今日の「ほぼ日」ニュースまとめ
『ホテル・ルワンダ』が
ついに日本で公開されます!
日本公開のきっかけとなったのは
とある映画ファンの「観たい!」という思い。
日本公開に尽力された
おふたりに経緯をうかがいました。
『ホテル・ルワンダ』って
こんな映画なんですよ。
news!

『ホテル・ルワンダ』という映画がありました。

大ヒット間違いなし、というタイプの映画ではなく、
どちらかというと、シリアスな社会派の映画です。
アメリカでひっそりと公開されましたが、
評判を呼んで、じわじわと広がっていきました。
そして、最終的には、
2004年度アカデミー賞の主要3部門
(脚本賞、主演男優賞、助演女優賞)に
ノミネートされるという快挙をなしとげます。

そんな、『ホテル・ルワンダ』。

この映画は、当初、
日本では公開が予定されていませんでした。
簡単に理由をいうと、
すばらしい映画だという評判は高かったけれども、
「はたして日本でお客さんが入るのだろうか?」と
日本の映画配給会社が不安に感じ、
配給権を買うことをためらったためです。

そんなとき、ひとりの映画ファンが、
「『ホテル・ルワンダ』を日本で公開しよう!」
というアクションを起こしました。
その動きは、インターネットを通じて
少しずつ広がっていきました。

「ほぼ日」が、この映画と、
この映画を取り巻く状況について知ったのは、
連載、「翻訳前のアメリカ」のなかで
鈴木すずきちさんが、取りあげてくださったからでした。
(その記事はこちらからお読みいただけます。
 『ホテル・ルワンダ』がどういう映画か、
 きっと、深い部分でご理解いただけると思います)

鈴木すずきちさんの記事を読んだ糸井重里は、
「ほぼ日」につぎのように書きました。

『ホテル・ルワンダ』という映画は、
昨年アカデミー賞に3部門でノミネートされていたから、
知っている人は知っている存在でした。
ぼくもなんとなく名前だけは知っていました。
「ホテル」というくらいだから、
何かしゃれた映画かな、と思っていたのでしたが、
どうやら、まったくちがっていたんですね。
たしかにホテルマンの物語とも言えそうですけど‥‥。
昨日の「ほぼ日」の『翻訳前のアメリカ』を
読んでくれた人は興味をもっていると思うのですが、
たしかに、これは見たいわ!と、ぼくも思いました。

内容に政治的な問題がある、というような理由ではなく、
どうやら「当たらなそうだから」日本で公開されない、
という映画らしいので、おおぜいの人が見たいと思えば、
「商業的にも」公開される可能性が広がってきます。
いくらかかるのか、どういう手続きが必要なのか、
ぼくには詳しいことはわかりませんが、
鈴木すずきちさんが「アメリカ映画市場の底力」とまで
伝えているこの映画を、ぼくも見たいものだと思ってます。
(2004年7月26日の「今日のダーリン」より)

『ホテル・ルワンダ』を日本で公開させようと
がんばっていた映画ファンの名前は、
水木雄太さんといいます。

水木さんは、映画が大好きでしたが、
映画業界に特別深いつながりが
あったわけではありません。

水木さんは、この映画を日本で公開するために、
なにをするべきかをさまざまな角度から考え、
映画関係者にメールを送ったり、
インターネット上で署名を集めたりしていました。

その動きはネットを通じて
少しずつ大きくふくらんでいき、
ついに、メディア・スーツという映画配給会社を
動かすきっかけとなったのです。

そして、本日、1月14日、
いよいよ『ホテル・ルワンダ』が日本公開されます!

「ほぼ日」は、具体的な動きとしては、
水木さんの署名サイトへの
案内をしただけにすぎないのですけれど、
それでも、この『ホテル・ルワンダ』が、
日本で公開されることをとてもうれしく思います。

『ホテル・ルワンダ』の
日本公開に尽力した水木雄太さんと、
メディア・スーツの
村田敦子さんにお話をうかがいました。







『ホテル・ルワンダ』は、
1994年にルワンダで実際に起こった
民族間の争いをモチーフにした映画なんですが、
ぼく個人は、そういった事情に詳しかったわけではなく、
純粋に「よさそうな映画だ」ということで
「観たい!」と思ったのがはじまりなんです。
映画ファンとして、観たいと思った映画が、
たまたまルワンダをテーマにした映画だった、
という感じでした。

公開を求める運動を起こしたはじまりは、
mixiのサイトでした。
「『ホテル・ルワンダ』が観たい」という思いだけで
呼びかけをしてみたんです。
すると、数日間は反応がなかったんですけれども、
この映画の主演を務めている
ドン・チードルのファンだった方が、反応してくださって。
それで、まずはふたりで、
映画評論家の柳下毅一郎さんと町山智浩さんに
だめ元でメールを出したんです。

そうしたらおふたりともすぐに返事をくださったんです。
町山さんは、ご自分のブログにも
「こういう話があったよ」と紹介してくださって、
そこからmixiの方に
たくさん人が集まってくださるようになりました。
これはmixiだけでやっていてはいかんだろうということで
6月くらいに急遽、ホームページを作りました。
そういった経緯で、
「『ホテル・ルワンダ』の日本公開を求める会」が
立ちあがったんです。

そこからは、いろんな方にアドバイスをいただきながら
やっていたんですけれども、
まずは署名をメインに行っていきました。
最終的に、約4500人の方の署名が集まりました。
いちおう、目標は3万人だったんですけれど、
3ヵ月で4500人というのは、
がんばったほうじゃないかなと思います。

とはいえ、ぼくらも、署名だけで
すべてが解決するわけではないと考えていたので、
最終手段としては、
お金を集めて自分たちで配給権を買うことも
考えなくてはいけないな、と話していました。
でも、映画自体を浸透させないことには
集められるお金も集められないだろうと思い、
6月から9月までは署名を中心に動いていたんです。
映画館やカフェにチラシをまいたりもしていました。

そうするうちに、
『AERA』がとりあげてくれたりして、
少しずつ話題になっていって。
計画としては、9月の終わりごろに
取りあげてくれそうな媒体に
一斉にアプローチする予定だったのですが、
ある日突然、メディア・スーツのほうから
「配給することになりました」と連絡があって。
長期戦になると思っていたので、とても驚きましたね。

でも、結果としては、
ほんとうにすばらしいことだとぼくは思っています。
いまは、これから『ホテル・ルワンダ』を
どう応援していくかをみんなで話し合っています。







『ホテル・ルワンダ』は、
アメリカの権利先から日本の各配給会社への
売り込みはあったんですけれども、
やはり題材的に、日本のマーケティングには
難しいタイプの映画だったんですね。
遠いルワンダの民族紛争の映画ですし、
事件そのものも、日本であまり報道されませんでしたし。

また、日本に売り込みがかけられた当時は、
アカデミー賞にノミネートされたころですから
権利先が提示してきた価格が高かったんです。
ですから、当初のメディア・スーツの姿勢としては
「うちみたいなインディペンデントの小さい会社だと
 ちょっと、むずかしいよね」
ということで、試写を観る以前の段階で
見送っていたわけです。
うちで手が出せる金額の映画ではないし、
メジャーな会社さんがピックアップするのかな
と思っていました。
ところが、どこも買わなかった。

そんな状況のなか、
水木さんの運動がきっかけで
『ホテル・ルワンダ』が
いろいろな媒体で取り上げられるようになった。
糸井さんが「ほぼ日」で紹介してくださったりして。
私個人も、
「あ、糸井さんが
『ホテル・ルワンダ』について書いてる」
なんて思いながら読んでたわけです。

そういう日本での盛り上がりが、
どうやらアメリカの権利元に伝わったようなんですね。
それで、権利先から、
「いま盛り上がっているみたいだけど、
 あなたたちの会社でどうですか?」
という売り込みがあって。

自分たちの興味と、
アメリカからの誘いが重なったものですから、
それじゃあということで試写を観たら、
非常に力のある、すばらしい作品でした。
それで、
「これに懸けてみましょうか」
ということになったんです。

決断するきっかけとして、
水木さんの活動というのはかなり大きかったです。
インターネットでの盛り上がりがなかったら、
うちは動いていなかっただろうと思います。
やっぱり、見たいという人の声が
直接聞こえたというのは大きいんですよね。

大きな企業がポンとお金を出して買っても
不思議ではなかったんですけど、
今回のように、
「観たい!」という愛情のある方たちの声が
だんだん広がっていくのは
とてもすてきなかたちですよね。

あとは、大切なのは、
この動きをきちんと成功させることなので、
うちががんばらないと。
公開をするからには、絶対にあてたいですし、
水木さんたちのお気持ちに答えられるよう
ひとりでも多くの方々に
見ていただきたいと思っています。
やっぱり、ここで終わらせてしまっては
いけないなと思っています。





1994年、アフリカのルワンダで
長年続いていた民族間のいさかいが、大虐殺に発展。
100日で100万もの罪なき人が惨殺されるという事態に。
そんななか、ひとりのホテルマンの良心と勇気が、
殺されゆく運命にあった1200人の命を救った。
『ホテル・ルワンダ』は、
現実にあったこの話をもとにしています。

主人公のポールを演じるのは、
スティーヴン・ソダーバーグ監督作品の
常連である実力派ドン・チードル。
ポールの妻タチアナ役には
『堕天使のパスポート』の
ソフィー・オコネドー。
そのほか、ベテラン俳優ニック・ノルティと、
若手俳優ホアキン・フェニックスが脇を固めています。

メガホンを取るのは『父の祈りを』で
アカデミー賞にノミネートされた脚本家テリー・ジョージ。
ルワンダでの話を知り、
「この映画を撮る以上に大切なことはない」と
脚本、監督、そして製作を自ら手がけたそうです。
(『ホテル・ルワンダ』公式サイトの情報をもとにしました)


『ホテル・ルワンダ』

1月14日(土)より、
シアターN渋谷にて。

1月28日(土)より
川崎チネチッタにて。
以下全国順次ロードショー

上映館などの詳しい情報は
『ホテル・ルワンダ』公式サイトをご覧ください。
2006-01-14-SAT
 
友だちにこのページを知らせる
©HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN All rights reserved.