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「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」

 〜新しいゼルダを、とことん語ろう〜

 
 宮本茂+青沼英二+小泉歓晃インタビュー その5
 自分がゲームにどう関わるかで、
 どんどん違うものになっていくんです。
 
 
NINTENDO64ソフト
「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」。
制作者インタビューの5回目です。
プレイヤーの時間とゲームの中の時間が
完全にシンクロするという世界観が
どのように作られていったのか?
そのあたりのことをお聞きしています。

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●参加者
 
●青沼英二(あおぬま・えいじ)
任天堂株式会社情報開発部所属。
担当作品に、スーパーファミコン『マーヴェラス〜もうひとつの宝島〜』
NINTENDO64『ゼルダの伝説〜時のオカリナ〜』がある。

 
●小泉歓晃(こいずみ・よしあき)
任天堂株式会社情報開発部所属。
担当作品に、ゲームボーイ『ゼルダの伝説〜夢を見る島〜』
NINTENDO64『スーパーマリオ64』
『ゼルダの伝説〜時のオカリナ〜』がある。

 
●宮本茂(みやもと・しげる)
任天堂株式会社情報開発部所属。
担当作品は、NINTENDO64『ゼルダの伝説〜時のオカリナ〜』
『スーパーマリオ64』ゲームボーイ『星のカービィ』
『ポケットモンスター』など多数。

 

 
イメージ   ──今回のゼルダは、
ダンジョンをクリアしなくても遊べるくらい、
サブイベントが充実していますね。
お話を聞いていると『寄り道のほうが面白そう』
とさえ思えてくるほどです。

 
青沼:
今回のゼルダは、サブイベントなどを中心に
新しいゼルダを期待してやる方法と、
オーソドックスなゼルダとしてダンジョンを解きながら
そこにまたちょっと違う要素を加えながら遊ぶ方法と、
さまざま方法で遊べるわけです。
前作からそのまま来ている人もそういうルートで行けるし
初めてのユーザーもビックリしながらやれるだろうし。
 
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小泉:
でもまああんまりサブイベントばっかりやっても
進まないんで。
メインはメインでやっていただきたいですね。

 
宮本:
操作の仕方を知らないとまずいというのもあるし。

 
小泉:
どのボタンでどうなる、ってことを。

 
青沼:
やっぱりゲームライクな部分もなきゃいけないんですね。
テーマに対してまっすぐな部分。
それをやっていかないと、いつまでたっても
月は落ちてくるよ、と。
 
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小泉:
けっこう面白いのが、街で煮詰まってくると
外に出て草刈りしたりするとストレスが解消できる。
ダンジョンに行って解けない謎があると
帰ってきてお姉ちゃんの顔を見れば
「もう一回挑戦しに行こう!」とリフレッシュする。
どっちかで息抜きすることができるんですね。
でもどちらにも3日目には月が落ちる、という
同じルールがあるんですね。

 
宮本:
時間がちゃんと動いているんでね、
遊ぶ人の性格も出てしまうし、
僕なんかは……待ち合わせの時間に遅れるんですよ。

 
青沼:
うわぁ(笑)。ほんとに。
 
小泉:
私生活だ(笑)。

 
青沼:
時間の読みが甘いって(笑)。
 
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宮本:
ゼルダのイベントでも、
現場に行ったらまだ2時間もあるとか(笑)。
それでちょっとどこかで時間をつぶそうと
出かけて帰ってきてもまだ30分あって、
また出かけたら今度は間に合わなくなって
走って戻ってきたら、ちょうどそのイベントが
終わったところだとか(笑)。
ほんとに自分を映す鏡でね、
情けなくなりますよ。

 
小泉:
ほんとに性格が……

 
青沼:
あらわれてますよね。
 
──オソロシイ。
 
小泉:
そういうふうにつくってますからね。

 
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青沼:
ゲームの中の時間をどう使うのか、というのは
本当に面白いと思いますよ。
 
──なかなか今までにないゲームですね。
 
宮本:
今までにないゲーム、というか、
……そう大上段にふりかざすこともないんやけど、
やっぱり、ゲームだからできた。
映画でも小説でも、今までのゲームでも
やっていないことですから。
まあ「シェンムー」とかは少しやってるかもしれないけど
ひじょうにこなれたものになっているんです。
これって「マルチメディア」と言われる、
まさしくそのものになっていると思うんです。
「マルチストーリー」とか「マルチエンディング」とか
「タイムトラベル」とか、いろいろなことを
僕らもためしてきたし、小説も映画もやってきたけれど、
このゲームをやると、本当にこれは
ゲームだけでできるマルチストーリーであることが
わかってもらえると思う。

 
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──小説も違う、映画も違う、ほかのクリエイティブの
何に近いだろうと考えると、違うかもしれないですが、
現在の演劇がやろうとしていることに近いような、
そういう印象を受けました。

 
青沼:
エンターテインメントなんだけれどライブ感がある、
そういうことが、演劇と共通することなんでしょうね。
 
宮本:
「ライブ感」ってテーマやもんね。

 
──生身の人間が目の前で動いていて、見ている自分も
どこへ持っていかれるのかわからない、
というようなものって、今のエンターテインメントで
それができるのは演劇と、ゲームかもしれないですね。

 
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宮本:
踊ってる人もいるしね(笑)。

 
青沼:
宮本さんに踊らされてるスタッフもいましたけど。
あ、ちがうか(笑)。
 
小泉:
ライブ感というのは、
プレイヤーと時間軸を共有することができていると
いうことなんですよ。
いままでは、ゲームの中の世界は
プレイヤーがアクションを起こしてくれることを
待っているじゃないですか。
でもこのゲームは、プレイヤーがアクションしなくても
何かが起こってしまう。アクションすればなにかが変わる。
現実の世界って、すごくドラマを含んでいるでしょう?
同じ部屋に5人しかいなくても、
その5人はぜんぜん違う人生を背負っているわけで。
だから、ゲームの世界に、
どういうふうに自分が入っていくのか。
演劇でもそうですけれど「どう、それを見るか?」
というのがありますね。また、日によってアドリブが
入ったりする。そうすることで昨日とは違う作品になる。
そういうふうに、このゲームも、自分がその話に
どう関わるかで、違うものになっていくんです。
というか、そういうことは僕らが設計したわけではなく
「そうなっちゃったね」ということでもあるんですが。

 
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宮本:
僕ら自身もね、企画を立てる時って、
ザッピングだ、マルチストーリーだ、タイムトラベルだって
そういうコンセプトから考えるわけではないんです。
遊んでみて面白い仕組みを作ろう、と考えてみたら、
それが結果的にマルチストーリーになってるし
ザッピングになってるし、みたいな感じですね。

 
青沼:
そうなんですよ。結果論として言われると
そうなのかな、というだけで。
わりとオーソドックスな考え方で作っている。
 
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──マルチエンディングのゲームってよくありますよね。
でもいままでのマルチエンディングというのは、
たとえば友達同士で話して、やってみて、
そんな風に変わるんだ、なるほどね、とか、
雑誌を見て初めてわかるというようなものですね。
それを体験したかったら最初からやり直すしかない。
でもこのゼルダは、自分がどんなことをやっていったら
どうなるのか、というのが、何回もループして確認できる。
変化が自分でわかるんですよね。

 
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宮本:
友達のセーブデータもらっても役に立たないですよね。
自分のセーブデータで遊ばないと。

 
──違う人生を途中から生きるようなものですね。
 
宮本:
それも簡単にできないように、
セーブデータごとに、教えてもらうパスワードが
違ったりしますしね。
そこがね、ほんとうにマルチな感じになってますね。
これ現場では、危ない遊びかたとしては
ストーカーゲームができるって。

 
青沼:
追い掛け回すんですよね。
 
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宮本:
30人の住人を追いかけてね、毎日、その人がどうなるか
見てる、という……。

 
小泉:
人の家のドアのところでどうなるか見ているんです(笑)。
隣の部屋に入って耳をそばだててみたり。
正義の味方がそういうことするのってけっこううれしくて。

 
宮本:
妖精だったらどこでも
スイスイ入れていいのに、ってね(笑)。
僕が作ってる途中でけっこう触れたくない部分もあって、
それは何分後かに死んでしまうキャラクターがいたりすると
やっぱり嫌ですよね。
そういう意味ではけっこう危険な部分もあるんですよ。
ゼルダらしい、というところでまとめてくれたんですが
けっこうコワイ部分、あるんですね。

 
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次回でゼルダの座談会は最終回。お楽しみに!


2000-06-15-THU

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