ほぼ日刊イトイ新聞のメールの窓口である、
「postman@1101.com」。
ここには、日々様々なおたよりが届きます。
主には、こちらで紹介しているような感想メールや、
商品のお問い合わせ、コンテンツへの投稿なのですけれど、
そのなかにまじって、
新しい企画のご提案や、
いまなさっている活動のご紹介などを
いただくこともあります。
そのなかにこんなメールがありました。
ほぼ日の皆さま
赤坂の放送局の低層階屋上で4月から
生物多様性プロジェクトとして
8万匹のミツバチを飼い始め、
とびきり花の香り高いハチミツが採れ始めました。
ご興味がありましたら、
梅雨の晴れ間をぬって皆さまで見学にいらっしゃいませんか!
勿論、網付き帽子や手袋はしていても
最初の5分位は腰が引けていますが、
体調1センチと小さな働き蜂がけなげに
蜜や花粉を次から次へと運んで来る姿に見入り始めると
恐怖感は無くなるようです。
ミツバチの行動半径は3キロと言われますから、
貴事務所までは一っ飛びだと思います。
皇居や新宿御苑も範囲内です。
網付き帽子を被っての姿というのも
一生に一度かも知れませんので
面白がっていただければと思います。
(※一部編集をさせていただきました。)
赤坂の放送局というのは、つまりはTBSのことですね。
青山の事務所からは目と鼻の先ですし、
こりゃ、おもしろそうだ!
ということで、社内に声をかけて、
・と一緒にいってきました。
その、一生に一度かもしれない
網付き帽子を被って、ミツバチと戯れてくるぞ!
さっそく、TBS本社に突入です。
メールをくださったのは、
TBS総務局の高橋さん。
つまり、TBSの屋上(8Fにある屋上)で、
みつばちの世話をしている、ご本人です。
さて、高橋さん、
どうして、都会の真ん中で、
みつばちを飼うことになったのでしょう?
「(いい声で)私、以前から
自社の環境対策などの仕事をしていまして、
2010年が国際生物多様性年だということで、
なにかイベントや企画ができないかと考えていたんです。
そんなときに、国連大学の前をとおったら、
そうですね。
八畳敷くらいのおおきさの、
国際生物多様性年についての垂れ幕がかかってたんですよ。
そこに写っていたのがこの『みつばち』だったんです。
これをみて、私、ひらめきました。
『みつばち』というのは、
緑が多く、花が多く、かつそれらに
農薬が使われていない条件がないと生息できないことから、
実は環境指標生物といわれているものなのです。
これは、ちょっと面白いぞ、と。
つまりは、このTBSがあります、
赤坂一帯の環境条件がよくわかりますでしょう?
わたしたちもちょっとだけ味見をさせてもらいました。
そんなことを考えていたときに、
以前に、『銀座ミツバチプロジェクト』のように、
赤坂でもみつばちを飼おうという話があったのですが、
「どこで」「だれが」ということを決める前に
立ち消えになってしまったということがあったということが
わかったんです。
ならば、とおもって再度、地域の方々、
つまり赤坂まちづくり代表会議のみなさん、
博報堂さん、三井不動産さんなどにお話ししましたら、
『やりましょう』ということになりまして。」
なるほど、TBSの環境事業であるとともに、
地域プロジェクトでもあるわけですね。
「そうなんですよ。」
でも何故高橋さんが?
「私、東京農業大学出身なんですよ。」
あ、それでお鉢が‥‥。
「まあ、それが大きかったかと(笑)。」
いまは、みつばちの世話をして、
はちみつを採取するという養蜂をしつつ、
港区内の小学校の環境教育にも協力しているとか。
「勉強はこれくらいにして
なにはともあれ、
みつばちに会いにいきましょうか!」
いきますいきます。
みつばちは屋上で飼われているということなのですが、
屋上といっても、てっぺんではなく、
低層階の屋上にいます。
で、ですよ。
8階なんですよ。飼っている階数が。
「できすぎてますでしょ?」
できすぎています!
さて、屋上です。
「では、網付き帽子と手袋をつけましょう。
白いシャツで、とおねがいしたのは、
はちは黒いもの、つまり彼らの天敵であるクマの色をしているものを
攻撃する性質があるからなんですよ。
あ、そのカメラ! 黒いですから、気をつけてくださいね。」
「みつばちは、巣箱の出入口に立ちますと、
邪魔だ! といって向かってきますので、
必ず巣箱の横からごらんくださいね。」
おお、おおおお。みつばちだ!
あたりまえだけど、いっぱいいる!!
ほんとに、礼儀正しくしていれば、
攻撃されたりはしないのですね。
「そうですよ。
みつばちは、いそがしく働いていますからね。
巣箱と花の往復もありますし、
巣箱の中は巣箱の中で仕事があります。
だから、公園などでみつばちをみても、
よっぽどのことをしなければ、大丈夫ですよ。
みつばちを飼い始めたからといって、
赤坂にいったらハチにさされたという話もないですから。」
なるほどなるほど〜。
「では、お味見をしてみましょうか。」
巣箱をあけてみます。
巣箱の中の板をひきあげるとき、
ハチがじゃまにならないように、
煙でおいはらいます。
「もってみますか?」
ハチがいなくなったところで、
ナイフでちょっとだけ失敬します。
「網付き帽子を被ってますから、
そのまま指を口にもってってはダメですよ。」
そうだった、そうだった。
案外の視界良好なので、網の存在をわすれていました。
網越しにはなめられないので、
網の下からよっこいしょ、と。
「いかがでしょう?」
さっぱりしています。
なんか、さわやかな香りです。
「ミントっぽい?」
そうそう!
「そうなんですよ、最近とれたものは、
ミント風味がちょっとするんです。」
ミツバチがとんでいける範囲は、
半径2〜3キロといわれていて、
かなりたくさんの公園があります。
折々に咲いている花によって、
はちみつは、テイストが違うんだそうです。
「ミツバチがきたのは、4月なんですが、
そのときに最初にとれたはちみつからは、
桜の香りがして、とても素敵でした。」
普段、虫が苦手だとこういう大集団は
頭の中で考えるとぞっとしてしまうのですが、
みつばちがはたらきものだということがわかると、
ちっとも気持ち悪い感情がわかず、
かえって愛おしい気持ちになってしまうのは、
高橋さんのメールにあったとおりでした。
そして、最後にひとつ、といって、
高橋さんは、みつばちが
はちみつをとるだけの存在だけではないことを
ご説明くださいました。
「みつばちたちは、
人工授粉のためにも無くてはならない存在です。
ビニールハウスでそだつ野菜
(きゅうり、ピーマン、トマト等など)、
そしてりんご、ぶどうなどの果樹も
受粉のために、みつばちを必要としています。
震災で東北の養蜂家もおおきな打撃をうけたので、
果樹や野菜生産に影響がでたんですよ。」
うわあ、なんてすごいんだ! みつばち。
農業にそんなに深く入り込んでいるなんて!
「まあ、みつばちたちは、
せっせと花の蜜や花粉を集めているだけなんですけどね。
その性質を人間が利用しているだけのことで。」
う〜ん。ますます、尊敬するなあ。ちいさい昆虫。
そのちいさい昆虫たちがが一生懸命あつめて、
いままでに収穫できた
はちみつの量は90キログラム。
ほんとうに手探りではじめたので、
どのくらいの収穫になるのかなど
わからないことばかりだったので、
氷川神社・地元商店街・Bizタワーの飲食店・
TBSで4分割するという事以外は未定だそうです。
ようやくこのあいだ、
バーやレストランの方々をまねいて、
「赤坂はちみつ」を披露したところ、
ということでした。
もしかしたら、赤坂のレストランなどで、
「地元でとれたはちみつ」が使われる日が
くるかもしれないですね。
そして、もしかすると近いうちに
そのはちみつを口にできるチャンスがあるかも?
「そうなんです。
9月16日から氷川神社の大祭がありまして、
そのうち、17(土)と18(日)の2日間
境内で行われる盆踊り会場の屋台でつかわれるんです。
和食『菊の井』の村田さん、
中華『トゥーランドット』の脇屋さん
地元で長く有職の茶巾寿司や粽を作っている『福槌』の
3店で使われるんですよ。
どんなメニューになるかは、当日をおたのしみに!
時間があったら、ぜひ足をむけてください。」
お、それはチャンスですね。
ご興味があれば、ぜひどうぞ!
このあと、赤坂のみつばちたちは
どのようにすごしていくのでしょうか?
「春に8万匹だったみつばちは、
最大で20万匹までふえました。
いまは、冬越しに向かって8万匹程度に
数をもどしつつあります。
冬越しするのは、さらに半減して、4万匹くらいになる
ということなのですが、
実は、おくじょうのみつばちたちは、
いまは、養蜂家さんの元へ引越し中なんです。
9月10月はスズメバチがみつばちを食べに来ることがあり、
屋上で人、みつばちともに、
スズメバチに襲われることが無いように、
という配慮なんです。
見学会などは、また来年の開催になりそうです。」
ああ、もう来年になってしまうのですね〜。
でも、春が楽しみになりますね。
高橋さん、ありがとうございました。
それでは、また!