『とめきち配達日記』(2)
旅する生茶 〜静岡篇〜
行ってきました。
まず、ひとつめの旅は静岡へ。
朝7時。
留吉の愛車マーチくんに乗って。
東名高速で静岡まで一直線。
旅はハプニングがつきもの。
「やばい、ガソリンが無い!」
ゲージがゼロまで後ちょっとじゃないですか。
スパイ大作戦の曲が頭で鳴り出しました。
「次のパーキングまで58km……」
焦りました。
しかもガソリンが減りそうな、上り坂ばかりです。
パーキングが一向に見えてきません。
その時、すでにゲージはゼロを切ってました。
「こういう時ってコントみたいに煙が出てくるのかな?」
出ませんでした。
なんとかパーキングに辿り着きました。
そうこうしてるうちに、待望の静岡に到着しました。
11時30分、静岡駅で車をとめ、
ショッピングカートに生茶2ケース積み、
生茶ジャンパーを装着。
いざ、目的地へ!
「お、重い……」
そりゃそうです。2ケースで25kgですよ。
突然、演出良く雨まで降り出しました。
留吉には団子でも食いながらの、
ぶらり旅な余裕が無くなりました。
その辺のおじさんに目的地への道のりを聞くと、
ここからは遠いらしく、引きずってる生茶を見て、
「無理だね」と、言いました。
すぐ、バスに乗りました。
下川原団地という終点で降りて、
そこから少し行くと駿河湾の海が広がっているらしく、
「そこでよくクロダイを釣ってる」という
バスの運転手さんとベンチに座って一服しました。
郵便局のお兄さんに目的地を尋ねると、
ここから20分ぐらいの所で、
“へっぱ橋”を渡ると左にあると教えてくれました。
生茶とともに雨上がりの小道を歩いて行くと、
“へっぱ橋”にさしかかりました。
橋の下でおじさんが昼寝をしてました。
「何やってるんですか?」
「寝てんだよ」
「…………」
“へっぱ橋”を過ぎると、目的地が姿を現しました。
静岡広野病院です!
さっそく、玄関に向かうと、
「歓迎 豆屋留吉様」
うれしいじゃないですか。
しかも大勢の人がいない。拍手喝采なし。
理想どおりの到着ぶりでした。
「すいませーん」
「……自販機はあちらですが。」
「……ま、豆屋留吉です」
「あ、ちょっと待ってください」
どうやら、飲料メーカーの人だと思われたらしく、
生茶ジャンパーを着た姿を鏡で見つめていると、
「ようこそいらっしゃいました!」
応募してくれた渡辺浩さんです。
「他の方たちは……?」
「豆屋一人です」
「ははははは」
「いや、あのう……」
「とりあえず奥へ、生茶は僕が運びますから」
「あ、ども」
「……お、重い。これ、留吉さん一人で」
「ええ」
「それから“使用上のご注意”
みんなに配っておきましたので」
「どうりで」
応接室に案内されました。
窓の外には桃畑が広がってました。
「もうすぐ、ここは桃の花でいっぱいになるんです。」
「ほう」
「お昼、食べました?」
「いえ」
「よかったら、我々も患者も食べてるもの食べます?」
「はい」
検食といって、スタッフが
カロリーや栄養を考えて作ってるそうです。
カラスがれいの揚げおろし煮、茄子の炒め物、
ビシソワーズ スープ、フルーツヨーグルト。
おいしかったです。
「院長の坂元隆一です」
「どうも」
「ミュージシャンじゃなくて医者ですが。がははははは」
「……はは」
「うちは131名の職員と、160名の患者が入院しています。
ちょっと院内案内しますよ」と、
韻を踏んで(院内案内)いただき案内してもらいました。
3階建てと6階建ての2病棟がありまして、
各病室、患者さんの浴室、くつろぎ場、
リハビリ室、ナースステーションと案内される中、
どデカイAVシアター室とサウナ室があって
びっくりしました。
「今は使ってないですが、
たまにAVシアターでビデオ見てます。
まだ検討中なんですけど、いずれまた
患者さんに利用してもらいたいんですよねえ」
その時はTVが流れてて、
大画面でおすぎさんを見る事が出来ました。
その後、先程の検食を作ってる部屋を見ました。
管理栄養食の方が、ホイップやババロアを作ってました。
「明日は月に一度、患者さんのバースデーパーティーで、
ケーキやデザートを今作ってるんです」
今まで作ってきたデザート集を見せてもらいました。
どれも手のこんだ物で、カロリーも考えてるそうです。
「これから患者さんのレクリエーションの時間なので、
留吉さんも参加してみてはどうです?」
「はい、ぜひとも」
入院している患者さんの平均年齢は82歳だそうです。
広場では童謡を歌ったり、手芸をやってたり、
留吉は患者さんと貼り絵をやりました。
朝顔の絵でした。
「上手だねお兄さん」
「あ、ども」
「でもそこは明るい色の方がいいかもよ」
「僕は紫がいいかなと思って……」
「金よ!」
「朝顔に……き、金?」
貼り絵を通して患者さんとふれあう事ができました。
そして、今回の留吉のテーマでもあります、
病院といえば看護婦、
看護婦といえばシーツの張り替え、
シーツといえば屋上で干す。
実行すべく屋上に向かいました。
「無理ですね」
またもや雨がザーザー降ってました。
断念しました。
「何か手伝うことありますかね?」
「特にないですね」
「そうですか」
「せっかくですから、職員と生茶を飲みましょうか」
「飲みましょう!」
各階のナースの所へ生茶を持っていきました。
忙しいせいか、“使用上のご注意”を読んでるせいか、
はたまた本当にメーカーの人に
間違えてるような対応の方もいました。
最後は渡辺さんをはじめとする
お医者さんグループと一緒に生茶を飲みました。
生茶を配り終えると、静岡の旅も終えたような
いい気分になりました。
「私たちは病院というより、
介護の部分に力をいれてるんですよね」
「そうなんですか!」
「変わってるところは、渡辺さんのおかげで、
パソコンが導入されまして、
メールで患者さんとやりとりしたり、
ホームページを作ったりと、
我々じたい若いので、新しい事を
やっていくつもりなんです」
「じゃあネットを通じて病院に来る方も中には?」
「いますよ。あと、知ってます?
お茶と医療の意外な関係」
「え?」
「お茶風呂で床ずれや水虫を治せるんです」
「カテキン効果ですか?」
「医学的にも注目されてるんですよ」
「生茶風呂、今度やってみようかなぁ」
「あと、知ってます? 静岡のはんぺんは、黒いんです」
「え? それは……」
「白いはんぺんなんて、はんぺんじゃない!
猫さえも、黒いはんぺんじゃないと食べない!」
「……食べると思いますよ」
などなどお話をしてるうちに17時になり、
留吉は病院に別れを告げることにしました。
すると、渡辺さんが、
「よかったら静岡駅周辺を案内しますよ。
夕飯でも一緒にどうですか?」
「それはそれは、ぜひとも」
渡辺さんと駅周辺を散歩しました。
けっこう昔からそのままのお店が並んでました。
ひときわ留吉の目を惹いたのが、
ギリシャの建物のような神殿のような、静岡市役所でした。
「あ、そこがナカヤス君ちで、ここがオキツ君ちで、
あそこがタケイ君ちです」
「知らないですから。いきなり名前言われても」
「同級生です(笑)」
「ふ〜ん……ってバカ!(笑)」
「実は先日、同窓会をやりましてね、
20年ぶりに小学校のタイムカプセルを開けたんですよ。
作文です。将来なりたいものという題名で」
「おお! カメラ屋さんすか?」
「外れましたね。僕はなぜか、社長。漠然と。
しかもダメだったら俳優ですって。
で、ここが私の実家です」
「ラーメン屋さんじゃないですか!」
創立20年、今はお母さんとお姉さんで営んでいる
「フジメン」にお邪魔しました。
渡辺さんオススメの特製もりラーメンをいただきました。
やや濃いめで酢が入ってて、餃子は中に春雨が入って、
とてもおいしかったです。
夕食後は、別のお店で、マグロとカツオのお刺身と、
しらす大根、話題の黒はんぺん揚げに、
焼酎の抹茶割をたしなみました。
医療についてお話したり、
「留吉君は、何になりたいの?」と、
僕の将来の事で、いつのまにか説教されてました。
お酒も入ってご機嫌まっすぐな2人。
「渡辺さん、どこかいいとこないですかね! イヒヒ」
「ありますよ。
聞いた話なんですが、なにやら手錠パブ!」
「うお! 行きましょう!」
胸を躍らせ着きました。
「監獄食房 THE LOCKUP」
入りました。
「いらっしゃいませぇ! 手錠かけまーす!」
ミニスカポリスのおねーさんだ!
留吉は右手に手錠をかけられ、連れていかれました。
頭の中では、ミニスカポリスな人がたくさんいて、
“逮捕されたいな〜”という思いでいっぱいです。
「2名さまのお席、こちらです!」
あれ? ミニスカポリスは? 案内のみ?
男ふたり、普通に1杯飲んで、店を出ました。
「今日は本当にいろいろとありがとうございました」
「いえいえ、お仕事がんばって下さい!」
「留吉さん、さようなら〜」
「感想文待ってま〜す!」
それから少し仮眠して、我が家に帰りました。
ひとつめの旅、静岡では、人と話をするのは
大事なんだな、と感じました。
だれかに「おーい」と呼びかければ、
「なんだ?」と返事してくれるもんだなと。
橋の下で昼寝してたおじさんとか……。
静岡のおみやげ
次回、山梨の方へ、「新茶ジャム」を買いました。
もっていきますからねー。
糸井さんへの静岡みやげは「新茶目枕」です。
どちらも、お茶の香りがいい感じ。
静岡でお世話になった
広野病院・渡辺浩さんからのメール
豆屋留吉 様
5/31は大変ありがとうございました。
病院スタッフ一同大変感謝しております。
で、感想を、ということでしたので、書きます。
まず、とにかく大変面白うございました。
なんだかんだで、来るときにはスタッフつれて
数人で見えるのだろうと思っていたら、
いきなり本当に一人で、重い「生茶」を2ケース
持ってきたときには「やられた」感じがしました。
昼間の取材中は「留吉さんに何かネタになりそうなことを
おみせしよう!」 と、少しこちらも
焦っていたように思います。
ただうちの病院がいろいろやろうとしている
心意気のようなものは伝わったのではないかと。
後、インターネットのHPの取材って
やっぱりちょっと変わってると思いました。
悪い意味じゃなく。あんまりこちらは緊張しませんでした。
だから本音トークというか、伝えたいことを
伝えられたかなと思います。
TVの取材じゃあこうはいかなかったでしょう。
で、ほぼ日に「静岡市の広野病院」という字を見たとき、
「あ、つながってる」という、距離と時間を越えた
一体感とでもいいましょうか、そんなものを感じて、
糸井さんや鳥越さんや清水ミチコさんが
すぐそばにいるような(いないけど)感覚に襲われました。
これはすごいと思いますし、でも少し怖い気もしました。
感想というか、感じたことはそんなところです。
文法めちゃくちゃですみません。
最後に留吉さんへ
酔った勢いで失礼なことを言ったかもしれません。
怒らないでください。きっと……たぶん
留吉さんは面白いと思いますし、いい人です。
でも、「バッテン荒川」は ないよなぁ……。
渡辺 浩
おこずかい帖
旅の総予算 ¥505.000
5月31日(水)
午前 ¥150 キリン小岩井ミルクとコーヒー500
¥200 ハム玉子ロール
¥280 マルボロライトBOX
計¥647(セブンイレブン)
¥3906 ガソリン レギュラー満タン
¥4100 料金所 静岡
計¥8074 (トポス静岡店)
ショッピングカート
使い捨てカメラ
¥350 バス 静岡駅北口〜下川原団地
¥120 ピーチネクター
午後 ¥1365 わさび漬け(田丸屋本店)
¥525 新茶ジャム
¥1050 新茶目枕(駿河楽市)
¥3850 静岡駅南口駐車場
¥2021 飲み代(THE Lockup)
6月1日(木)
午前 ¥350 駐車場代
¥4100 料金所 東京
¥2800 ガソリン代
合計 ¥33.258
残り ¥471.742
「旅する生茶」旅の予定
ふたつめの旅
6月5日(月)山梨県
藤巻家の桃畑に行きます。
幹事は、藤巻かほるさん。
桃をつくっている農園だそうです。
桃、うまそうだなぁ。
まわりには、藤巻という名前の家が
軽く40件は密集しているらしい……。
はたして豆屋留吉は無事到着する事ができるのか?
みっつめの旅
6月7日(水)東京
(株)イーストワークスエンタテインメントに行きます。
幹事は斎藤光さんです。
「あれ、俺その会社知ってるよ。
ジャズシンガーの綾戸智絵さんがいるとこじゃん。
そりゃー行ってきなさいよ!」
え、糸井さん、なんスか? ジャズシンガー?
知識のない留吉は、これから勉強することに。
うそ? 豆屋留吉待望のCDデビュー決定か?
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