「とめきち配達日記」(4)
旅する生茶 〜東京篇〜
行ってきましたよ!
とは言っても、今僕がレポートを書いている
ネズアナビルと同じ港区です。近いっスよ。
当選者、斎藤光さんが勤めているのは、
イーストワークスエンタテインメントという、
音楽関係の会社です。
糸井さんもファンだという、ジャズシンガー
綾戸智絵さんのマネージメントをしている会社です。
午前10時、東京の気温30度。
生茶2ケース(25キログラム)をゴロゴロ引きずって、
渋滞する車をごぼう抜き。
「暑いのに大変だねえ。後、何軒行くの?」
渋滞している車の窓からオジさんが話かけてきました。
「何軒って?……1軒です」
「1軒で終わり? なんだ、楽だねぇ」
「ハハ……」
後にも先にも本日は1軒でオッケーなのに……、
飲料メーカーの営業マンだと思われているらしい。
いや、生茶配達人が板についてきたってことか。
いいぞ、留吉。
歩く事40分、着きました!
足に疲れがきて膝カックン状態の僕は、
建物の入り口でこけました。
その瞬間の写真を……撮れるワケありません。
エレベーターで3階に上がると、
「株式会社イーストワークス」という表札。
中をのぞくと、忙しく働いている人でいっぱいでした。
「すいませーん! 豆屋と申しますが」
「ちょっとお待ちください!」
そうですよねー、平日の昼間なんですから。
オフィスの一角では、
ジャズシンガー、綾戸智絵さんが
取材を受けているようです。
うわー、本物ですよ!
「生茶を届けに来たのはいいけど、
みんな忙しそう……飲む時間あるのかなあ?」
どうやら大変な時に来ちゃったんだな僕は。
気の小さな僕は、忙しそうな雰囲気にのまれました。
10分ほど、肩身狭そうに直立していました。
「お待たせしました。斎藤です!」
あーっ、よかったー。僕の存在。
「今日はホントにバタバタしてまして、
ささ、どうぞ」
「はい!」
「あまり大きい声、出さないで下さいね」
「はい……」
ほんとに大変な時に来てしまったようです。
斎藤さんは、職場の方々に僕を紹介してくれました。
「仕事? 何やってもらおうかなあ?」
「アレやってもらえば?」
「無理だろー」
え? なんだか知らないですけど、無理なんスか?
まだ僕のことをよくご存知ないはずなのに、
豆屋留吉には、アレは無理と。
(アレってなんだ?)
「あの……今日はお仕事の手伝いというか、
生茶を届けに来たわけなんスけど……」
動揺している僕に向かって、
腕組みしている社長の守崎さんが言いました。
「仕事ってもんは、自分で探すもんだろう」
「え? 僕、怒られてるんスか?」
「いやいや……、ほほう、40分もかけて、
2ケースで25キロ? 歩きでねぇ、へえ〜」
「ちょっとだけ、休ませてもらっていいですか?
脚がガクガクなんスよ」
「ああ、お茶も出してなかったねえ。これ、どうぞ」
「どうぞって……これ、先程の打ち合わせのときの
誰かの飲みかけとちがいますか?
生茶飲みましょうよ」
綾戸智絵さんは、次の取材に向かうらしく、
「早よう言うてや、仕事ぎょうさん持ってきたのに。
ほな、行ってくるわ!」
あ、綾戸さんまで……。
実は昨日の夜、
糸井さんもファンだという綾戸さんのCDを聴いたり、
ホームページで綾戸さんについて予習してるうちに
僕も綾戸さんが好きになってたんですよ。
だから、ドキドキしてたところなのに……、
行っちゃうんですかー。
また、ひと言も、話ができてないっスよー。
やっぱり、みなさんお忙しいんですね。
そうだ! おみやげがあるんだ。
斎藤さん、山梨で買ってきたおみやげです。
「ブドー酒ボンボン」っていうんですよ。
みんなで食べてください。
すると、営業部長の漆山さんから
綾戸智絵さんのCDと、
綾戸智絵さんのTシャツ、
携帯ストラップをいただきました。
なんかいい感じになってきたぞ。僕の存在。
「そうだ! いい仕事があったよ。
CD棚の整理をしてもらうか!」
「社長、僕がやる仕事、まだ考えてたんですか?」
「そうだよ。このCD棚ね。よろしくね」
「こ、これ、ぜ、全部で何枚あるんですか?」
「1500枚くらいかなぁ」
「センゴヒャク!」
壮大巨編スペクタクルなお仕事をいただきました。
どうする、留吉。
「まあ、昼メシでもいきますか?」
営業部長の漆山さんが、
ムードを一掃してくれました。
ちょっとホッとしました。
職場の近くにある、諸国空想料理「倉」という店でランチ。
僕は、タイ式グリーンカレーと
アフリカのルボナティーにしました。
このカレーがまた辛い!
「俺、城が好きでさぁ」
営業部長の漆山さん、
まるでお風呂に入ってるみたいです。
そこまで辛いのか。
職場に戻ると、ホワイトボードに
なぜか僕の名札が……。
「6/7日、出社、棚整理」って書いてあります。
ああ、CD棚の整理、思い出したよ。
「さー、やるか!」
CDをアルファベット順に並べ替えていくという
単純な作業ですが、なんせ1500枚ですよ。
1500という数を体感するために、
ためしに石ころを1500コ拾ってごらんなさいよ。
え、拾わないって? すみません。
しかも、ホコリでゴホゴホです。
「アースウィンド&ファイヤーは……Eだな。
渡辺貞夫さんは……Wか」
CD整理がえんえん続きます。
誰ひとりとして、僕に話かけてきません。
皆さんそれぞれに忙しそうです。僕も忙しい。
生茶ジャンパーの内側が、汗ダラダラです。
CDの入った棚との、孤独な戦いです。
あ、手が真っ黒。
「あー、もうダメかも。
これだけは使いたくなかったけど、
あの作戦をやってみるか!」
あの作戦とは……、
僕は全国各地に生茶をお届けするために
旅をするわけですが、旅の途中で、
もし、豆屋留吉どうしようもない、「もうだめ」
「ギブ!」という時には、
その場で白いタオルを投げますからね。
ボクシングの試合で
負けてる側のセコンドがタオル投げて
試合をとめるじゃないですか。
僕は自分で投げるんです。
「えいっ!」
白いタオルがヒラヒラと床に落ちました。
「“カーン!”タオル投入、試合終了!
結果は負けましたが、
挑戦者、よくやりました。
800枚くらい片づいたんじゃないでしょうか。
いや〜いい試合でしたねぇ、具志堅さん」
アナウンサーの解説がきこえてくる……はずでした。
しかし、みなさん反応ナシです。ピクリとも。
だいたいタオル、見えてないよ。
投げた場所がよくなかったのか。
タオルを拾って、CDの整理にもどりました。
「それではお先に失礼します〜」
「おつかれさまで〜す」
留吉を残し、次々と帰ってゆく社員の方々。
あれからどれぐらい、時間が過ぎたのだろうか?
午後7時30分、ついに1500枚目(推定)を
棚にしまいました。
「終わった〜!」
残業していた社員のみなさん、拍手ありがとう!
社長の守崎さんからも、ほめてもらいました。
「今日、会社でいちばん働いたねえ」
「ええ! ありがとうございます」
「おお、このCDこんな所にあったのか」
「あ、触らないで下さい! 今、そんな気分なんです」
「君ならどこのレコード会社でも、働けるね!」
「……」
先に仕事を終えていた斎藤光さんが、
僕のことを待っていてくれました。
「今日はがんばっていただいたので、
近くのおいしいお好みやき屋に
女性グループと一緒に行きましょう!」
「わ〜い!」
大仕事を終えた僕は、CDの棚に別れを告げて、
創作小料理お好み焼き「富久美」に行きました。
ジョッキ2杯、ネギ焼き、お好み焼き、アボガドの刺身、
里芋のゴルゴンゾーラ、をペロリといきました。
ヤケ食いに見えたかもしれませんが、
すごくお腹が減っていたんです。
「留吉さん、今日は本当にありがとうございました!」
「いえいえ、いつもこんなに忙しいんですか?」
「ええ。綾戸さんのマネージメントに、
ジャズ、ワールドミュージック、クラッシック、
イベント制作に営業と、
少ない人数でやってますからね」
「忙しいわけだ。逃げたくなりますね」
「いえ、苦じゃないですから、よく遅くまでいますよ。
可愛い人ばかりですし」
「え?」
「上司と言い合いになっても、親子ゲンカしてるみたい」
「いいっスね」
「今度、よみうりランドでイベントやるので、
ぜひ来て下さい!」
「よろこんで! 司会ですか?」
「いえいえ、スタッフとして」
「司会はダメ? 会場でもCDの整理したりして」
「ハハハ、留吉さん、泡盛追加!」
「さ、斎藤さん、もう飲めないっスよ」
またしても、お酒で終わる結末になりました。
しかし、今回は1500枚のCDを整理して、
とてもお役に立てたと思います。
職場の冷蔵庫には、生茶がいっぱい冷えてるはずです。
これから豆屋留吉が向かう旅先の皆さん、
あくまでも、僕が手伝う仕事はホドホドに……。
豆屋留吉
東京(青山)のおみやげ
ジャズシンガー綾戸智絵さんのCD「LOVE」
次に旅する千葉県市川市の水泳部のみなさん!
水泳をやりながらプールでかけて聴きましょう!
息つぎの時しか、聞こえないか……。
糸井さんへのおみやげ
今回の幹事、斎藤光さんの手作り携帯ビーズストラップ。
カッコかわいすぎる!
1101.comの文字と、猿マーク入り!
世界に1つしかないっスよ!
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東京(青山)でお世話になった
斉藤光さんからのメール
『働く生茶、留吉現る』
鼠穴とewe
(East Works Entertainmentの略/イーウィ、
『イ』にアクセント)は同じ港区内なので
『旅』というには余りにも近く、
でも『生茶2ケース』を徒歩で運ぶには
案外歩道が不親切で、しかも坂が多いので、
思いのほか大変だったことでしょう。
朝からとても暑い日でした。ほんとうに、ありがとう。
この企画のテーマであるにも関わらず
『旅』を語るには距離的にちょっと苦しいし、
レコード会社といえば聞こえはいいのですが
所詮事務所なので、もう『参加型』でやっていただいて
『ふんいき〜』を感じてもらうしかない、
というのが本音でした。
採用がきまった時、『ほぼ日』をプリントしたものを
社内に当選告知として貼り出し、
「『豆屋留吉使用上のご注意』…と
『ほぼ日』にはありますが、『一日スタッフ』として、
ドンドンご使用くださいますよう、
斉藤よりお願い申し上げます」と
社内メールしたところ、あのような(↑)
一日を送っていただくハメになりました。
豆屋さん、本当に丸一日、おつかれさまでした。
私を含めた女子社員の豆屋さんの感想は、
『そうはみえないけど、本当は結構コンジョ〜入ってる人』
です。きっと買いかぶってますが、
「また一緒に食べ飲みしたいね〜っ」て
本当に思ってますからね、待ってます。
当日は事務所での打ち合わせが多く、
綾戸智絵の取材がいくつも入ったり、
慌ただしく立ち働く社員と
あたふたと徘徊する社員のなかで、
誰にも顧みられずモクモクと
ホコリまみれのCDと格闘する豆屋さんは、
まさにeweの一員でした。
ネームプレートも作ったことですし、当社社長の守崎は
まだまだやってもらいたい事があるようです。
豆屋さんの大好きな漆山はいつでもいますから、
非常勤として、出社日を御連絡ください。
CDも日々追加されております。
あ、ちなみに、7/29、30の
綾戸智絵のよみうりランド公演は全員出社ですので、
追って業務連絡いたします。
キリンビバレッジのみなさま、
『生茶』大変おいしくいただいております。
見計らったかのようなこのところの暑い毎日には必携です。
キンキンに冷えていなくても美味しく頂けるお茶です。
ありがとうございました。豆屋さんは一度も
『生茶』ウィンドブレーカーを脱がなかったことを
ここに御報告いたします。
藤巻かほる様、ぶどうジャム、
大変おいしくいただいております。
幹事の職権乱用でひとりじめしております。
私の実家は長野県の松本市で、
『特急あずさ』を使う際はいつも夕方に乗車し、
夜の山梨の街明かりを眺めることにしています。
これからは藤巻ファミリーとその畑を思いながら
乗車することにします。
おいしく楽しい一日をありがとうございました。
豆屋さんのこれからの旅の無事を祈ります。
株式会社イーストワークスエンタテインメント一同
http://www.ewe.co.jp
幹事 斉藤 光
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おこずかい帳
くりこし ¥446.222
6月7日(水)
午後 ¥120 キシリトールガムミント
合計 ¥120
残り ¥446.102
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「旅する生茶」旅の予定
いつつめの旅は
6月11日(日)福岡県
福岡市の堤 義章さんに生茶をお届けします!
九州大学茶道部の春期茶会を、
聖福寺というお寺で行なうそうです。
生茶2ケース(25キログラム)を
無事、九州まで運べるのか?
留吉、茶会にてワビ・サビ、習得して参ります!
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