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中沢 |
贈与、という言い方をしましたが
芸術作品ってなんだろうと考えたら、
贈与以外の何ものでもないですね。
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タモリ |
そうですね。
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中沢 |
芸術家は
商品を作ろうと思って
やっているわけではないでしょう。
インスピレーションなんていう言葉自体が
贈与と深く関わっているわけですから。
ある意味でいうと
無から形を作りだしているわけですね。
そして、そういう意味でいうと
神が行った贈与というのと
昔の人が言ったのと同じことを
芸術というのはやっているわけで、
そうすると絵なんかでも、
絵は芸術だというよりも
そこの根底にあるものには
何か別の意味があるのではないか。
たとえば今、
贈与なんていう言葉もありましたけれども、
「交換以外のなにか別のもの」が
今は大事になっていて、
これを表にひっぱりだしてきて
いろんなところで交流させていく……
そのための合い言葉みたいに
芸術という言葉を使おうとしているんですね。
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糸井 |
そうですね。
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タモリ |
みんな、なんか絵を描いたり、
ショーをやれっていうことではなくて。
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中沢 |
そうですね。
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糸井 |
タモリさんが
急に酒場で歌いだすのも贈与ですよね。
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タモリ |
ストリップやるのも贈与ですね。
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中沢 |
贈与ですね。
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糸井 |
おしりにロウソクさすのも……。
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タモリ |
贈与ですね。
あれは私はやりませんけれども。
試したんです。すごく痛いので……。
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糸井 |
(笑)あぁ、そうですか。
最近ではそれが
非常に典型的に見えているのが
セントラルパークで去年あった
クリストの「ゲート」ですよね。
対価はまず分からないんだけれども、
実は現代の資本主義の仕組みの中で、
計画と写真集みたいなものを
28億円のクリストが
ぜんぶ自前で出したものを回収して、
次のアートにまた転換できるっていうだけの
仕組みがあの中にあるらしいですね。
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中沢 |
すごくあたらしいですね。
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タモリ |
そうなんだ。
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中沢 |
芸術人類学っていうのも
そういうふうな
贈与のかたちにしたいんです。
研究者が集まってやる、
っていうのではなくて、
贈与のダイナモのようにして
押しだしていきたいんですね。
……というようなことを話していたら
タモリさんが、
「それは
中洲産業大学の建学の精神と同じだ」
っておっしゃるので。
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糸井 |
らしいんですよね。
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タモリ |
「中洲産業大学」というのは
本当にくだらないだしものに
見えるんです。
……まぁ、本人の私は
くだらないとは
思っていないんですけれども
本当は将来はそういうふうにして、
ジャンルなくいろんな人に
参加してもらうはずだったんです。
学者ももちろん、
一般の人も、学生も集まって
それまで解明しなかったこととかを
考えるという……
他異分野を入れることによって
科学的なものとは違うものが
証明されたりなんかするという、
そういうことをやりたいなと、思って、
一回やったことがあるんですよ。
本当に小規模に。大学の予備校で
夏期講座というのも
ずいぶん昔に
やったことがあるんですけれども。
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糸井 |
学際的な、よく言えば。
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タモリ |
えぇ。さほどの手応えも反響もなく。
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中沢 |
(笑)
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糸井 |
あぁ、そうですか……。
お客さんがまだ若かったんじゃないですか。
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タモリ |
若かったんですね。
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中沢 |
今は、大丈夫です。
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糸井 |
例えば、今日、
ここに来てくださった方がいる、
ということがなかったら、中沢くんは
あんなに熱が入らないわけじゃないですか。
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中沢 |
そうなんですよ。
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糸井 |
つまり、
誰もいないところで
今の話をやれ、と言っても、ね?
こういう環境だからこそ、の
うねりがあるもんね。
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中沢 |
だってこんなにいるんだもん。
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タモリ |
ほぉ……。
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糸井 |
いただいたものを元にして
関係がはじまっているということ自体が
「ありがとうございます」なんですよ、
とか、お年寄りはよく言うじゃないですか。
あれが、実感的な、
贈与でありアートであり、なんですよね。
そもそも、人そのものが
勝手に生まれてきたわけじゃなくて
命をいただいたものじゃないですか。
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中沢 |
だから、岡本太郎さんは
芸術は爆発だなんていうことを
言っていましたが、
生命は爆発なんですよね。
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タモリ |
うんうん。
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中沢 |
岡潔さんは
文化勲章をもらいました。
昭和天皇に呼ばれていくでしょう。
そして昭和天皇が授賞式で
「数学というのはどういう学問ですか?」
と聞いたらしいんですよ。
そこで、岡潔が
「生命の燃焼であります」
とこたえたそうです
となりにいた吉川英治が非常に感動して
「あなたいいこと言うね」と。
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タモリ |
へえー……。
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中沢 |
数学は生命の燃焼、
もっとも美しい燃焼だと。
これってすごいですよね。
芸術もそうなんですよね。
だから燃焼であり、爆発だと言った
岡本太郎の言い方というのは
まったく正しいですよね。
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糸井 |
うん。
(明日に、つづきます)
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2006-02-01-WED
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