「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」 〜釣りに行こう〜 制作スタッフ座談会 その4 釣りの法則だけじゃ、釣れない。 全然釣れないはずが、たまに釣れてしまうこともある。 そういう偶然性の面白さもぜんぶ、入ってるんだ。 |
この座談会が収録された日、ダイス本社ではまだ プログラマーのかたがたが細かな修正作業をしていました。 今回は、そんなお話からスタートです。 音楽の話も出てくるよ! |
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小関: わたくしの言いたいのはですね、今、こうして座談会に 出ている裏では、ウチのプログラマーたちが、 バリバリとプログラミングをしている。 日夜果てるとも知れぬ作業なんですね。 そういう努力があるということをきちんと 書いていただきたい! 糸井: もちろんですよ! 小関: 今日も忙しくて来れないんですよ。 糸井: プログラマーの腕がよくなかったら、このゲーム、 ぜったい、実現しない。 ──何人ぐらいいらっしゃるんですか。 |
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小関: 最初は2人で始め、3人になりました。 それが、「このゲームに大事なのはルアーだ」ということに なって、釣りの好きなプログラマーさんを紹介してもらい、 さらに優秀なプログラマーさんにも入ってもらって、 5人のチームをつくりました。 それで1年くらいやってたんですけれど。 釣りの好きなプログラマーさんもそうだし、そうでない人も 倉恒さんからああだこうだ、こうせいああせいって言われて いろいろ葛藤がありつつも、プログラムを組んで、 お見せして、喜んでいただいて、っていうことが励みで。 釣りのことがわからないプログラマーというのは、 つくってて、自分が組んだ結果としてこういう動きに なったとしても、「果たしてこれでいいのかな?」という 疑問を持ちながらのところで、やるしかない。 不安を持ちながら見せるしかないわけです。 そういうところに「よくなったやないか!」ということも あれば、「あかん!」って、ゲンコツで殴られるような ショックを受けることもある。そういう中で、 プログラマーたち……ディレクターはじめみんな がんばったんだけれど、特に、今日来れない プログラマーのみんな。 そのことを、わたくしとしては、ぜひアピールして おきたいと、かように、思うわけでございます。 糸井: ……それって、「今は亡き……」みたいじゃない(笑)。 小関: そ、そんなことはありません!(笑) サイトウ: それはサウンドの人たちにも言えることですよね。 糸井: そうだね! 音楽家の山口優くんだよ。 いやぁ、よくできたね! あの音楽は。 武久: あのサウンドが、大人気なんですよ。イベントで。 倉恒: 頭から、鳴りやまへんのよ。口につくのな。 「パーパラッパ〜パ〜パ〜♪」ちゅうてな。 武久: 任天堂の社内で誰にやらせても、 「この曲いいなあ! 頭に残るなあ」 という話だったんで。 ゲームのイベントで出展したときに、最初、 何も音を鳴らさずに、静かにやっていたんですよ。 でも、それでは静かすぎてダメだ、ってことで 次の会場からはあの音楽を鳴らし続けて。 もう、外の通路に向けて「パーパラッパ〜パ〜パ〜♪」 ってね。そしたら、人の集まりもよくなったんです。 サイトウ: あのサウンドも何度も何度も作り直してもらって、 やっぱりね、釣りゲームで盛り上がるシーンで どんな音楽を鳴らせばいいのか? って、 難しいところだったんです。普通のロックっぽいものでは つまらないだろうし。かなり作り直しましたよね。 |
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糸井: 山口くんにしてもそうだけど、外の世界でプロの人が 集まって作っているというところがいいんですよ。 ゲームがわかるからって勉強した人とは違う。 何かが違うんですよ。 ──山口さんも、山中湖まで一緒に出かけていって 釣りを体験してもらったんですよね。 そのとき、「ああ、釣れるってこういうことなのか!」 ってわかったと。それまではダメ出しを受けても どういうことなのかいまひとつわからなかったことが 実際に釣りをしてクリアになったらしいです。 糸井: 山口くんは釣りが好きになるだろうって思ってたんだ。 うれしそうにやってたよね。 アベキ: あと、裏話としてはですね、西に倉恒さんがいらして、 東には斎藤海仁さんという、もうひとりのアドバイザーが いらっしゃって。ぼくら、両方からいろいろアドバイスを いただくんですが、……たまにね、その意見が、 ちょこっと食い違うことがあるんですね(笑)。 ダイス一同: そうだ、そうだ!(笑) 倉恒: かーっ(笑)。 小関: でもヘッドコーチは倉恒さんなので、ヘッドコーチに 沿ってやっていくんですけれど、そこでまた 挟まれちゃうんですよ。 糸井: そうだろうなあ。 |
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アベキ: 似た意見ならばうまくかみ合わせられるんですが まったく違うと、「どうしたらいいんだ!?」 「どう解釈すればいいんだ!?」って悩みました。 ──たとえばどういうことなんですか? アベキ: 釣り人って、基本はあっても、その人の経験や考え方で 釣り方って変わってくるんです。もちろん倉恒さんと 糸井さんが違うということもあるんですよ。 ルアーにしても、「こういうときはこういうルアーだよ」 ってことが、違ったり。 糸井: 両方とも、体験は深いから、どちらの意見でも 釣れるわけなんだよ。たしかにそれは弱るだろうね。 季節と場所の関係、魚の分布なんかの意見も、 違うでしょう。「この季節のこの天気なら、ここに魚が いる」っていう設定は、斎藤くんと倉恒くんは、 ぜんぜん違うと思うよ。 アベキ: 違いますねえ。 倉恒: ……(無言)。 小関: あれ? 倉恒さんが、おとなしくなっちゃってる。 倉恒: いやいや、……あのね、そらそうやろうな、と。 それは、作業上の端々で、わかってましたもん。 ──釣りをしている人はみんな違いますもんね。 糸井: 違うね。ぜんぜん違う釣り方していても、 うまく行くからね。 ──村野さんの作られた地面や地形に対しては、 倉恒さんからどんな注文があったんですか。 |
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村野: ルアーほどは、なかったですね。 糸井: (笑)ルアーほどは。 倉恒: ていうかね、実は、ルアーほどあったんですよ。 でも、ルアーにメモリが食われているから、 もう言えない状態だったですね。 そのことは念を押されていたので、いくらなんでも それを言ったらひどいでしょ? だから、これ以上は 言ったらアカンな、ってところで、分別をつけながら 言ってましたよ。それでもやっぱりリザーバー(ダム湖) 入れたし。いままでの釣りゲームでリザーバー入れたのって ないですからね。それをあえてつくる、というので、 トライしたんです。そうしたら敵陣営も同じことを 考えて、リザーバー持ってきよったわけですけれど、 やっぱりな、違うよな。 ……そやからあんまし言ってないですよ。 糸井: あんまし? 倉恒: 立ち木が太い、とか……。あのね、数減らすんですよ、 すぐに! 一同: (笑) 倉恒: ほっとくと、木の数、減ってるんですよ! なんでや。 きっと皆さん見たことないんですよ、そういう釣り場を。 立ち木がブワーッとある釣り場を。実際に見ていたら 減らせないはずなのに。 アベキ: いや、僕は、見たことあるんですけど、 もうどうしようもなくて。処理が重たくなるんですよ。 |
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倉恒: (聞いていない)なんで減ってんのー、って。 それとか、いきなり太くなってたりとか。 「こんな巨木ないよーっ!」とか。あったよね、 そういうこと、しょっちゅう(笑)。 そやから、今回のリザーバーの絵柄に関しては、 お互いの妥協点というのがありますよ。 アベキ: 立ち木の本数は、たしかに、もうちょっと、 置きたかったですけどね。どうしても置けなかった。 倉恒: それよりもなによりも、ひとつのつながった湖、っていう ことで設計されていたのが、分断された! ダイス一同: (笑) 倉恒: それがいちばん痛かったですよぉ。 実はいちばん最初に湖全体の設計をして、 上流部から下流部への、全体の水流。それって湖の いろんな要素を支配しますからね。山の高いところから 低いところ、これ、魚の位置関係を全部支配して くるでしょ。だから、それを総合的に、マクロで設計 していたんですよ。それが、全部、カットされたから、 その時は頭のなかが真っ白になりましたよ。 「どうすんの、これ……???」って。 糸井: 簡単には、なったんだけどねえ。 倉恒: 簡単にはなったんやけどもねえ。爆発しましたよ。 ──カットされたというのはどういうことだったんですか。 いまあるフィールドが……。 倉恒: 一体化してたんです。 アメリカの湖沼のように……。 糸井: 数珠つなぎだったんだよね。 ──水門とか水路で隣とつながっているというような……。 アベキ: そういうことを考えていたんですけれども、 いろいろな問題から、それがかなり難しいことだと わかって。 |
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糸井: 早い話がさ、霞ヶ浦と、琵琶湖が、つながってるわけだよ。 倉恒: そうだったんですよ。 糸井: 最初は、当たり前のようにつながっていたよね。 全部地続きで行きたかったんだよね。だからつながってた。 でも、分断したほうが、やる側には便利だったよ。 実際自分でやってみて思ったよ。あれ、全部つながってたら どこまでもボートが行っちゃうんだよ!? 本当の釣りはそうなんだけど、そこまで残酷にしなくても。 サイトウ: そうなんですよ。釣りとしてではなく、 ゲームとして楽しいものにするということで、 僕はいつも間に挟まれていたなあ……。 単純に「釣りシミュレータ」だったら、普通の人は 釣れないんですよ。つまらないし。 あと、釣る気にもなれないし。 「ちょっと釣ってやろう!」って気に、どうさせるか。 その組み立てが、いちばん面白かったですけどね。 倉恒: 結果的にはね、湖の名前が「かかすみ」とか「ききたこ」 「ののいけ」「なないろ」なんて言ってますけれど、 実際に連想される湖をシミュレーションしているかって 言ったら、そうじゃないですよ。 糸井: ちがう、ちがう。 倉恒: それやったら、面白くないから。やっぱり湖の独自性を 出すのに、苦労しましたね。 で、あるときは、無茶苦茶言うんですよ。 「回游バス入れたい」 って話になったんですよね。 糸井: 結局、入れたんだよね。 倉恒: 入れました。それね、数年前に出てきた新説なんですけれど、 いまあるストラクチャーとか、季節的動きをしている魚とは 別に、大きく回游しているバスの集団というのが、 琵琶湖で見つかったりして。 ダウンショットリグを入れるのと同じように、 トレンドを入れましょうという気分があって。 そうしたらダイスさんのほうから 「回游バスの動きをやってください」 って言うんです。でも僕べつに回游バスになったこと ないしねぇ。 ダイス一同: そんなぁ(笑)。 |
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倉恒: しかも、回游バス追いかけたことがあっても、 そんなの、ポイントでしか出会えないでしょう。 漁師でもあるまいし、ボートで追うにも限界がありますし。 思わず「どーすんのソレ!?!?」って、 自分で提案しときながらそう言ったりして。 ともかく自分が回游バスに出会った経験を思い出しながら いろいろとシミュレーションして。 それでも悩むんですよ。それがあるときふっ切れた。 こう思い至ったんですよ。それはね、 「この湖の神は、俺や」。 一同: うわーっ!!(笑)。 倉恒: そう思わんと、なにもでけへんのよ(笑)。 ただ基本的な生態の基礎みたいなものは反映しないと まずいんで、実際の湖で出会う回游バスの動きと いっしょなんですけど、その間の過程においては わりとイージーになってます。 糸井: ゲームの中では、数字だけのことだからね。 サイトウ: 倉恒さんの論理があって、正確に再現すると、 「それをすれば必ず釣れる」というゲームになっちゃうん ですよ。で、それはそれでつまらないと思う。 ある種の偶然性であったり、ビギナーズラックであったり、 ということで、頭で考えていた以外のことができる、 ということを設計の中で入れていかなければいけないので。 そこが苦労したところですね。 理論的に「こういうときはこうすれば釣れる」というのは あるんですけれど、かといってその法則を見つけちゃったら それはそれでつまらない。 その法則でやっても釣れないときは釣れない、 もしくは、本来なら全然釣れないはずが、 たまに釣れてしまうことがある。 ていうふうに作っていく、というのが難しくて。 小関: それから全体の釣れ具合だよね。 糸井: いま僕がやっている開発中のゲームソフトは、 釣れない具合の、リアリティがすごいね。 しょうがないか、俺のせいだもん。 サイトウ: イージー、ノーマル、ハードとあって、 その「ハード」に関してはかなり釣れなくしてるんですよ。 ハードでやると、本当の釣りに近いですね。 その釣れない具合が。 |
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糸井: 俺59センチ、釣ったよ。 一同: おお。 糸井: たぶん金ちゃんが釣ったのより、でかいよね。 金澤(ほぼ日スタッフ): でも僕、59センチのスモールマウスバス釣りましたよ。 糸井: ……ちぇっ。 一同: (笑) 糸井: ……俺、ナマズも釣ったよ(笑)。 サイトウ: それは倉恒さんの指示で、ですね、 「ここはどう考えても釣れる」というポイントで、 わざと、外道を釣らしてくれ、というのがあるんですよ。 倉恒: それからね、サイズは言えないんだけど、 モンスターがおるんですよ。 それのね配置、っていうのもたいへんだった。 糸井: ウーン! 倉恒: それはね、僕は、琵琶湖で日本新記録が出る前に、 「琵琶湖には70アップ(70センチ以上)がおる!」 って叫ぶ奴だったんですよ。 「釣ったこともないくせに何言うてるねん」 と言われながらも。そやけど、琵琶湖でも目撃してますし、 地元の漁師の話も聞いてたから信用してたんです。 でね、このゲームでのモンスターの入れ方は、 昔漁師に聞いた場所設定を再現しているんですよ。 「お前ら、そんなとこで釣ってても、でかいバスは 釣れへんど。いるのは、あそこや」 って言った、その「あそこ」なんです。 言えないですけどね。 そやから、……釣れへんと思うよ。 でも、意外と、子供が釣ったりするやろな。 アベキ: 無心にね。 倉恒: でも狙っては釣れない。 サイトウ: きっと、そのポイントを教わって、 「じゃあみんなで釣ろう」とやってみても、 それでも釣れないと思いますよ。モンスターは。 倉恒: でも、これ発売したら「釣れました」っていう報告が あるかもしれんね。 糸井: どっかで釣れるかもね。いないってことは絶対ない わけだからね。 |
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そうか、このゲームには「外の世界のプロ」が いっぱいかかわっているんだ。それから神様も。 さあ、発売までカウントダウンしながら、 次回も、この座談会の続きです。 まだまだ見逃せない情報満載でお届けしますよ! |
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