永田 |
とりあえずさ、なんでも言ってみようよ。 |
天野 |
そうですね。どんどん挙げていく方向で。 |
針生 |
ええと、じゃあ……タッパウェア。 |
永田 |
またずいぶん地味なモチーフを(笑)。 |
天野 |
それ、どこが俺なの? |
永田 |
「どこが俺なの?」(笑)。 |
天野 |
だって俺がやるんでしょ、タッパウェアを。
タッパウェアのどの部分が俺なの? |
針生 |
……フタかなあ。 |
天野 |
なに、俺がこう、べろんってなって、
びたんって倒れて「タッパウェア」って言うの? |
針生 |
そうそう。その前に、子どもの声で
「さぁ〜て、あっためなくっちゃあ」って流れる。 |
永田 |
演出は最後でいいの(笑)。 |
針生 |
でも、こうやって、思いつくままに
どんどん出していくしかないよね? |
永田 |
タッパウェアはともかく、
話の進め方としては、そうするしかないかなあ。 |
針生 |
ええと、なんか、パンが焼けたりするの、どう? |
永田 |
う〜ん、お餅とか、焼くものは多いんだよね。 |
針生 |
ああ〜、ふくらんでくるやつだ。 |
永田 |
焼くものっていうか、
火にかけるものは名作が多いから。
『サザエの壺焼き』とか『スルメ』とか。 |
天野 |
あー、『スルメ』、あった。 |
針生 |
よくできてたねえ。 |
永田 |
おまえ、ホントよく見てるな。
俺らと変わんないよ。 |
針生 |
じゃあ、ドア! 自動ドア。 |
天野 |
だから、どこが俺なのよ。 |
針生 |
天野さんが左右に真っ二つに分かれる。
審査員もお客さんも大喝采。 |
永田・
天野 |
それ手品じゃん! |
針生 |
……ホントだ。 |
天野 |
エスカレーターっていうのはどうですかね。
なんかこう、奥行きがあるようなもので、
立体感を表現するのっていいと思うんですよ。 |
永田 |
ああ、うん。わかるけど、具体的にどうする。 |
天野 |
う〜ん。 |
針生 |
……コピー機は? |
永田 |
……天野はどこ? |
針生 |
…………トナー。 |
永田 |
……真面目にやれよ。 |
天野 |
印刷されていく様子っていうのはおもしろいかも。 |
永田 |
あ、デジカメは? こっちで移したものが、
こっちでパッと表されるっていう。
(紙に図を描きながら)こんな感じでさ。 |
天野 |
ああ、人文字みたいな感じだ。 |
永田 |
う〜ん、いまひとつか。でも、そういう、
時代を反映させたようなテーマはいいかもね。
ITっぽいものとか、デジカメとか。
あ、マウスは? |
針生 |
俺もいまそれ思った。 |
永田 |
マウスをこう動かすと、
こっちでカーソルが動くっていうような。 |
針生 |
うん。天野さんがマウスで、ダーッと動くと、
カーソルの永田さんがダーッと動く。 |
永田 |
カーソル、俺なの? |
天野 |
矢印の真ん中に顔が出てる感じ。 |
永田 |
だから、顔塗るの勘弁してよ。 |
天野 |
いっしょに塗りましょうよ。 |
針生 |
でも、マウスはちょっといいかも。 |
永田 |
じゃあ、こういうの、どう?
マウスを動かすと矢印が動くんだけど、
モニターの中を動くんじゃなくて、
会場全体をカーソルが動き回るっていう。 |
針生 |
なになに、どういうこと? |
永田 |
だから、こう、マウスパッドがあるとして……。 |
天野 |
ふむふむ。 |
<20分ほどマウスについて議論> |
永田 |
ざっとこんな感じかな。 |
針生 |
ちょっと大がかりだね。 |
永田 |
大がかりだねえ。
あと、問題はダブルクリックしたときの
画面の動きをどう表現するか。 |
針生 |
でも、悪くないと思うなあ。 |
永田 |
う〜ん、肝の部分が後回しってのが引っかかる。
とりあえず、これは置いとこう。 |
天野 |
でも、ここを置いとかずに、考えることこそが、
人が思いつかないことを思いつくことに
つながるんじゃないですか? |
永田 |
じゃあ、あえて、ここを追求する? |
天野 |
そのほうがいいかなあと。 |
針生 |
でも、そもそも完成したとして、
どれくらいのインパクトを持つのかが疑問。 |
永田 |
う〜ん、そうかも。あと、気になるのは、
ちょっと大がかりすぎるっていうか──。 |
針生 |
張り子っぽい? |
永田 |
張り子っぽい。もっと身体の動きを見せたい。 |
天野 |
ですねえ。 |
永田 |
だから、ちょい置いとこう、これは。 |
針生 |
でも、悪くないよ。この調子で行こう。 |
天野 |
どんどん挙げよう。 |
針生 |
マッサージチェアってのはどう? |
永田 |
モミモミするやつが上がったり下がったり? |
天野 |
ちょっと地味だなあ。 |
針生 |
う〜ん、じゃあ、
マッサージチェアでマッサージされてるんだけど、
実際には、マッサージチェアがない!
ひとりでマッサージされてることを表現! |
永田・
天野 |
それパントマイムじゃん! |
針生 |
……ホントだ。 |
永田 |
じゃあ、逆は? イスだけあって人がいない。 |
針生 |
「ああ、気持ちいいなあ」って声が入るんだ。 |
永田 |
なんかありがちだなあ(笑)。 |
針生 |
それがだんだんオーバーになっていくってのは?
声も「ぎゃあ、やめろ!」とかに。 |
天野 |
「もっと右、右!」「それは左!」みたいな。 |
針生 |
そうそう(笑)。 |
永田 |
それ、ただのコントだよ。 |
針生・
天野 |
……ホントだ。 |
針生 |
あの、どうもさっきから、俺の頭の中に、
中村有志がいるんですよ。 |
永田 |
パントマイムから離れろ。
でも人がいないっていうのは、
なんかちょっと、いいかなあ。 |
天野 |
人がいない? |
永田 |
たとえばその、わかんないけど、空き地があって、
そこで野球をしてるっぽいんだけど、
人がいないっていうような。 |
天野 |
ああ、砂埃が上がったり──。 |
永田 |
そうそう。ベースがザシュッってへこんだり。
で、最後にボールが隣の家に入って
ガシャーンって窓が割れて──。 |
天野 |
カミナリ親父が「こらーっ」って言った瞬間に、
得点のボードがドルルルルルルッって。 |
針生 |
チャカチャチャーチャチャチャー! 合格です! |
一同 |
(笑) |
天野 |
いいんじゃないですか? |
針生 |
うん、それ、おもしろいよ。 |
永田 |
いいかな? |
天野 |
……でもなんか見たことある気がするけど。 |
永田 |
……じつは俺もそう思ってる。 |
針生 |
じゃあダメじゃないですか! |
永田 |
う〜ん、シンプルだけど、だるま落としとかは? |
天野 |
だるま落とし? |
永田 |
カコンって音がすると、ここがこうズレて、
くり返してだんだんズレていって、見てるほうは、
「ああ、あそこに人が入ってるんだな」って
思うんだけど、最後に一番下の段が
カコンってズレるの。 |
天野 |
それ、手品じゃないですか。 |
永田 |
……ホントだ。 |
針生 |
永田さん、それ、ただの手品ですよ。 |
永田 |
……手品のどこが悪い! |
天野 |
逆ギレやめましょうよ。 |