「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」 〜新しいゼルダを、とことん語ろう〜 宮本茂+青沼英二+小泉歓晃インタビュー その4 ゼルダの中に、きっと自分がいます。 |
4つのダンジョンとは別に 本筋とは別のサブイベントが 同じ時間軸にそって進行するという 不思議な世界を描いたNINTENDO64ソフト 「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」。 制作者インタビュー、4回目の今回は そのサブイベントについてもお聞きしていますよ! |
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──今回のゼルダ、広告のコピーが 「こんどのゼルダには【こわさ】がある。」 ですね。「従来のゼルダテイストはそのままに、 仮面、月、時間、そして奇妙な住人達との出会いが 不思議な【こわさ】を演出する」と。 小泉: そうですね。 ──こわさ、という言葉ですが、 バイオハザード的な「怖いゲーム」とは言っていないですね。 ゲームの中にある、月が落ちてくる、とか、 時間をループさせるであるとかの「不可思議」な部分、 それがちょっとした「こわさ」であると……。 宮本: 今回のゼルダの世界を広告で伝えるのは なかなか難しいというのはありましたね。 「月が落ちる」なんてほんとうにいいのか、 ということが、僕は気になっててねえ。 青沼: えっ!? |
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宮本: 「ツキが落ちる」なんてさあ。縁起が……。 青沼: なんだ、そういうことですか(笑)。 宮本: これ以上ツキを落としちゃだめだろう! なんて言われないかななんて思ってね。 小泉: 出ましたか、この宮本さんらしい発言……(笑)。 宮本: 前も「陶器のオカリナ」が 「時のオカリナ」に変わるっていうゲームだったんで。 青沼: 勘弁してください。 この攻撃を深夜の一時とか二時とかにされるわけですよ。 |
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小泉: 余裕のあるときなら笑うんですが 余裕のないときだと「ハァ……」しか言えない(笑)。 ──こういうチームなんですね。 しかし、話を聞いているとゲームをしたくなってきますね。 宮本: でも最初の一時間くらいはツライですよー! ツライだけ。 小泉: そのツライ、を越えたあとに面白さがあります。 宮本: おもつらい(笑)。ほんまに。 ──いや、そういうことを言ってしまえることって すごいことではないかと思うんですが。 このゲームを攻略するには……。 |
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宮本: 今度のゼルダはね、「攻略」という言葉が似合わないと 思ってるんですよ。攻略ではないんです。 たとえば本って、ゆっくり楽しんで読むものですよね。 攻略するものではない。そういう感覚なんです。 本って、読破すること自体が目的か? といわれたら、違うでしょう。 やっぱり楽しんでほしいと思ってて。 4つのダンジョンに関しての 「攻略」っていうのはあるんですよ。 でもそれ以外の、3日間に、街でいろんな人が 動いているのを見て楽しむであるとか、 そのなかで、一日一善じゃないけど すこしでも人を幸せにしてあげよう、ということ。 そういうふうに功徳を積むだけでも何日も遊べる。 「やらなくていいこと」が非常に多いんですね。 ゲームを買ってきてそういうふうに遊んで、 一ヶ月遊んでも満足というゲームをつくろうと、 はじめから「攻略」しなくて済むようにしたんです。 小泉: 「やらなくてもいい」ことだったら ほんとにたくさんありますね。 そこが面白いというのがありますね。 |
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宮本: この2人はヨメさんとの話を いっぱい入れ込んだらしいですよ(笑)。 私生活を投入して。 小泉: (笑)そういうメタファーは入っていますよね、たしかに。 けっこうアダルトなゲームなんですよ。 子供向き、といいながらも、アダルトな意識が強くて。 もちろん大人の方が見たらなるほどと思うことがあるし、 子供にはまだわからなくても、 そのうちわかるようなことも入っている。 大人達の世界を描いたり男女の世界を描いたりしてますが 大人の世界を描いているはずなのに、その実、 状況から考えたら非常識なくらい子供っぽい理由が 悩みの原因だったり、 逆に、子供達の世界を描いているはずなのに それが非常に大人っぽかったりということもありますね。 |
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宮本: 登場人物は、ほんとうに3日間で世界がなくなると 信じている人から、信じているんだけどごまかしている人、 はなから信じていない人などがいて、 それをまた怖がっている人から楽しんでいる人まで いろんな人がいるんですね。 いろんな人間をそこに詰め込もう、という作り。 青沼: 最終日には、どっか逃げちゃってる人がいたり、 頑固に残っている人もいる。 |
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宮本: その中に、自分がきっとどこかにいる。 小泉: 「俺はどれなんだろう?」って思える。 ──深い……。 宮本: それを楽しんでもらいたいわけです。 ゲームとは思えないですねえ!(笑) 僕は小説を越えたと思っているんです。 ──同時にいくつかの物語が進行していて 見る人の意志でどこを切り取るかによって 見えてくるものが全然変わってくる…… 小説では難しいかもしれませんね、 そういう世界を表現するのは。 |
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青沼: このゲームは、言葉で説明するのが難しいんですね。 面白さを伝えるには、ゲームをプレイしてもらうしかない。 たとえば宿屋のお姉さんのところにゴロンが行くシーン。 そこにたまたまリンクがいたらその会話が聞ける。 『お名前は?』 『リンクだゴロン』 『あ、ご予約承っております』 そこで部屋にリンクは入れないけれど 時間を変えることはできるわけだから ちょっと戻ってみて、ゴロンに先回りして話しかけると、 お姉さんはリンク自身に『お名前は?』と問い掛けてくれる。 ほんとうはゴロンが予約していたのに リンクが先に話しかけることで 流れが変わってしまう……こういうことって、 やっぱりプレイして、その時間のなかに身を置いてこそ 面白さがわかるというか。 宮本: そうなんですよね。 気がついてほしいのはね、 すごく後悔している人がいたら 後悔している原因が必ず過去にあるはずなので その人につきまとって どこで後悔したのか突き止めないことには イベントが解けないことがあるってこと。 そういうことに、頭を使ってほしい。 |
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──マラソンマンというのが出てきますよね。 公務員で実直な。仕事を毎日やっている。 郵便局員なので、決まった時間にポストを回収して 回っている。ただ3日目の夜になると 本当は逃げたいんだけれど仕事があると言って すごく悩んでいますよね。 そこにリンクがなにかをしてあげることによって その人を救うことができる。 でも、しなくても、その人の人生だから かまわないんだけれど、 そういうことが組み込まれているというのが 非常に面白いと思うんです。 宮本: そういうのはサラリーマンの方は よぉくわかっていただけると思うんです(笑)。 ダンジョンが難しかった人は、 そういうことをして遊んでいることもできるんですね。 |
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ゼルダの深部にふみこみつつ、 座談会は次回も続きます。 お楽しみに! |
2000-06-08-THU