まさに、スノーボードシーズン到来!
でも「1080゜」はこのまま幻の64ソフトとして
人々の記憶から静かに消えてしまうのかと諦めていた矢先。
「ほぼ日」で「1080゜」を取り上げてくださるそうですね、
ありがとうございます!!
こんな弱気なこと言ったら、誰かにお叱りを受けるかな?
素直な気持ちなんだから、いいですよね。
宮本さんも前回言っていたように、
これ、ほんとにいいゲームなんです。
実はけっこうファンも多いし、
実際、海外では今シーズンもよく売れているんですよ。
ぼく自身、このソフトでは
いろいろ経験させていただきました。
アートディレクターとは言うものの、
開発当初は、とにかくスタッフがいなくて、
実作業含め何役もこなさなければヤバイ状況でした。
結果的に担当したのは、メインタイトル、
ライダーの基本滑走モーション、コースの遠景CG、
太陽や雪のエフェクトテクスチャ、セレクト画面の
ログキャビンCGなどのグラフィック製作、
全体の監修に加えて、タイアップメーカー国内代理店や
プロライダー、ボード雑誌等との調整作業と、
いろいろやらせていただいて勉強になりました。
スキー、スノーボードもののゲームソフト
(特にコアターゲットもの)って世の中にそんなに数が
ないんですけど、それをずらーっと並べて
実際にプレイしてもらえる品評会でもあれば
「1080゜」と64のクオリティの高さを
明確に実感していただけると思うんですが・・・。
雑誌やビデオやホームページと、
いろいろメディアはありますが、
やっぱりムービ−や静止画を見ただけでは伝わらない
歯がゆさがあります。
でも、「1080゜」の中身そのものには、
スタッフ一同、絶対の自信をもってますよ。
(アート・ディレクター 西川佳孝さん)
ある日、会社の食堂で宮本さんと一緒になった時に、
スノーボードの話題になって。スノーボードをしている
僕と西川さんに、スキーにうるさい宮本さんが
「そんなにスキーよりスノーボードの方が面白いの?」
と半信半疑に聞いてきました。
いまさら
「2回しかやったコトがないから分からないっス・・・」
ともいえず
「おっ、面白いっスよ、スノーボードは!
なんせエアートリックがスゴイんですよ、
エアートリックが!」と、なにがどうスゴイのか、
自分で言っててもわけの分からないコトを言いながら
力説したんです。
宮本さんは見透かしたようにニヤニヤしながら
聞いてましたけど・・・。
後日、僕たち2人は宮本さんに呼ばれて
ジャイルズ(後に「1080゜」のメインプログラマー)の
つくった実験プログラムを見せてもらいました。
そこには、くねくねしたタコのような動きをする人間が
ボードの上に乗って滑っていたんです。
3Dスティックで動かすと変な動きをするんですが
これが気持ちがいい!
昔からスキーゲームとかスノーボードゲームの
アイディアを持っていた宮本さんが、
この実験を応用してゲームを作ろうと言う話になって
「1080゜」がスタートしたんです。
(ディレクター・高野充浩さん)
スノーボードをイメージさせる言葉で
日本、アメリカ、ヨーロッパの商標をすべてクリアして、
しかも、国境を越えてかっこいいタイトルを!
ってことですごく悩みました。
スノーボード用語って、
我々が聞くと訳のわからない造語だけど、
結構かっこよく響くものがあるんで、
これは候補がたくさんあっていいなあって思っていたら
大間違いだったんです。
例えば、「バックサイド・エアー」って言葉に、
アメリカの担当者は違和感を感じなかったみたいですが、
メインプログラマーのジャイルズ(イギリス人)には
「おなら(屁)」って意味に聞こえるというんです。
「スキーもスノーボードもやってるぼくが
そう聞こえるんだから、やってないヨーロッパ人は
みんな『おならスノーボード』って呼ぶよ!」
って言われました。直訳すると、なるほど・・・ね。
商標の問題からみてもかなりの数のタイトル候補が
脱落した末、最終的に数字の覚えやすさと
「テン・エイティ」と読んだ時の歯切れ良さもあって
「1080゜」に決定しました。
実は「1080゜」のヒントは、
ぼくがいつも行くプロショップの人がくれたんですが、
彼自身は「サウザンド・エイティ」と呼んでましたし、
スノーボード協会に問い合わせても
「1080゜」をどう読むかは明確に決まっていない、
という回答でした。
いずれにしても、歴史が浅いスポーツなので
用語として全世界的に浸透するまでには
まだ足並みがそろっていないようですね。
(西川さん)
「1080゜」の操作方法は、最後の最後まで
なかなか固まらなかったのを覚えてます。
開発チーム内部から、
トリック以外のほとんどすべての操作を
3Dスティックで操作できるようにしたい、
という声が上がっていましたので、
3Dスティックの前押しで「しゃがみ」の動作を
行なえるようにしてみました。
それによって、プレイヤーの重心を前に移して
加速する、という仕様にしたのです。
でも、これだと、
ちょっとした段差を飛び降りて着地する時に、
いつもつんのめって転倒してしまうんですね。
それでいろいろ試行錯誤しました。
スノーボードの板の上に自分が乗って重心を操っている感覚を
3Dスティックだけで操作できないものか、
でもゲームとしてみると
コントローラの操作が良いとはいえない。
「快感」と「操作性」の両方を考慮しつつ、
目指している感覚を失わないようにしながら
よりよい操作方法にまとめるという、
このあたりの、いわば「攻防」というものが、
ゲーム作りの過程のなかの
大きな醍醐味のひとつだと実感しました。
最終的にはZトリガーで「しゃがむ」になりました。
今の操作に私自身はとても満足しています。
(アシスタント・ディレクター ヒロ・山田さん)
ぼくはキャラクターやボードの性能設定や、
コンピュータープレイヤーの
難易度調整を担当しました。
今回、久しぶりに「1080゜」をプレイしましたが
本当にいいゲームだと思います。
これを作っているとき、いろいろなスノーボードゲームを
プレイしましたが、どれもダメでした。面白くない。
だから「1080゜」は、ああいうゲームには
ならないようにしようと頑張って作りました。
流行りすたりには関係ないソフトなので、
まだの人はぜひプレイしてみてくださいね。
リアルな質感、気持ち良さ、本物のスノーボードを
やったらこんな感じなのかな〜、
と思ってもらえたら嬉しいです。
(ディレクター・阿部将道さん)
開発中は、毎日スノーボードのビデオと雑誌を見てました。
それらの中で繰り広げられているダイナミックさと
キレのあるトリックが、そのままゲームになったと
このゲームをプレイしたときに思いました。
しかし、ゲレンデではもっと思い知らされることになりました。
ふりそそぐ雪、太陽のまぶしさ、
アイスバーンでエッジを立てた感覚。
ビデオや雑誌のなかに、そしてゲームのなかに、
当り前みたいに「在った」ものを
その時、ゲレンデで実感することができたからです。
何か不思議な感じがしました。
また、それによって、
ゲームもとても新鮮に感じられたんです。
ゲレンデとゲーム、それぞれが
自分に刺激を与えてくれて
前よりボードが楽しくなりました。
(2Dデザイナー・中原智秋さん)
というところで、(第2回の1)
“「1080°」が「1080°」と呼ばれるまで”
は終り。これからもナイスなエピソードがたくさん登場します。
次回をお楽しみに。
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