「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」 〜新しいゼルダを、とことん語ろう〜 宮本茂+青沼英二+小泉歓晃インタビュー その5 自分がゲームにどう関わるかで、 どんどん違うものになっていくんです。 |
NINTENDO64ソフト 「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」。 制作者インタビューの5回目です。 プレイヤーの時間とゲームの中の時間が 完全にシンクロするという世界観が どのように作られていったのか? そのあたりのことをお聞きしています。 |
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──今回のゼルダは、 ダンジョンをクリアしなくても遊べるくらい、 サブイベントが充実していますね。 お話を聞いていると『寄り道のほうが面白そう』 とさえ思えてくるほどです。 青沼: 今回のゼルダは、サブイベントなどを中心に 新しいゼルダを期待してやる方法と、 オーソドックスなゼルダとしてダンジョンを解きながら そこにまたちょっと違う要素を加えながら遊ぶ方法と、 さまざま方法で遊べるわけです。 前作からそのまま来ている人もそういうルートで行けるし 初めてのユーザーもビックリしながらやれるだろうし。 |
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小泉: でもまああんまりサブイベントばっかりやっても 進まないんで。 メインはメインでやっていただきたいですね。 宮本: 操作の仕方を知らないとまずいというのもあるし。 小泉: どのボタンでどうなる、ってことを。 青沼: やっぱりゲームライクな部分もなきゃいけないんですね。 テーマに対してまっすぐな部分。 それをやっていかないと、いつまでたっても 月は落ちてくるよ、と。 |
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小泉: けっこう面白いのが、街で煮詰まってくると 外に出て草刈りしたりするとストレスが解消できる。 ダンジョンに行って解けない謎があると 帰ってきてお姉ちゃんの顔を見れば 「もう一回挑戦しに行こう!」とリフレッシュする。 どっちかで息抜きすることができるんですね。 でもどちらにも3日目には月が落ちる、という 同じルールがあるんですね。 宮本: 時間がちゃんと動いているんでね、 遊ぶ人の性格も出てしまうし、 僕なんかは……待ち合わせの時間に遅れるんですよ。 青沼: うわぁ(笑)。ほんとに。 小泉: 私生活だ(笑)。 青沼: 時間の読みが甘いって(笑)。 |
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宮本: ゼルダのイベントでも、 現場に行ったらまだ2時間もあるとか(笑)。 それでちょっとどこかで時間をつぶそうと 出かけて帰ってきてもまだ30分あって、 また出かけたら今度は間に合わなくなって 走って戻ってきたら、ちょうどそのイベントが 終わったところだとか(笑)。 ほんとに自分を映す鏡でね、 情けなくなりますよ。 小泉: ほんとに性格が…… 青沼: あらわれてますよね。 ──オソロシイ。 小泉: そういうふうにつくってますからね。 |
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青沼: ゲームの中の時間をどう使うのか、というのは 本当に面白いと思いますよ。 ──なかなか今までにないゲームですね。 宮本: 今までにないゲーム、というか、 ……そう大上段にふりかざすこともないんやけど、 やっぱり、ゲームだからできた。 映画でも小説でも、今までのゲームでも やっていないことですから。 まあ「シェンムー」とかは少しやってるかもしれないけど ひじょうにこなれたものになっているんです。 これって「マルチメディア」と言われる、 まさしくそのものになっていると思うんです。 「マルチストーリー」とか「マルチエンディング」とか 「タイムトラベル」とか、いろいろなことを 僕らもためしてきたし、小説も映画もやってきたけれど、 このゲームをやると、本当にこれは ゲームだけでできるマルチストーリーであることが わかってもらえると思う。 |
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──小説も違う、映画も違う、ほかのクリエイティブの 何に近いだろうと考えると、違うかもしれないですが、 現在の演劇がやろうとしていることに近いような、 そういう印象を受けました。 青沼: エンターテインメントなんだけれどライブ感がある、 そういうことが、演劇と共通することなんでしょうね。 宮本: 「ライブ感」ってテーマやもんね。 ──生身の人間が目の前で動いていて、見ている自分も どこへ持っていかれるのかわからない、 というようなものって、今のエンターテインメントで それができるのは演劇と、ゲームかもしれないですね。 |
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宮本: 踊ってる人もいるしね(笑)。 青沼: 宮本さんに踊らされてるスタッフもいましたけど。 あ、ちがうか(笑)。 小泉: ライブ感というのは、 プレイヤーと時間軸を共有することができていると いうことなんですよ。 いままでは、ゲームの中の世界は プレイヤーがアクションを起こしてくれることを 待っているじゃないですか。 でもこのゲームは、プレイヤーがアクションしなくても 何かが起こってしまう。アクションすればなにかが変わる。 現実の世界って、すごくドラマを含んでいるでしょう? 同じ部屋に5人しかいなくても、 その5人はぜんぜん違う人生を背負っているわけで。 だから、ゲームの世界に、 どういうふうに自分が入っていくのか。 演劇でもそうですけれど「どう、それを見るか?」 というのがありますね。また、日によってアドリブが 入ったりする。そうすることで昨日とは違う作品になる。 そういうふうに、このゲームも、自分がその話に どう関わるかで、違うものになっていくんです。 というか、そういうことは僕らが設計したわけではなく 「そうなっちゃったね」ということでもあるんですが。 |
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宮本: 僕ら自身もね、企画を立てる時って、 ザッピングだ、マルチストーリーだ、タイムトラベルだって そういうコンセプトから考えるわけではないんです。 遊んでみて面白い仕組みを作ろう、と考えてみたら、 それが結果的にマルチストーリーになってるし ザッピングになってるし、みたいな感じですね。 青沼: そうなんですよ。結果論として言われると そうなのかな、というだけで。 わりとオーソドックスな考え方で作っている。 |
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──マルチエンディングのゲームってよくありますよね。 でもいままでのマルチエンディングというのは、 たとえば友達同士で話して、やってみて、 そんな風に変わるんだ、なるほどね、とか、 雑誌を見て初めてわかるというようなものですね。 それを体験したかったら最初からやり直すしかない。 でもこのゼルダは、自分がどんなことをやっていったら どうなるのか、というのが、何回もループして確認できる。 変化が自分でわかるんですよね。 |
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宮本: 友達のセーブデータもらっても役に立たないですよね。 自分のセーブデータで遊ばないと。 ──違う人生を途中から生きるようなものですね。 宮本: それも簡単にできないように、 セーブデータごとに、教えてもらうパスワードが 違ったりしますしね。 そこがね、ほんとうにマルチな感じになってますね。 これ現場では、危ない遊びかたとしては ストーカーゲームができるって。 青沼: 追い掛け回すんですよね。 |
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宮本: 30人の住人を追いかけてね、毎日、その人がどうなるか 見てる、という……。 小泉: 人の家のドアのところでどうなるか見ているんです(笑)。 隣の部屋に入って耳をそばだててみたり。 正義の味方がそういうことするのってけっこううれしくて。 宮本: 妖精だったらどこでも スイスイ入れていいのに、ってね(笑)。 僕が作ってる途中でけっこう触れたくない部分もあって、 それは何分後かに死んでしまうキャラクターがいたりすると やっぱり嫌ですよね。 そういう意味ではけっこう危険な部分もあるんですよ。 ゼルダらしい、というところでまとめてくれたんですが けっこうコワイ部分、あるんですね。 次回でゼルダの座談会は最終回。お楽しみに! |
2000-06-15-THU