2011年4月21日、春の宵。
糸井重里以下数名のほぼ日乗組員は、
昨年に続いて今年もお招きいただき、
伊丹十三賞の贈呈式祝賀パーティーへ
出掛けてまいりました。
「伊丹十三賞」は、デザイナー、イラストレーター、俳優、
映画監督、エッセイスト、テレビマン、雑誌編集長など、
あまねく分野で才能を発揮した
故・伊丹十三さんの遺業を記念して創設されたもので、
この栄えある賞の第1回の受賞者が、糸井重里なのです。
そして第2回がタモリさん。
分野の枠にとらわれず、広く才能を発揮する人が選ばれる
この賞の第3回目、私たちは受賞者がどなたなのか、
とても楽しみにでかけました。
※伊丹十三賞は創設当時、言語表現部門とビジュアル表現部門、
それぞれで活躍する方を毎年交互に選考・表彰していましたが、
今回からは部門を統一されたそうです。
そして受賞者は‥‥‥
フランス現代思想の研究者で、エッセイストで、
合気道の師範もつとめられる武道家の
内田樹さんでした!
おめでとうございます!
まずは、選考委員の平松洋子さんから、
授賞理由が発表されます。
その前に、パンフレットには、こうありました。
―授賞理由ー 世の中の事象から、人がどう生きるかまで、ひらかれた思考とやわらかい言葉で日々発言し続ける現代的で新しいスタイルの言論に対して。 (第3回伊丹十三賞贈呈式パンフレットより) |
そして平松さんのスピーチも、
「ひらかれた思考」「やわらかい言葉」について、
多く語られました。
平松さん:
「なぜ内田さんの言葉が人をひきつけるか、
それが選考理由にあげた
『ひらかれた思考』と『やわらかい言葉』です。
思考は頭の中の回路に閉じ込められがちで、
そこから出る言葉はとかくこわばりがちです。
けれども人に真に働きかけ、より深く届きながら、
最も困難を極めるのは、
『ひらかれた思考』と『やわらかい言葉』を
持つことではないでしょうか。
去る3月の、内田さんの大学での最終講義、
内田さんは繰り返し述べておられます。
『存在しないものとの関わりなしに、
我々は人間であることはできない。』
つまり、すでにもういないもの、まだここにいないもの、
現代においてその両方と関わることこそ、
思考するということの本質であり、対話の鍵である。
この双方向へのひらき方は、30数年の武道家としての
体の感受性の発見から体得なさった賜物と拝察します。
だからこそ内田さんの言葉はやわらかく、
人の思考、つまり体そのものに届くのだと思います。
伊丹さんもまた、
体を懸命につかいながら、思考をひらいた人でした。」
(一部抜粋)
平松さんの言葉を聞きながら、
かつての「ほぼ日」の伊丹十三特集で取り上げたように、
まさに伊丹さんの『ひらかれた思考』や
『やわらかい言葉』に感動したこと、
しかし自らには厳しくあられたのを知ったことなど
思い返していました。
その後、式は賞状贈呈、
賞金贈呈とすすみ、
内田さんの受賞者スピーチへ。
内田さん:
「この賞をいただくのはほんとうに嬉しいことでした。
伊丹十三という人の大ファンでございまして、
20代、もっと前から、大江健三郎さんの小説などで
伊丹さんをモデルにした人物の造形に
ずいぶん惹かれたりしました。
またエッセイにも強い影響を受け、
会員だけの講演会に駆けつけ、
受付の人に無理を言って入れてもらったりもしました。
有形無形の影響を受けています。
エッセイの中で読んだのですが、
伊丹さんが取材に来たカメラマンに、
『写真を撮るから帽子とサングラスをとってくれ』と
言われて、『とってもいいけれど、
私はこのようなときにこのような帽子と
サングラスを付ける人間として生きてきた。
もしこれを取るというなら、
わたしと家族の一生の面倒をみる覚悟はあるのか』
と言ったと。(笑)
わたしも、そういう事がありそうもない若い時から、
いつかそういう機会があったら、
言ってやろうと思っていました。(笑)
そして30代になって、新聞に寄稿したりすると、
こういう書き方は困る、と新聞社から
クレームが付くことがありました。
その時いつも思い出すのが、このことでした。
『ぼくはこういうことを書く人間として
僕自身であって、それをやめろというならば、
あなたはぼくを一生食わせる気があるのか』。(笑)
頑として受け付けず、生意気なやつということで、
大げんかをした新聞も、二社ほどございます。
そんなふうにして、少年時代にスタイルを形成する過程で、
ほんとうに大きな影響を受けました。」(一部抜粋)
内田さんのスピーチは喜びにあふれていて、
選考委員のみなさん(左から、平松洋子さん、周防正行さん、
中村好文さん、南伸坊さん)と、宮本信子館長も
ニコニコされていました。
そして記念撮影があり、乾杯をして
歓談の時間となりました。
会場はたくさんの人で溢れています。
過去二回よりもずっとたくさんの方がいらしているようです。
糸井もすぐ仲良しの中沢新一さんや
おなじみ、南伸坊さん、
橋本治さんとおしゃべりをはじめました。
そして、内田樹さん。
なんと意外なことに、糸井とは初対面でした。
共通の知り合いがとても多いのに、
なぜかお会いする機会がこれまでなかったようです。
「ほぼ日」でアンケートなどをとると、
「ほぼ日」読者にも、とてもファンの多いことがわかる、
内田さんです。
同じ賞の受賞者として、これからどうぞ、
よろしくお願いいたします。
その後、宮本信子館長や中村好文さんとご挨拶。
周防正行監督とその美しい奥様(草刈民代さん)とは、
ずいぶん長くおはなしをしていましたよ。
ああ、華やかです。
そしてわたしたちは‥‥‥‥
食べていました。
ここ(国際文化会館)のごはん、おいしいんです!!
今日のカメラマン・外山もカメラを置いて、
ローストビーフやら名物カレーやら
マンゴーケーキをほおばります。
(あ、後ろに社長ちゃんが‥‥。)
さらに、「ほぼ日」全女子の憧れ、
宮本信子さんに、すてきパワーを注入してもらいました。
そして最後は恒例の、国際文化会館に来たら必ず見なくては、
というお庭で、みんなで記念撮影をしました。
ああ、いい夜でした。
すてきな人、すばらしい人を、
すてきだ、すばらしい、と喜ぶ、
伊丹十三賞のパーティーへお招きいただいて、
ほんとうにありがとうございました。
来年はどんな方が、受賞されるのでしょうね。
伊丹十三賞に出掛けたよ、のニュースでした。