基本滑走については、開発当初から
スキーヤーにも違和感のないモーションを心がけた結果、
テストプレイで彼らから多少のクレームがつくことは
あらかじめ覚悟してたんですが、
私たちが予想したほどの違和感はないようでした。
ただ、フォームが古い、とは言われましたね。
「これはひと昔前の滑りだよ」って。
これには苦笑いさせられました。
ライダーの基本滑走のモーションも、
実際はあんな滑りはしないとわかっていたのですが、
いろいろ試しながら、あのようになりました。
基本滑走のモーションは手作りなんですが、
フリースタイル系の基本滑走フォームを
教則どおりにゲームで再現しようとすると、
どうもスピード感と安定感が悪く感じられるんです。
たぶん、私自身がスキーをやってて
スノーボード歴が浅いことが原因だと思いますが、
腰と上体の入り方が、
スキーのフォームとはだいぶ違うんですね。
で、やっぱりここはスノーボーダーだけじゃなく、
スキーヤーにも共感してもらえる滑走感を出そうと思って、
どちらかと言えばアルペン系の味つけになっています。
ですから、
あのフォームでハーフパイプを攻めたりするのは、
フリースタイルをやってる方には
けっこう違和感があると思います。
しかも、ビジュアル的なリアル感を出すために、
最大に身体を傾けると山側の手が雪面に触れて
シュプールが残るようにしてあるんですが、
実際はあんなに頻繁に雪面を手で触れないんです。
この部分はかなりミーハーな味つけかもしれません。
でも「1080゜」はシミュレーションゲームじゃないし、
こうすることの気持ち良さは
コアな人達にもわかってもらえると思ったので
あえて残しました。
あと、スノーボードの理想とする
「カービング(エッジのずれないターン)」も、
表現のしかたを誤ると、
他のソフトによくみられるように、
「レールの上を滑走してるトロッコ」になってしまいます。
だから「1080°」では、
スノーボードやスキーでは低い技術レベルとされる、
押し出し(ずらす)の滑りがあえてメインになってますが、
荷重移動の感覚を出す上では効果があったと思います。
今回は、モーション初体験だったんですが、
それまで、モーションの微妙な差なんて
単にビジュアル的な違いにすぎない、
と思い込んでいましたが、
中心軸の位置や、移動のタイミングが
スラローム感に大きく影響することを再認識しました。
トリックモーションについては、
技術的に難しい問題が多くて、実際の動きをまだ
表現しきれていない部分もあることを
モニターのかたがたには理解してもらったうえで、
カッコ良く見えるフォーム作りや
根本的な誤りをチェックしていただきました。
「3Dトリック(縦回転)」のリクエストが
多かったにも関わらず、
ゲーム上に盛り込めなかったのが残念です。
あと、競技用コースの形状アドバイスですが、
資料やビデオから得ているだけの我々の知識では
限界があることも、お話を伺ってわかりました。
ハーフパイプのスタート部分の形状などの意見は
かなり参考になりました。
(アート・ディレクター 西川佳孝さん)
私がプロジェクトに入った時点で
かなりリアルな世界観は出来上がっていました。
個人的にリアル系が好きな私は、
無理を言ってこの「1080゜」開発プロジェクトに
参加させてもらったというかたちでした。
人体のモーションがやりたくて参加したんですが、
そのときは実験用のモデルしか稼動していなかったんで、
まずモデルから。
そして、結局は最後までモデルを担当していました。
キャラのデザインに関しては、
任天堂らしからぬリアルでハードな世界で行こう、
というテーマだったんで、
「洋ゲー(※ほぼ日註:外国ソフト)」のような
濃さとか生々しさを追求したつもりです。
でも、中身はストイックなレースゲームなので、
それでもかなり抑えこんではあります。
登場人物の5人については、スタッフの意見も取り入れながら、
かなりミーハーな感じで固めていきました。
他に、クリスタルやメタルキャラ専用モデルも
用意していたんですが、入り切らないということで
ボツになりました。
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