ほぼ日ニュース

フレッシュな若手乗組員たちが
『岩田さん』を読んでみた。
(軽く落ち込んだりもした)【後編】

任天堂の元社長、
岩田聡さんのことばをまとめた『岩田さん』を、
比較的社歴の浅い若手乗組員たちが読んで、
あれこれ感想を言い合ってみましたよ。
参加したのはこの5人です。

ふみふみ
UXエンジニア。
社歴3ヶ月。27歳。
最近、アイスランドに興味がある

ひなひな
「CACUMA」などの商品開発担当。
社歴4年。26歳。
アンミカのモノマネを練習中。

まりさまりさ:
商品やページのデザイン担当。
社歴2年。28歳。
おみやげなどの包装を集めてしまうらしい。

なおなお:
ほぼ日の受付担当。
社歴6ヶ月。31歳。
休日は映画三昧とか。

アリサアリサ
管理部所属、いろいろ担当。
社歴3ヶ月。23歳。
この会の言い出しっぺ 。

 
【後編】
「努力することが
おもしろく感じられた」
っていうところが、
すごくうれしかった。

<【前編】はこちらからどうぞ。

まりさ
もうひとつ、『岩田さん』のなかで
印象に残ってるページを挙げてもいいですか?
このことばもいいんですよー。

ふみ
ほんとに折りまくりですね、ページ(笑)。

まりさ
だから付箋がなかったんだって。
ほら、この、ボトルネックの話。

「もっとプログラムを速くしてください」
というときには、
ボトルネックになっている部分がかならずあって、
それが全体を遅くしているんですね。
プログラムの世界では、よく、
「全体のなかの1%の部分が、
全体の処理時間の七割から八割を消費している」
などといわれるぐらい、そこばかり
何回も処理しているということがあり得ます。
ですから、そのボトルネックになっているところを
直さないかぎりは、そうじゃないところを
いくら直しても意味がないんですね。
ところが、人は、とにかく
手を動かしていたほうが安心するので、
ボトルネックの部分を見つける前に、
目の前のことに取り組んで汗をかいてしまいがちです。
  ──『岩田さん』P.48より

アリサ
わかる‥‥。

ふみ
そうなんですよ‥‥。

なお
また落ち込んでる(笑)。

まりさ
やっちゃいますよねぇ‥‥。
とくに仕事をはじめたばかりの頃って、
不安になってとりあえず
手を動かしちゃったりするんですよね。
デザインだと、とくにそうで、
やろうと思えばいくらでも手を動かせちゃうので、
もう、何パターンもつくっちゃったり。

ふみ
あー、なるほど。

まりさ
でも、そういうことをしてても意味がなくて。
本当は、なにがボトルネックなのか、
それを見つけるのに時間をかけるべきで。
で、それが見つかっちゃうと、
本当にひゅっと終わることがある、仕事って。
細かいことを直していても、
全体はずっと変わらない。
時間だけが経っていって、なにも変わらない、
というのが一番最悪だと思うんですけど、
あの、なんか、わたし、しゃべりすぎじゃない?

一同
(笑)

アリサ
そんなことないですよ(笑)。

まりさ
みんなの印象に残ってるところも聞きたいです。
みんながページを折ったのはどこ?

ひな
いや、誰も折ってないから。

まりさ
こころのページですよ、折るのは。

ひな
意味わかんない。

アリサ
わたしは、「ばかもん!」の
ところがすごく胸に来て。

ふみ
ああ、わたしも。

新人って、どういうわけか、
明らかに説教しやすい人と、
しにくい人がいるんですよ。
安心して「バカもん!」と言える人と、
腫れ物に触るように叱らないといけない人がいるんです。
これって、じつはものすごい差なんです。
こちらから与えられる量も、
その人が吸収できる量も、
ものすごく変わってくる。
「バカもん!」と言われやすい人は、
ものすごくたくさんのことを短期間に学べるんです。
  ──『岩田さん』P.56より

アリサ
岩田さんのおっしゃること、
すごくわかる気がして、
できることならわたしも
「バカもん!」と
安心して言われるひとでありたい‥‥
でも、それってどうやるの! って(笑)。

まりさ
わたしも、そこ、ちょっとつらかった。
自分はどうだろう、って。

ひな
この本、そういうところがありますよね。
すごい、そのとおりだ、って思いながら、
「自分はどうだろう?」って。

ふみ
そう、読み進めながら、
反省タイム挟んじゃいますよね(笑)。
ここからどうしていこうかな、
というシンキングタイムがはじまる。
読みやすくて、わかりやすいんですけど、
激しく刺さってしまうような。

なお
読みながら、手が止まる感じ。

アリサ
そうそう、全体的に、読みながら、
すごく振り返っちゃう。反省しちゃう。

ひな
でも、安心するのは、岩田さんって、
なんか「人に期待しすぎない感じ」があるんですよ。
自分はこうしてます、というだけで、
他人に同じことは求めてない。

まりさ
そう、そう。

ひな
自分ができてるのにそれを他人に求めないって、
ほんとうにすごいなと思うんです。

まりさ
あと、岩田さんの口調って、
「○○しなさい」っていうことがまったくなくて。
淡々と、私はこうしていました、という話し方で。
だからこそ勝手に反省しちゃうんですね、きっと。

アリサ
あー、そうですね、それ不思議ですね!

まりさ
さらっと大事なことだけをおっしゃってる。
で、うまくいかないことに対しても、
「どうしてできないの?」っていうんじゃなくて、
そういうものですよね、って感じで。
たとえば、ほら、ここ。

わたしは思うんですけど、
考えてもしょうがないことに
悩むんですよ、人って。
悩んで解決するなら
悩めばいいんですけど、
悩んでも解決しないし、
悩んでも得るものがないものを、
人間って、考えてしまうんですよね。
  ──『岩田さん』P.95より

なお
すごい。

まりさ
やさしい。

ひな
神様ですか、っていう(笑)。

一同
(笑)

ひな
就活生のときに読んでいたら、
こういうトップがいるところにいきたい、
と思ったかもしれない。

アリサ
あーー。

ひな
そういう意味では、ここも印象深かったです。

わたしは
「人は全員違う。そしてどんどん変わる」
と思っています。
もちろん、変わらない人もたくさんいます。
でも、人が変わっていくんだということを
理解しないリーダーの下では、
わたしは働きたくないと思ったんです。
自分が変わったら、それをちゃんと
わかってくれるボスの下で働きたい。
だから、自分も社員のことをいつもわかっていたい。
  ──『岩田さん』P.28より

一同
はーーー。

アリサ
なんか、ただただすごい、
みたいな気持ちになっちゃうけど、
岩田さんの言うことって、
こういう大きなことばがあるかと思うと、
すごく具体的だったりもしますよね。

ひな
そうなんですよ。
たとえばここなんかは、ものすごく現実的。

大革命をするから、5年待ってください。
その間は利益は出ませんと言ったら、
社長はクビになるんですよ。
だから、毎年、一定水準の利益を出しながら、
でも、変えていかなきゃいけない。
いってしまえば、飛びながら
飛行機を修理するみたいなところがあって。
  ──『岩田さん』P.38より

まりさ
うわぁ、リアル!

なお
「飛びながら修理する」‥‥。

ひな
わたしは、何かあったときに、
「止まって修理に没頭する」タイプなんですよ。
でも、そのあいだも、ずっと機体は動いていて、
そこに自分は乗ってるんだっていうことを
ついつい忘れてしまったりする。
だから、この「飛びながら修理する」という
イメージはずっと持っておきたいなと思いました。

アリサ
わたしも最後にひとつ挙げます。
さっき言ったように、わたしはこの本を読みながら、
「自分はどうだろう?」って
落ち込んでしまうところもあったので、
本の最後の章に書いてあった
このことばを読んで、すごくほっとしたんです。

それは、歯を食いしばって
ものすごく努力するようなことではありません。
ちょっとずつ努力をして、それに対して、
「あ、ちょっとわかったな、おもしろいな」という、
自分の変化の兆しみたいなものを
ご褒美として感じ取ることができたら、
わたしはそれを続けることができるんです。
ひとつひとつはとっても小さいんだけれども、
わかったり、つながったりすることで
努力することがおもしろく感じられて、
その連続で身についていくような感じなんです。
  ──『岩田さん』P.211より

まりさ
「わたしは努力しました」っていうんじゃなくて、
「努力することがおもしろく感じられた」
っていうところが、すごくうれしかったです。

アリサ
そうなんです。成功した人って、
血の滲む努力をしましたとか、
毎日朝まで働いてとか、
そういう話が多い気がするんですけど、
そういう話じゃなくて、
少しずつでいいんだよって
書いてあるように受け取ったので、
すごく前向きな気持ちになれました。
さて、そろそろ終わりにしようと思いますが、
最後にみなさんに質問です。
この本は、どういう本だと感じましたか?

ひな
たぶん、本屋さんに行くと、『岩田さん』は
ビジネス書の棚にあると思うんです。
わたし、ビジネス書はけっこう読むんですけど、
けどそれと同じテンションでこの本を読むと、
ちょっと違和感があると思うんです。
たしかにこの本はビジネスに役立つことが
たくさん書いてあるんですけど、
ふつうのビジネス書とは違う。
ことば選びなんかは小説とか
物語っぽいと感じるところもあります。

ふみ
物語っていうのはわかります。
なんか、岩田さんがここにいて、
語りかける感じに書かれていますよね。

アリサ
人にすすめるとき、なんて言えばいんでしょうね。
岩田さんの人生論なのかな。

ひな
一種の自己啓発ともいえるのかな。

ふみ
いろんな読み方ができるから、
ひと言では言い表しづらい、
でも、それがこの本のよさでもある。

アリサ
仕事の役に立つのは間違いないですけど、
それだけじゃないですよね。
「おもしろく仕事をしたい」
っていう人にいいのかな。

なお
人生のヒントがたくさんつまっている気がします。

ふみ
自分で環境を変えられる、
変えたいと思う人は、
読んですごく前向きになれるかもしれない

ひな
必要とされる人になるには、みたいな感じかな。

アリサ
わかりました。
どうもありがとうございました。

一同
ありがとうございました!

( お し ま い )

『岩田さん』(ほぼ日ブックス)はこちら

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