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樹

「テン・エイティ スノーボーディング」
の情報・産地直送!

「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の圧倒的な人気に、
負けちゃいないぜ、1080°!
わざわざ、去年に発売されたゲームソフトを、
なぜ「ほぼ日」はクローズアップするのか?!
理由は簡単である。おもしろいからだ。
古くなってなんかないからだ。
スノーボードのシーズンだからだ。
いいゲームソフトの売れ行きが、
3週間だか4週間で決定づけられてしまうなんて、
バッカな話だと、ぼくらは思う。
1年前に発売されたゲームにのめりこむことが、
あったっていいはずだと信じて、熱く特集します。


(第2回の4)

「1080°」にはプロライダーも「お墨つき」。

いい感じ(笑)でお伝えしている
「1080゜スノーボーディング」
スタッフインタビュー、いかがですか?
今回は3Dゲームの真髄でもある
「モーション」や「モデリング」や「AI」の話です。
あのスムーズな動きの秘密をスタッフが話してくれました。


トリックモーションの一部が入り始めたころ、
我々のスノーボードに対する認識不足を補うために、
プロライダーとメーカーのエキスパートのかたがたに
モニタープレイしてもらって、アドバイスをいただく
機会を設けました。

当日は、先方に失礼のないように、と
スーツにネクタイという格好で待っていたところ、
私たちがイメージしていたとおりの
ボーダーファッションに身を包んだ、
いかにもルーズそうな人たちがやってきたんです。
でも、すぐにそれは私たちの大きな偏見だったと
わかりましたよ。
時間厳守で、とても礼儀正しい方たちでしたから。
大騒ぎしながらモニタープレイするのかと思っていたら、
みんな静かで、真剣にプレイしてくれて、
逆にこちらがすごく気を使いましたね。
やっぱり、ジャンルを問わず、
その道を真剣に志す人は礼節をわきまえていますよ。


で、主にアドバイスをいただいたのは
ボーダーの心理や、基本滑走、トリック、
競技用コース(
エアメイクやハーフパイプ)
の形状です。

まずボーダーの基本心理として彼らが挙げた
「バージンスノ−とバックカントリー
(ゲレンデコース以外の自然のバーン)
をもっと滑りたい」

という意見を反映しました。
基本コース以外の部分も可能な限り
滑走可能にしたことと、
バージンスノ−をより引き立たせるための
エフェクト処理や物理処理がさっそく
盛り込まれました。

基本滑走については、開発当初から
スキーヤーにも違和感のないモーションを心がけた結果、
テストプレイで彼らから多少のクレームがつくことは
あらかじめ覚悟してたんですが、
私たちが予想したほどの違和感はないようでした。
ただ、フォームが古い、とは言われましたね。
「これはひと昔前の滑りだよ」って。
これには苦笑いさせられました。

ライダーの基本滑走のモーションも、
実際はあんな滑りはしないとわかっていたのですが、
いろいろ試しながら、あのようになりました。
基本滑走のモーションは手作りなんですが、
フリースタイル系の基本滑走フォームを
教則どおりにゲームで再現しようとすると、
どうもスピード感と安定感が悪く感じられるんです。
たぶん、私自身がスキーをやってて
スノーボード歴が浅いことが原因だと思いますが、
腰と上体の入り方が、
スキーのフォームとはだいぶ違うんですね。
で、やっぱりここはスノーボーダーだけじゃなく、
スキーヤーにも共感してもらえる滑走感を出そうと思って、
どちらかと言えばアルペン系の味つけになっています。
ですから、
あのフォームでハーフパイプを攻めたりするのは、
フリースタイルをやってる方には
けっこう違和感があると思います。
しかも、ビジュアル的なリアル感を出すために、
最大に身体を傾けると山側の手が雪面に触れて
シュプールが残るようにしてある
んですが、
実際はあんなに頻繁に雪面を手で触れないんです。
この部分はかなりミーハーな味つけかもしれません。
でも「1080゜」はシミュレーションゲームじゃないし、
こうすることの気持ち良さは
コアな人達にもわかってもらえると思ったので
あえて残しました。

あと、スノーボードの理想とする
「カービング(エッジのずれないターン)」も、
表現のしかたを誤ると、
他のソフトによくみられるように、
「レールの上を滑走してるトロッコ」になってしまいます。
だから「1080°」では、
スノーボードやスキーでは低い技術レベルとされる、
押し出し(ずらす)の滑りがあえてメインになってますが、
荷重移動の感覚を出す上では効果があったと思います。

今回は、モーション初体験だったんですが、
それまで、モーションの微妙な差なんて
単にビジュアル的な違いにすぎない、
と思い込んでいましたが、
中心軸の位置や、移動のタイミングが
スラローム感に大きく影響することを再認識しました。

トリックモーションについては、
技術的に難しい問題が多くて、実際の動きをまだ
表現しきれていない部分もあることを
モニターのかたがたには理解してもらったうえで、
カッコ良く見えるフォーム作りや
根本的な誤りをチェックしていただきました。
「3Dトリック(縦回転)」のリクエストが
多かったにも関わらず、
ゲーム上に盛り込めなかったのが残念です。

あと、競技用コースの形状アドバイスですが、
資料やビデオから得ているだけの我々の知識では
限界があることも、お話を伺ってわかりました。
ハーフパイプのスタート部分の形状などの意見は
かなり参考になりました。
        (アート・ディレクター 西川佳孝さん)

 

私がプロジェクトに入った時点で
かなりリアルな世界観は出来上がっていました。
個人的にリアル系が好きな私は、
無理を言ってこの「1080゜」開発プロジェクトに
参加させてもらったというかたちでした。
人体のモーションがやりたくて参加したんですが、
そのときは実験用のモデルしか稼動していなかったんで、
まずモデルから。
そして、結局は最後までモデルを担当していました。

キャラのデザインに関しては、
任天堂らしからぬリアルでハードな世界で行こう、
というテーマだったんで、
「洋ゲー(※ほぼ日註:外国ソフト)」のような
濃さとか生々しさを追求したつもりです。
でも、中身はストイックなレースゲームなので、
それでもかなり抑えこんではあります。
登場人物の5人については、スタッフの意見も取り入れながら、
かなりミーハーな感じで固めていきました。
他に、クリスタルやメタルキャラ専用モデルも
用意していたんですが、入り切らないということで
ボツになりました。


あと、パンダ
あれは、テクスチャーを貼る前の
モノクロのモデルだったロブを見て、
コースデザイナーの菅野が作った
カブリモノです。
評判が良かったんでそのまま使いました。
これは本当にロブがかぶっている状態に
なっていて、ゴーストで半透明になったとき
かぶってるロブの頭が
透けて見えるんですよ。
ぜひ、確認してみてください。

モデリングに関しては、
任天堂ソフト初のスキンモデル、ということで
かなり苦労した部分はありました。
人体全部がつながった構造でモデリングされているため、
回転軸、回転角度の多い肩の部分が
どうしてもよじれてしまうんです。
スノーボードのトリックは「派手さが命」ですから
なるべく大きく動かしたいんですが、
鎖骨がない分、肩にかなりの負担がかかるんです。
そのへんのうまい解決法を見つけるのに、
かなり時間がかかりました。
ディオンからモデリングを始めて、
リッキーが最後だったんですが、
最後までディオンの肩口が一番出来が悪かった。
直したモデルもあったんですが、
ディオンのモデルを使ったクリスタルや
メタルキャラの関係で、そのままになってしまいました。

当時まだトライ&エラーのしにくい環境だったため、
いかに簡単にリテイク出来るか? といった部分も
神経を使った所です。

最後に、こぼれネタをひとつ。
セレクト時のモーションやエンディングのモーションは
劇団「そとばこまち」の役者さんにお願いしました。 
鈴木京香と共演経験あり、だそうです。
    (CGキャラクターデザイナー 竹中宏昭さん)

 

「ドラゴンケイブ」の火の輪には秘密があります
1ゲーム中に2回くぐったら何かが起こる。
さて、どうでしょう?
走行中にプレイヤーキャラ同士で殴り合って、
相手の邪魔をする要素も加えたかったのですが、
デザイナーに時間がなくて、
新たにアニメーションデータを作る
余裕がなかったのが残念でした。
リアルなスキンアニメーションをすると
プログラム処理の負担が大きいし、面倒くさいんですよ。 
特に、レースゲームでそれをやってるモノは
「1080°」の他には見当たりません。
プレイヤーの服がパタパタするのは絶対に
「1080゜」でしか見られないものですよ。
  (メインプログラマー ジャイルズ・ゴダードさん)

 

この「1080゜」で
初めて3Dゲームの製作に関わりました。
数学と物理の知識が必要であることを思い知らされて、
最初のころはその勉強に多くの時間を費やしていました。

「1080゜」のAI機能(※Artificial Intelligent=
人工知能 COMプレイヤーの思考ルーチンのこと)は、
いかにプレイヤーと熱くバトルを繰り広げられるか、
ということを主眼に置いて設定しています。
最初のころは、バカ正直に速く走ることを目指す
AIを作っていました。
しかしそれだと、1回コケるだけでも
プレイヤーとの距離の差がそうとうついてしまって、
ほとんどゲームの勝敗が決まってしまいます。
これだと、スタートしてすぐに自分がミスして
コケたりでもしたなら、とたんにやる気が失せてしまって、
リセットボタンへ手が伸びる、ということになりがちです。
しかも、このゲームの場合、
同時に2人までしか走れませんから、
いったん距離差がついてしまうと、COMプレイヤーが
一度も画面に出てこないで終わってしまうことになり、
ひじょうに寂しいものになってしまってました。
後半の難易度の高いステージでは、もう、
ゴールに着くことすら難しくなって、
よくコースの途中で動けなくなって止まっていました。
とくに、分岐点では苦労しましたね。
コースアウトしても自力で復活しなければ先に進めない
設定になっていたので。

カメラは、スピード感と迫力を重視しています。
とくに、リプレイ時のカメラは小さくなりがちなので
迫力をだすのに苦労しました。
悔やまれるのが、
視点の切り替えをシームレスに切り替えるように
できなかったことです。
ぼくの実力のなさもあったのですが、
視点切り替えができるようになったのも
仕上げの段階に入ったころだったので
ちょっと時間がありませんでした。
この点は残念に思っています。
    (COMプレイヤーAI&カメラプログラム 
                 喜多村俊作さん)


というところで、(第2回の4)
“「1080°」にはプロライダーも「お墨つき」”
は終り。これからもナイスなエピソードがたくさん登場
します。次回、1月22日の更新をお楽しみに。


1999-1-19-TUE


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