「とめきち配達日記」(3)
旅する生茶 〜山梨篇〜
行ってきましたよ。
山梨は桃園、藤巻さん宅を目指して!
朝6時30分出発。
前回は東名高速にて、ガソリンが無いという
ハプニングに見舞われたせいもあって、
今回は準備OKで出発しました。
天気は良好!
中央道は石川P.Aにて、
「全国P.Aそばうどん売上No.1」という売店で
天ぷらそばを食べました。
青空の下、さわやかな6月の風を受けながら、
8時55分、勝沼ICに到着。
ギュルルル……。
下痢を、もよおしました。
「まさか、売り上げ日本一のそばが……」
いいえ、僕は朝に冷たい水をコップ1杯飲むと、
98%お腹を下す男です。
近くにあったガソリンスタンドで用をたす事にしました。
店員のオジさんが水撒きをしていました。
「トイレ貸してもらえますか?」
「……(ジョボジョボ)……」
「……」
広めのガソリンスタンドで、
オジさんと僕は30秒ほど見つめ合いました。
オジさんが持つホースから水が出っ放しです。
オジさんは、うんとも寸とも言わず。
しょうがなく勝手に借りました。
「どうも」
「……(ジョボジョボ)……」
ぶどう畑や桃畑のなかを迷って、10時に山梨市駅到着。
ギュルルル……。
本日、2回目です。
近くにあった公衆便所に入りました。
使用中、目の前には定番の落書きがあり、
イヤらしい絵、○○連合などと書いてある中、
「警棒」という文字が。
なにをアピールしたかったんでしょうか?
なぜか洗面台の蛇口の脇に、
半分食べかけのアイスモナカがありました。
急いでたのか、お腹がいっぱいになったのか?
駅前で僕はタクシーのオジさんに訊きました。
「駅の近くに駐車場とかありますかねえ?」
「そんなものはないねえ」
不安になった僕は、甲州屋というお店で
先におみやげを買いました。
駅に車を停めておくのは無理そうなので、
車で目的地に向かう事にしました。
途中、植物がたくさんあって、動物もいるという
万力公園でよりみちをしました。
1歳半のお子さん連れの奥さんと一緒に、
100円で売ってたエサを、鯉やアヒルにあげました。
「あの銅像は有名な人なんですか?」
「根津喜八郎さんといって、鉄道王ですよ」
「へえー」
「昔、全国の学校にピアノを寄付した方ですよ」
「それは、えらい……」
……僕はいったいなにをやってるんだろう?
公園にはフラミンゴに孔雀、鹿やニワトリがいました。
僕がカートで生茶を引いてると、
エサだと思って動物たちが近寄ってきてました。
ほかにもハス池というのがあったので、
覗くと小さなハスの葉が3枚浮いてました。
万力公園に別れを告げた僕は、
今回の目的地に向かうことにしました。
目印になる“神徳橋”をさっそく発見。
藤巻という名が40軒も集まる地区を見つけました。
「今日は家探しだけで大変だなこりゃ……」
昼12時、気温30度を越す炎天下、
厳しい旅が始まりました。
たくさんある“藤巻”さんの家を
1軒ずつ訪ねていくしかないのか……。
まず、1軒目の藤巻さん。
僕の身体より大きく見える黒い2匹の番犬が
こっちに向かってガンガン吠えまくっています。
怪しい者じゃありませんから。
でも犬はわかってくれません。
「藤巻かほるさん……ココかよ……」
ビンゴ! 目的地までの厳しいはずの旅は
あっさりと終わりました。
玄関に1枚の紙が置いてありました。
置き手紙です。
「歓迎、豆屋留吉様。
裏手で作業をしてたのですが、
急きょ別の場所に移動になってしまいました」
なに〜、ココじゃなかったのか。
でも手がかりはつかんだぞ。
手紙に書いてあった、携帯にさっそく電話。
すると、ちょうどお昼なので一度家に戻るとの事でした。
当然ですが、僕は藤巻さんの顔を知りません。
ご本人かどうか確かめるために、
それらしき通りがかりの人には、
とりあえずニッコリしてみることにしました。
ニッコリしては無視されるというのを続けていると、
何人目かで反応がありました。
「はるばるお越しいただいてどうも」
藤巻かほるさんです。
会えたよ! うれしー。
あいさつをすると、ちょうど昼ご飯にするとのこと。
さくらんぼの形をした電灯がある道を抜け、
山梨市街が一望できる丘の上にある、
富士屋ホテルで食事をすることになりました。
僕が食べたのは、季節のフルーツカレー。
「これ、やっぱり、山梨のフルーツですかね?」
「いえ、どこかの業者さんのですね」
「……ああ」
「今日はせっかくですから、
桃園での作業を手伝っていただきましょう」
「はい、ぜひやらせてください!」
「ただ、桃が嫌いになるかも」
「え?」
「できの悪い桃の実をもぎる作業なんですけど、
桃の実から細かい毛が出てるんですよ。
だから、もぐ作業してると、体がチクチクするんですよ」
「いや、たぶん、大丈夫ですよ」
「気管の病気になる人もいるんですよ!」
「う……、大丈夫、たぶん」
藤巻さんは留吉が書いた“使用上のご注意”を
読んでくださっていたらしく、歓迎してくれました。
犬が大好きな藤巻さんは個人で
HP( http://i.am/babynoir )をつくっていたり、
農業の仕事もパソコンで管理しているそうです。
「生まれも育ちもこのあたりなんですが、
四方を山で囲まれてるせいか、
この土地から出たくて出たくて……」
「ふーん」
「でもここから出てみて逆に、
この地のよさに気づきましたね」
「おお! そういうもんですか」
僕も熊本出身のせいか、
印象に残る話でした。
午後3時、藤巻さんの農園に行きました。
立派な桃の木でいっぱいでした。
ちょうど農作業の休憩時間で、
桃園のなかに敷いたシートに、人が集まっていました。
いつも一緒に作業している7人の家族と、
お手伝いさんと一緒に、
藤巻家で漬けた、キュウリと大根のぬか漬けを
ポリポリと食べました。いや〜、うまいなぁ。
あらかじめ冷やしておいた生茶を飲みながら、
おじいちゃんやご主人に、桃づくりの話を聞きました。
「今年で50年やってきたけど、一番の豊作だよ。
こんなに実が成ったのは初めて見たよ」
「そうなんすか!」
「豊作の原因にはいろいろあるんだけど、
今年は積雪がなかったからかなぁ」
「いい年に旅に来れて光栄です!」
「じゃあアンタ豆屋じゃなくて、桃屋にしたら(笑)」
「(笑)その名前、もうありますよ。ごはんですよ」
「桃は3月から4月ぐらいから手入れを始めて、
6月から9月にかけて収穫するんです。
うちは12種類の桃を作ってて、
1週間から10日くらい時期をずらして、
種類別に収穫していくんですよ」
「桃づくりの1年って、
プロ野球選手みたいなんスね?」
「そうなんだよ〜。
確実にいい実が成るように、
オフは木の手入れをしたり枝を切ったり、
費用対策をしたり、いろいろあるんだよ。
あと、家族とレジャー(笑)」
「ハハハハ(笑)」
「うちはプロ野球選手よりは結果を出すよ。
いまだ天災にあってないしねぇ」
「それはそれは……」
軍手とバンダナを借りて、
僕も桃づくりの作業を手伝わせてもらいました。
いい実に栄養が行き届くように、
できの悪い実をもぎるという仕事です。
どんな実をもぎるのかというと、
しぼんだシワシワの実ですね。
あとは、地面に落ちてる実を拾います。
桃を実らせ続けて、もう15年目にもなる
ベテランの桃の木がありました。
人間で言えば、ご老人ですね。
その木の枝が折れてダメになってしまっているのを
ノコギリで切ったときには、ちょっと切ない気持ちでした。
惜しい気がしました。
それにしても、農作業は身体にこたえます。
仕事を終えてから飲んだ生茶がうまかったですよ。
え、自分で持っていった生茶を自分で飲むなって?
いーじゃないですか。
日が暮れてきたので、藤巻さん宅に戻ると
お子さんが学校から帰ってきていました。
そして、またまた僕には仕事があります。
藤巻さんの愛犬2匹の散歩です。
さっき僕に向かってガンガン吠えた犬です。
ハラを減らしてる時には会いたくないです。
散歩から帰ると、げんきくん(小4)の苦手な
算数の宿題を一緒にやりました。
算数、なつかしいなぁ。余裕っスよ。
「豆屋さん、8000億の10倍はなーに?」
「……」
「8兆でしょ!」
逆に教わりました。
さやちゃん(小6)とは、柔道をやりました。
息が出来なくなるくらい、柔道技を浴びました。
痛めつけてくれたお礼に?
糸井さんと僕の、「ホスト」というギャグを教えました。
指名されると、花のようにパッと咲く。いかなる時も。
そういうネタなんですけど、
留吉がやるより、おもしろくやってくれました。
他にも僕の一発芸を披露すると、
子供たちがゲラゲラ笑ってくれました。
ウケてるじゃん!
「もしかして僕、天下とれるのか」
一瞬、そんな希望に包まれました。
一瞬です。
そうそう、そういえば、静岡で買ってきた
おみやげがあるんですよ。おみやげリレーです。
「静岡のおみやげ“新茶ジャム”です。どうぞ」
「ありがとうございます。
これ、よろしければ……。
私の実家で採れたぶどうで作ったジャムです」
「ジャ、ジャム……ありがとうございます。
じゃ、豆屋留吉サイン入りジャンパーをあげましょう!」
僕は着ていたジャンパーを脱いでサインして、
子どもにプレゼントしました。
渡された子どもは、どっちつかずの顔をしてました。
なんでよ? さっき、ウケてたじゃないのよ。
ご主人が桃園から帰ってきました。
「働いてくれたお礼に夕飯でもどうですか?」
え? ぜひ! 腹減ってます!
うなぎ割烹「七福神」で、
ヤマメのお刺身、うなぎの肝などなど、
とてもおいしくいただきました。
「ため吉くんは、お酒の方はイケるの?」
「と、留吉です。ええ、大好きです」
「すいませーん、日本酒4本」
「お、お父さん……」
「プロ野球はどこファン?」
「巨人です」
「私は阪神なんだよ。
すいませーん、日本酒2本追加」
「ご、ご主人……」
あれよあれよと、時間が過ぎ店を後にしました。
「藤巻さん、今日は本当にありがとうございました」
「ため吉くん、なんかあったらウチにおいで。
一食一晩くらい平気だから」
「……と、留吉です」
「じゃあねえ、おにいちゃん。キーック!」
「おえっ」
子供の蹴りが僕のミゾオチに入り、
僕は、藤巻ファミリーに別れを告げました。
さようならー。
いつかまた、藤巻さんの桃園に、
“桃屋ため吉”としてお手伝いに行きたいです。
だいぶ、お酒が入ってたので
車の中で眠ることにしました。
午前4時。
「さ、寒い……」
びっくりして目が覚めましたよ。
山梨って昼と夜の気温差がすごいんスね。
「もう朝だ、東京に帰らなきゃ」
エンジンキーを回しました。
昨日ガソリンスタンドで会った
水撒きのオジさんのごとく、
車はうんとも寸とも言いません。
バッテリーがあがってました。
誰かにバッテリーブースターを借りるべく、
1時間くらい道ばたで車を待ちましたが
さすがに朝4時台です、1台も通りませんでした。
しょうがなく、近くのガソリンスタンドまで歩いて
助けをもとめました。
バッテリー交換、1万500円。
痛い、痛すぎる。
豆屋留吉
山梨のおみやげ
次回、東京都青山の斎藤光さんに、
「ブドー酒ボンボン」を買ってきました。
お酒、大丈夫ですか?
あと、山梨で買った糸井さんへのおみやげは、
武田信玄のキーホルダーです。
(裏面に方位磁石付きの優れものっス)
写ってるビンは、藤巻さんにいただいた
「ぶどうジャム」です。ありがとうございました。
------------------------------------
山梨でお世話になった
藤巻かほるさんからのメール
留吉君、「ほぼ日」のみなさん
生茶&留吉君をホントにありがとうございました。
山梨の藤巻かほるでございます。
6月5日がさわやかな(暑くない)
一日でありますようにと、神様にお願いしてました。
だって、留吉君の「使用上の注意」に
書いてあったんだもん。
でも当日留吉さんを待っていたのは
過酷な夏日の山梨なのでした。
留吉君がちょっと壊れていたとしても、
それは山梨の太陽のせいです。
(藤巻家のせいじゃないったら〜)
「なにもする事はないですよ、見て楽しんで頂けたら」
といいながら、
炎天下の畑で桃の実拾いやノコギリを持たせたり
なかば強制的に黒い大きな犬と遊ばせたり
子供達と遊んで(?)頂いたり、
宿題を一緒に考えてくれたり
いろいろなことをしていただきました。
留吉君、本当にお疲れ様でした。
darling様、これでよかったのでしょうか?
(たぶんある「『裏』留吉君使用上の注意」を想像しつつ)
これまでの「ほぼ日」との距離感が
私からは一方的に普段着感覚だったためか
初めてお会いする「豆屋留吉君」との
出会いからさよならまで
顔も心もすっぴんな私を見ていただけたのじゃないか、
と思っています。
こんな風に「すっぴんの私」を初対面で見たのは
あとにも先にも留吉君一人です。
いつもだったら、もう少し気どったり、お化粧したり
「ちょっとカッコつけた私を見ていただきたい」って
気合い入れるのにね。
これが静岡の渡辺さんのおっしゃった
「インターネットの取材ってちょっと変わっている」に
つながってくるのでしょうか。
留吉君が来て下さってから最後まで、
まったく気負わずにすっぴんの私で過ごしました。
なぜdarlingが留吉君を「生茶」の旅のお供に選んだのか?
その疑問は留吉君と会ってすぐに解けました。
留吉君はいい人だ!
家族の顔を見ればわかります。
子供は親戚のお兄ちゃんと遊んでいるような顔していたし
夫は甥っ子と語り合うときの目をしていました。
桃畑にいた全員が元気な顔になりました。
本当においしい「生茶」と楽しい時間を
ありがとうございました。
せっかく来ていただいたのに
充分なおもてなしもできずにごめんなさい。
山梨のことを嫌いにならなかったか? ちょっと心配です。
秋にリベンジはいかがでしょうか?
ブドウや柿が美味しいですよ。
まだまだ始まったばかりの「留吉君と生茶の旅」が
無事に最後の日を迎えられますよう
心からお祈りいたします。
藤巻かほる
------------------------------------
おこずかい帳
くりこし ¥471.742
6月5日(月)
午前 ¥1955 ガソリン満タン
¥ 136 カフェベネチアブランデー風味
¥ 250 ビックコミックスピリッツ
¥ 560 マルボロライト2個
(ファミリーマート)
¥ 600 料金所(国立府中)
¥ 530 天ぷらそば(石川P.A)
¥1800 料金所(勝沼)
¥ 100 ティッシュ(キヨスク)
¥ 630 ブドー酒ボンボン(甲州屋)
午後 ¥1060 武田信玄キーホルダー
春うこん茶(山梨市フルーツパーク)
6月6日(火)
午前 ¥10500 バッテリー
¥ 3600 料金所(八王寺本線)
¥ 976 たらこと帆立のスパゲッティ
ブレンドコーヒー(ジョナサン)
¥ 2823 ガソリン満タン
合計 ¥25,520
残り ¥446.222
------------------------------------
「旅する生茶」旅の予定
よっつめの旅
6月9日(金)千葉県
市川市国府台にある、
東京医科歯科大学の水泳部に行きます。
幹事は、藤田浩二さんです。
留吉、水泳やります!
なんせ高校時代、水泳部でしたから。
ただ、コーチが辞めてしまい、
教えてくれる人が誰もいなくて、
毎回ふつうに泳いでました。
得意のバサロを披露しましょう!
当時、バサロをやり終えると、水着がいなくなってました。
|