、はいはい!
中川 ソユーズの搭乗権利を自費で購入して
宇宙に行きました。つまりこれが最初の……。
永田 宇宙旅行!
中川 そういうことになりますね(笑)。
永田 あれは、どういう権利を買ったんですか?
中川 あれはですね、どういうことかといいますと、
宇宙ステーションには緊急帰還用のソユーズが
つねにドッキングしている状態なんです。
ただ、ずっとドッキングしていると
やはり古くなってしまいますので、
定期的に新しいものと取り替えるんです。
そうすると、新しいソユーズで行って、
古いソユーズで帰ってくるんです。
こういうフライトが年に数回あるんです。
そのフライトのとき、
パイロット以外にふたつ席があるんですけど、
チトーさんは自費でその席を購入したわけです。
永田 それはつねに空いてるんですか?
中川 ソユーズは本来3人乗りなんですよ。
ただし、そのフライトの目的というのは
新旧のソユーズを入れ替えるだけですから、
ひとり分、席が空く場合があるんです。
もちろんほかのミッションが絡んでいるときは
3人が乗りますけれど、とくに必要ないときに、
ロシアが売却することがあるんです。
永田 なるほど。いくらだったんでしたっけ?
中川 2000万ドルです。
永田 ていうことは……。
中川 いまのレートでいくと、25億円くらいですね。
永田 わー。
中川 それをポンと出して宇宙に行ったんです。
ちなみに彼も、宇宙に行くのが
子供のころからの夢だったそうです。
永田 わかりますよ。僕も25億あれば!
中川 (笑)
永田 でも、「25億くらいなら出す!」っていう人が
世界にはけっこう……。
中川 そうなんですよ。
多くの人が手を挙げているという話です。
2番目の人は南アフリカの人なんですけど、
今年の4月に宇宙に行く予定になっています。
永田 ああ、そうなんだ。いいなー。
中川 たしか、その人は28歳です。
永田 えっ! …マジかよ、年下じゃん。
中川 まあ資金的にいまは現実的ではありませんけど、
民間の利用が始まったというのは
特筆すべきことかと思います。
あと、最近ではスポーツ飲料のCMに……。
永田 はい! ポカリスエット!
あれ、最高ですね!
中川 あははははは。
ええと、あれは実際に宇宙ステーションで
撮影しています。地上から指示を送って、
宇宙飛行士がカメラを持って。
永田 あ、じゃあ、大塚製薬の人が同乗したとか
そういうことではなく。
中川 そういうことはありません(笑)。
これも民間に利用が拡大したということで
意義のあることだと思います。
永田 なるほど。ついでに聞きますけどペプシは?
中川 ああ〜、何年か前の企画ですか?
永田 そうですそうです。
中川 あれはですね、正確には弾道飛行なんです。
永田 弾道…あ、そうか、
じゃあ軌道に出るだけというか、
宇宙にちょっと顔を出すだけというか。
中川 そうですね(笑)。
そもそもどこから上を宇宙と呼ぶのかは、
定義がふたつありまして、
アメリカの空軍が指定しているのが、
80キロメートル以上。
永田 80キロ! 80キロ上に上がれば宇宙なんだ。
じゃあ、すげえジャンプして80キロ行けば宇宙。
中川 そうですね(笑)。
国際航空連盟は100キロ以上としています。
ペプシの例は、ある民間の会社が
企画していたものなんですけど、
弾道飛行しながら規定の高さを超えて、
数分間無重力を体験して帰ってくるものです。
ですから、実現すればそれもいちおう、
宇宙旅行と呼ぶことはできますね。
それにしても、宇宙宇宙とうるさいですね、僕が。
こんな僕を不憫に思ったのか、
中川さんはこんな話を切り出してくださいました。
中川 そういえば、ジャーナリストとして
宇宙に行くという手もありますね。
日本で最初に宇宙に行ったのも、
NASDAの人間ではなくて、
ジャーナリストの秋山さんでしたから。
永田 ああ、はいはい。
「これ本番ですか?」が第一声だったという。
中川 そうですそうです(笑)。
永田 あれはショックでした。
宇宙飛行士は超人ではないんだなと思いました。
中川 あははははは。
永田 あれはどういう経緯で?
中川 あれはTBSがお金を出して、
搭乗権を獲得したという形です。
…私、あのときはアメリカにいたんですけど、
別の意味でショックでしたね。
あのときもう、毛利が選ばれて
訓練を受けてたんですけど、
チャレンジャー号の事故があって、
搭乗が伸びてたんですよ。
それで先を越されてしまったという。
永田 あ、そうだったんですか。
中川 その後、ジャーナリストが
宇宙に行ったことはないと思います。
今後、多くの人が宇宙に行くようになれば、
ジャーナリストも求められるでしょうから、
ぜひ、軌道上で、この『怪録テレコマン』を…。
永田 ああ、いや、もう、はい、そんな、ぜひ。
ここで正直に告白しますが、
100パーセントのリップサービスだとわかっていても
宇宙開発事業団の人に「ぜひ」と言われて、
本気で僕はドギマギしておりました。
ドギマギついでに、こんなことも聞いております。
永田 これもう、ホントにぶっちゃけた話ですけれども。
中川 はい。
永田 中川さんの私見で、
僕が宇宙に行くとするなら
こういう方法がいちばん近いだろうとか、
こういう技術を身につけて応募するべきだとか、
そういうアドバイスをもらうとするならば?
中川 そうですねえ…これはまったく個人的な意見で、
NASDAとしての言葉ではありませんけども。
永田 はい、もちろん。
中川 …大学に入り直すとか?
永田 はあああああ。
中川 いまは社会人入試とかありますし。
学士入学とか、2年間くらいで、
理工系の学位を取るのが早道じゃないですかね。
永田 なるほどなるほど。
じゃあ、大学に入り直して
理工系の研究をしつつ英語を学ぶ、と。
中川 そうですね。可能性は出てきますね。
それかスポンサー見つけて25億用意するか(笑)。
永田 あははははは。
大学入試やり直しと25億の二択かあ(笑)。
中川 (笑)

というわけで、困難とはいえ、
具体的なアドバイスをいただきました。
困難ではありますが、不可能ではありません。
いかなる高山でも登ろうとすれば道はあるのです。
と、やや無軌道に意を決する僕ですが、
とりあえず次回が宇宙編の最終回になります。


Love & Space!!


2002/02 筑波宇宙センター

2002-03-12-TUE

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