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(第22回の1)
ゲームボーイアドバンス専用ソフト「黄金の太陽 開かれし封印」
タカハシ・ブラザーズ・インタビュー その1
まず最初に「遊び」ありき「面白さ」ありき、なんです。 |
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「マリオゴルフ」「マリオテニス」で
何度かこの秘密基地に登場してくださった
キャメロットのタカハシ・ブラザーズ。
すっかり“スポーツゲームならこの人たち!”
という印象の強いお二人が、
こんどはロールプレイングゲームをつくりました。
それも、ゲームボーイアドバンスで!
発売されたばかりのこのゲームソフト
「黄金の太陽」について、
さっそくお話を聞いてきましたよ!
●スポーツゲームだけじゃないんだよ。
──:
完成おめでとうございます。
秀五・宏之:
ありがとうございます。
──:
「黄金の太陽」は、
ロールプレイングゲームなんですよね。
ほぼ日だけでお二人を知っている人の中には
「タカハシ・ブラザーズは
スポーツゲームの人たちだ」
って思ってる人、いますよね。
マリオゴルフ、マリオテニス……
宏之:
思ってるでしょうね。
間違いないでしょう(笑)。
──:
でも、スポーツゲームは趣味で、
こっちが本業だっていうお話を伺いましたが。
宏之:
そうですね。っていうか、
色んなことが好きですからね。
でもゲームっていう分野でいうと、
やっぱりRPGというジャンルが
占める割合が大きいんですかね。
──:
好きなことの中に?
宏之:
そうですね。
その「好き」っていうのの延長線上に
「作る」っていうのが
あるんじゃないでしょうかね。
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──:
なにを作るにしても原点は
「好き」っていうのがあるってことですね。
宏之:
うん。基本はね、「自分がやりたい」。
●RPGとスポーツゲームの共通点。
──:
スポーツゲームを作る頭脳と、
こういうゲームを作るっていう頭脳は、
僕らからみると全然違うような
気がするんです。
RPGっていうのは、
物語を見せるとか
そういうところがすごく比重が大きい、
というふうに思われています。
世界を見せるっていうのかな。
宏之:
そう、世界を見せる、
っていうふうに思われがちなんですよね。
そして実際、みんなそういうふうにして
作っていると思うんですよ。
まず「お話ありき」で。
それにゲームを乗っけているっていう感覚かな。
でも、僕らの場合はね、
ちょっと違うんですよね、ニュアンスとしては。
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──:
どういうふうに?
宏之:
「遊び」ありき。
遊ぶってことがまず最初にあるんです。
──:
そうか! そうすると、
スポーツゲームとつながりますね。
宏之:
そうなんですよ。
秀五:
で、スポーツゲームだとストーリーは無い、
ってイメージがありますよね。
でも、スポーツゲームでも
自分の中にはストーリーが、あるんですよね。
──:
ありますね。
キャラクターに感情移入していくと、
自分だけのドラマができていく。
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秀五:
ええ。だからどちらも、そういう意味では、
面白さありき、なんです。
この作品だからストーリー性を考えようって、
そういうのはあるんですけどね。
確かにRPGよりスポーツのほうが
その作業は薄いですけれども。
でも、おんなじテーマを
持っているみたいなもので。
……だから分け隔てっていうのは、
ないんです。
宏之:
たしかにRPGのほうが
ストーリーの比重は大きいですけどね。
──:
それは、ゲームの性格上
そういうことになりますよね。
宏之:
ええ。RPGは、遊びの部分を
面白く体験してもらうために、
ストーリーがある、みたいな感じです。
──:
遊びっていうのは、
例えばどういうことになるんでしょうか?
宏之:
例えばの話、RPGって、
初期の頃「ドラゴンクエスト」の1って
ストーリーはほとんど無いですよね。
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──:
前に進んで行くっていうことはあったけど、
物語っていう、いわゆる小説的な物語が
濃いかっていうと、そうでもないですね。
宏之:
そうなんですよ。
だけど楽しかったじゃない。
なにが楽しいのかなって考えると、
たぶんアクションゲームと
違った遊びがあったから、なんです。
例えば、リアルタイムに戦う
「ゼルダ」みたいな戦闘もあれば、
テキストの中なんだけれども
戦いが繰り広げられて、
イマジネーションのなかで
アクションしているっていう戦闘の世界かな。
──:
その戦闘の世界を体験するために
物語っていうのがあるとしても、
非常に練られた世界が
「黄金の太陽」にはあると思うんですが。
宏之:
世界観を表現するっていうのは
あるんですけれども、
その……決してそういうものじゃないんですよ。
ストーリーも一生懸命
練って作っていることは
作っているんですけれども、
でも、遊んで欲しいがため。
だからどっちが主なのかっていったら
やっぱり「遊び」。
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秀五:
ただ、語弊があるといけないんで
言っておきたいんですけど、
やっぱりストーリーは重要だと思うんですよ。
だから、どっちが主でどっちが従っていうよりも、
どちらもどちらを引き立てることができる、
みたいな。そういう存在なんじゃないかな。
●形式でつくりたくは、ないんだ。
宏之:
なんで「遊び」なんだってことを
強調して言いたいかっていうと、
形式で作られているところがありますよね、
いまのRPGって。
──:
はい、ありますね。
宏之:
そういう形式っぽいのはイヤなんですよ。
いかに形式じゃないプレイ感が
得られるかみたいなのが、
むしろこれから求められていく……
これからというか“いま”かな。
要はRPGって呼ばれるものっていうのは
形式ができているから、
例えば戦闘があって、
戦闘っていうのは
「コマンドを入れましょう」ですよね。
コマンドっていうのは
「たたかう」「まほう」「道具つかう」
「にげる」ですよ、みたいな。
それってなんかイヤなんです。
でも、みんなその形式に乗っかっちゃって
作ろうとしてるような気がするんですよ。
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秀五:
作る側ががそう思っちゃってるという。
──:
「プレイ感」という言葉が出ましたが
「黄金の太陽」は
ゲームボーイアドバンス(GBA)
専用ソフトですよね。
GBAでしかできない「プレイ感」を
盛り込んだ、っていうこともあるんですか?
宏之:
こういう言いかたのほうが正しいんですよね。
「ゲームボーイカラーとか
既存のゲームボーイでは
できないことを表現している」。
●『超能力』を使いたかった。
──:
それはグラフィック、だけではないですよね?
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宏之:
技術的なところもそうですし、
「遊び」で言ってもそうなんですよ。
このゲームでキーになっているのは
「超能力」なんです。
「魔法」と「超能力」って
似たようなものだっていうイメージが
あると思うんですよ。
それを、敢えてなんで
「超能力」なんだろうっていうと、
魔法はなんか空気に呪文をのっけることで
何もないところに火を熾したり、
戦闘のイメージがとっても強いかなと
思うんですよ。
超能力っていうのは、超自然現象。
確かに何もないところから
火を熾したりっていうのも
超自然現象なんだけれども。
でも、なんか魔法とは違う
ニュアンスのものだと思うんですよね。
──:
超能力っていうのは
「こうしたい」っていう思いが
根っこにすごく強くあってのもの。
魔法ってのはそれとは
ちょっと違うような気がします。
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宏之:
うんうん。魔法っていうのはたぶん、
例えば、この薬品とこの薬品を調合すると……
──:
ポワン!
宏之:
っていうようなものなんですよね。
超能力は、“思い”、そう、
念の力なんですよね。
──:
念力(ねんりき)って言いますもんね。
宏之:
超能力は、戦闘でも確かに
使えるかもしれないけれども
主役はなんなんだろうって考えると、
普段の活動で効力を発揮できそうなもの、
っていう感じしません?
簡単なことで言うと
「煙草吸いたいけど灰皿が無いな。
歩くのかったるい。カモン」
って言ってポンとこっちに持ってくるのが
超能力じゃないですか。
ま、そんなことができるようにする力。
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──:
そうですね。よくわかります。
宏之:
だから、主役は戦闘じゃなくて通常の活動。
通常の活動をより楽しくするためのものが
超能力っていう定義づけなんですよ。
何種類かはプレーヤーの方が
試していただければいいと思うんですけど、
いろんなことができるわけです。
しかもフラグじゃない。
フラグじゃないっていうのはなにかって言うと……、
ロールプレイングではよくありますよね、
どこそこまで来るとアイテムウインドウが開いて、
あるいは魔法のウインドウが開いて、
使えるタイミングが決まってる。
──:
今のRPGは大概、そうなってますね。
宏之:
それに比べると、ゼルダなんかは
ずっと自由度が高いですよね。
例えばゼルダでなんとかショットみたいのを
ピョンと飛ばして使えないときは戻ってきて
「ああここで使っても効果ないのか」
みたいな感じ。
昔、たしかにRPGを作るには技術的な問題から
自由度が高くできなかったんですけど
ハードが進化しても
その制約をひきずってるかなあって思うんです。
ちょっと考えてみて、これまでのRPGの因習を
引きずった様式美的なゲーム方式でいいと思います?
──:
それは、そうじゃないほうが楽しそうですね。
いろんなところで超能力、使いたいです。
宏之:
ね、そうですよね。
あらゆるところで使える可能性を持っている。
そのほうが楽しいですよね。
だからそういうことをやらせる
必然のための世界みたいなものを
構築したって感じなんです。
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──:
先に魔法があったんですね。
宏之:
うん。魔法は戦闘で使うんだけれども、
そういうこともやらせるっていう
アイデアが浮かんだから
「じゃあそういうときにも
使わせるようにしようよ」
っていうふうに取って付けたような世界は、
きっと使ってて違和感があると思うんです。
僕は、そういうふうにして
遊びたくないんですよ。
●「遊び」と「世界観」の融合。
──:
今おっしゃったようなことが
このゲームを作ろうっていうときの
核みたいなものなんでしょうか。
一番最初に、世界も何もない状態で、
その超能力を通常の世界の中で使っていく、
そしてそれを楽しく遊びたいっていうのがあって、
その上にストーリー、世界観を
肉付けをしていったっていう。
宏之:
あのね、別々には存在していたんですよ。
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──:
世界観みたいな部分も?
宏之:
そうですね。
既存のファンタジーっていうのは
剣と魔法の世界っていう
簡単なもんなんですけど、
欧米のファンタジーをみると
色んなものがあるんですよ。
でも日本のファンタジーって
アイデンティティが無いかなっていう気がして。
例えば「黄金の太陽」っていう
ファンタジーの世界っていうと、
「こういう法則の元に動いている」
っていうファンタジーであって欲しいな、
って思うんですよ、僕は。
モンスターがいて、剣があって、
魔法が使えますよっていうんじゃなくって、
根底で流れているものはどういう法則で、
そのうえで人々はどういう活動をやっていて、
そのなかで自分の冒険があるっていう。
そういう風であって欲しいっていうのは
昔から我々が作るRPGの
核の部分ではあるんですよね。
みんながファンタジーっていうと
剣と魔法って思ってるんで。
──:
これさえ入れとけばファンタジー、みたいな。
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宏之:
ですよね。
でもファンタジーって
ほんとはいろいろあって。
ファンタジーって何なんだ、
幻想の世界でしょっていう。
──:
なんでもアリなはずですよね。
宏之:
そう、いろいろあっていいはずなのに
そういうものができない。
もっと言うと、
例えばヒロイックファンタジーであるとか
スペースファンタジーであるとか、
向こうのファンタジーって
そういうものにまで発展しているっていうか、
つながっていくような世界。
でも、日本のは閉じているんです。
──:
確かにそうですよね。
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宏之:
いろいろ発展も含めて
どうなっていくんだろうっていうのが
楽しみな世界。
それがちゃんと構築されていたら、
自分の将来が楽しみだなっていう感じがあって。
そういう気持ちがあって
この世界観を育てたんですよね。
で、もう一個、
超能力を使いたいっていうのがあって、
一体どういうふうにそれらを融合できたら
一番いい形の世界ができて、
楽しい遊びができるかなっていう、
そういうせめぎ合いのなかで
できたようなゲームなんです。
──:
その融合していく過程っていうのは、
どういうふうな作業なんですか。
お二人の、話し合い?
宏之:
超能力を使ったら
ゲームが面白くなるっていうのは
もう5年くらい前から
コンセプトとしてはもっていたんですよ。
その一方で、
かつてRPGのシリーズを作っている頃に、
結構取って付けたように
世界観を作っちゃって、
そのために苦しんじゃったことがあって。
──:
反省としてあったんですね。
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宏之:
そう。もっとこうだったら
よかったのにな、みたいな。
一貫した原理みたいなのがあったら
もっとみんなが分かりやすく、
しかも納得できて、
その法則の上で色んなことが
きっとできたのになっていう。
まあ気にしないでやっちゃってるとこも
ありますけどね。でも、作品として考えた場合
それでいいのか。前作はこうで、
「ここが好きだっていうのが
ガラッと変わってこれになっちゃった」
っていうのを容認できるのかとか考えたときに、
きっとできないよなって。
この世界観があって
何世代も先の話がいきなりポンと出てきても、
「あ、あの流れに則ったこの世界なんだな」
っていうのが理解できれば許せる。
その一番根底となる部分を
作りましょうっていうのが、
ひとつはこの「黄金の太陽」の
大きな動機づけになっているんです。
モチベーションとしては
今までのゲームでできなかったことを
実現したい。その中で一番大きかったのが
超能力だった、ということなんです。
──:
それがアドバンスだったらできるっていう。
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宏之:
そうですね。さっきも言ったように、
超能力をやりたい、
そのためにはハード的なポテンシャルが
必要になっちゃうんですね。
それをやるのに8ビットで
できるのかっていうとできないんですよね。
だからどうしてもこのくらいの
ハードのスペックを欲しかったんです。
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既存のロールプレイングゲームにたいする
反省と希望をこめた「黄金の太陽」。
ではじっさいにどんなふうに
この「遊び」と「世界」がつくられていったのか、
さらにお話はつづきますよ。
お楽しみに!
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2001-08-22
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