「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」 〜釣りに行こう〜 ひこねのりおインタビュー 原画だけじゃなく、動かすところまで やりたくなっちゃった |
『糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!』に 欠かせないのが、ひこねのりおさんの描く かわいい動物のキャラクターたち。 いったいどんな人がどんなふうにして描いているんだろう? ひこねさんのスタジオにおじゃまして、 いろいろお話を伺ってきましたよ。 |
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──『糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!』は、 「つりずき村」を舞台にして、 ひこねさんが描く動物のキャラクターと一緒に 釣りに行くことができるようになっています。 これらのキャラクターはどのように決まっていったんですか? ひこね: 最初に「こういうキャラクターがほしい」という要望が あって、それに基づいてぼくが描いていきました。 前作(スーパーファミコン版)は、パッケージのイラストと、 コマーシャルの画像を担当したんですが、 ゲームの中に出てくるキャラクターを描くのは 今回が初めてなんです。 |
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──ひこねさんは、ゲームの世界とのつながりは? ひこね: 明治製菓の『カール』のキャラクターを手がけてまして…… ──『カールおじさん』! ひこね: そうなんです。カールの『カールおじさん』が ぼくの作品なんですが、そのキャラクターたちが 畑を耕して農場をつくるゲームをつくったことがありますよ。 でも、ゲームをつくったというよりも、 すでにできあがっていたキャラクター達が出演した、 というかんじかな。 あのころは、まだ、ゲームの画面も粗かったですね。 ──NINTENDO64になったことで、 情報量がかわりました。それで画面も3Dになったんです。 そういう奥行きのある世界に、ひこねさんのキャラクターを 動かしていく、というのが今回のゲームなわけですね。 ひこね: そう、最初は、3Dの世界に ぼくの2Dのキャラクターを入れて、大丈夫なのかな? と思っていましたよ。 でも、キャラクターの足もとに影をつけたりするなどの 工夫をしてもらったら、なじんでいきましたね。 ──ひこねさんのキャラクターがあることで、 初心者には難しく思える釣りの世界に、 すんなり入っていけるような気がします。 このキャラクターたちができあがっていく過程を 教えていただけますか? ひこね: 最初が、おととしの夏でした。 だからもう忘れかけてる(笑)んだけど……。 ひこねまふみ: 最初は、わたしたちゲームのことがわからないので、 言われたようにキャラクターをつくる、というところから 始めたんです。 ひこね: でも、ゲームを制作する過程で、 必要になるキャラクターが増えたり、 逆に、いらないキャラクターがでてきたり、 そういう試行錯誤はありましたね。 ほんとうは、キャラクターだけつくって、 あとの動きはお任せしようと思っていたんですよ。 それが、最初にできあがってきたサンプルを見て、 「これは自分でやりたい」って思ったんですね。 |
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──アニメーターとして、ということですか。 ひこね: そうですね。ふつう、イラストレーターだったら アニメは専門のかたにお任せするんですが 僕はアニメーターでもあるものですから。 もうアニメーター暦も40年になるので、 イメージと違うと、どうしても自分で やりたくなっちゃうんです。 ──いわゆるアニメーションをつくるのと、 NINTENDO64で絵を動かす、ということには 違いがあるんですか? ひこね: NINTENDO64では、 ひとつの動作の繰り返しのために、 6枚の絵(動画)が必要になると言われたんです。 でも、アニメーションだと、最低でも8枚使う。 いちばん基本となる動作でいうと「歩く」ですが、 2歩あるく、というときには8枚の絵がいる。 それが、6枚なんです。理由は聞かなかったけど、 そういうのはしょうがないよね。 だから6枚で描くのだけれど、 ぼくは8枚になれているから、むずかしいわけ。 どこか2枚を省く、ということではなくて、 全体を6つの動作に分割し直さなくちゃいけないから。 でも、なれてくると、いかに少ない枚数で 動きの感じを出すか、というところに 快感を感じるようになってくるわけ。 ──アニメーションは本業でいらっしゃいますが 今回のように「釣り」というテーマがあると たいへんだったこともあるのではないでしょうか。 ひこね: そうですね、歩きのアニメーションはわかっても 釣りに関してはぼくはわからなかった。 だから、釣りがよくわかるアニメーターがいれば そちらのかたのほうが良いだろう、とさえ思ってました。 でも、釣りの動作にしても3枚ひとくみで描くという ことだったので、僕が釣りがうまいかヘタか、というのは あまり関係なくなりましたね。 ひこねまふみ: ダイスさんが苦労なさったんですよ。 わたしたちがわからない部分は、 ぜんぶ、ダイスの小関さんが資料を集めてくださって、 釣りのビデオなんかを貸してくださってね。 (ファイルを出して) あ、キャラクターのラフが出てきましたよ。 |
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ひこね: これはタコですね。 ゲーム画面で糸井さんが手に持っているタコです。 これはこういうふうに、5つのラフを描いて、 選んでもらったんだった。 最終的にはハダカのタコになったんですよ。 ──ネコもずいぶんちがいますね。 ひこね: それぞれ何種類か候補を出したんですよ。 最初の注文というか、キャラクターの性格付けが 非常に面白かったので、楽しく仕事ができたんです。 というのも、ふつうの仕事というのはね、 「ほのぼのとしていて性格の良いもの」 なんていう、差し障りのない発注がくるわけ。 それがね、このキャラクターというのは 性格が屈折してたりするんです。 性格がヘンクツなやつとかね。 描いてて面白かったです。 |
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ひこねまふみ: (書類を出して) これが最初のキャラクターのアイデアですね。 ダイスの小関さんからいただいたものです。 |
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──うわあ、こまかいですね。 できあがったゲームは……広報資料によれば こいうふうに書いてあります。 「クマさん:おっとりした世話好きタイプで、 いつも村の仲間のことを気づかっています。 バス釣りの腕はふつうくらいです」 その裏側には、こんな隠された性格があったんですね。 ひこね: ネコなんかは音楽好きだから リズム感のある歩き方にするなど、 歩き方にも違いを出しているんですよ。 あと、すごくイヤな性格で、ゼッタイ一緒に飲みたくない というようなキャクターもいたんですけど、 最終的に登場しないことになりましたね。 けっこう好きだったんだけどな。 |
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──ふだんひこねさんが描かれている世界でも、 こういうふうにキャラクターの性格を作り込んでいくものなんですか。 ひこね: キャラクターって、自然にできていくものですね。 たとえば『カールおじさん』はもう25年以上にもなるけど、 最初のころよりも今の方がキャラクターが完成されてます。 最初は、こんなに長くやるとは思わずに、 ひとつのコマーシャルをつくるためにだけ描いたわけだけど、 シリーズになっていくうちに、人気が出ちゃった。 動物にまじってひとりくらい人間のおじさんを 入れておこう、というだけだったのにね。 そのあと、カールのなかでカエルに人気があつまったり、 さらにそこから派生して、サントリーのCMで ペンギンが登場したりしました。 ぼくのキャラクターって、そういうふうに動いていくなかで、 性格付けができあがっていくんです。 でも、今回の場合のように、 はじめからきちんと性格のあるキャラクターも、 描きやすいし、面白かったですよ。 |
採用されたのは左のおじさん。この人も人気者になるか!? |
──ビデオになっているアニメーション作品などは、 原作がひこねまふみさんと連名になっているんですね。 お二人で仕事のチームをつくられて、長いんですか? ひこね: 虫プロ時代の職場結婚ですから、長いです(笑)。 『ジャングル大帝』のころだったかな。 彼女もアニメーターなんですけれど、 色を塗るのが好きで……今まで絵の具で塗っていたのを 最近はマックでやってますけれどね。 このごろはもう絵の具はカビがはえちゃってる。 僕はパソコン、ぜんぜんだめなんで、 手描きでのものを彼女に渡して取り込んでもらい、 画面を見ながら色をつけていってもらうわけです。 最近はホームページも つくってますよ。 |
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──「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」が終わって、 いまはどんなお仕事にかかってらっしゃるんですか? ひこね: 来年のカレンダーを描いてます。 もうそんな時期なんですよ。 それから『カール』の仕事はずっと続いていますね。 それから、来年に出版する絵本のための絵を描いたり、 ……あ、その前に今年の11月に青山で 個展を開くことになっているので そのために新しい作品を描こう、というところです。 ひこねまふみ: できるかどうかわからない、っていう不安は?(笑) ひこね: 画廊、予約してあるからなあ(笑)。 やらないとね。 ひこねのりおさんの描いたキャラクターたちのおかげで このゲーム、すごくあったかい感じがします。 やっぱり釣りをするのなら、 楽しい仲間と一緒のほうがいいもんね。 さて、『糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!』は 今回でひとまず、おしまい。 トーナメントの結果などは、おってコラムなどで お伝えする予定です。 次回からは「ゼルダの伝説」をお届けしますよ! お楽しみに! |
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2000-04-28-FRI