みうらじゅんに訊け! お金篇  ことあるごとに みうらじゅんさんのもとへ 何かを訊きに行く「ほぼ日」ですが、 今回のテーマは、お金です。 笑っているつもりが役に立つ‥‥かもしれない。 もしかしたら、ほんとのほんとはそうなのかも、 と思えてくるような すばらしいみうらさんの「お金論」、 短期集中毎日連載です!
第2回 土中の缶に気をつけよ。

ほぼ日 お金はうかうかしていると
白くなったり戻ったりする、
それは気をつけないといけませんね。
みうら かたちあるものはないんですから、
目に見えるものなんて幻想です。
それは
死んだ人だけがわかってる
と思います。
あの世から見て、
「ああ、戻ってるよ!」
とおっしゃってる。
天国とか地獄には
なんにも持って行けないですもん。
ほぼ日 ただ‥‥。
みうら ただ?
ほぼ日 そうなると、
自分の死ぬときがわからない、
ということが、結構厄介ですね。
みうら あ、時期ですよね?
ほぼ日 はい、時期です。
みうら でも「だいたい」というところは
予想できると思うんですよ。
ほぼ日 ああ‥‥それは、そうかもしれないです。
みうら 明日とか何時何分とかは
わかんないと思うけど、
「だいたい70いくつぐらいだ」
というのはわかるでしょう。
いや、わかってるはずです。
ほぼ日 はい。
みうら 飲み屋でそれを言うと、友達にね、
「いやいや、そんな、死なないです」
「そう言ってるやつは死なないですよ」
とか、何かこう、ごうつくジジイのように
言われますけどもね。
ほぼ日 はははは。
みうら 人は、自分のことは
実はだいたいわかってるんですよ。
「ぼくはだいたい80だな」
ということだったら、
それはだいたい当たってるわけで、
それを80んときに
思い出すかどうかなんですよ。
「だいたい」を予想したことを、
みんな忘れているんです。
ほぼ日 ああ、ああ、なるほど。
みうら 思い返してみたらいいと思います。
昔はわかってたはずなのに、
いま、わからないようなフリをして、
恐れから逃れようとしてるのではありませんか?
ほぼ日 肝に命じます。
‥‥ところで、みうらさんはフリーで
ずっとここまでやってこられたわけですが。
みうら ぼくはミスター自由、
ミスター自由業ですのでね。
ほぼ日 ご自身の力で
ずっとここまでこられたわけですよね。
みうら いやいやいや、もう、
みなさんのお助けがあってこそです。
やっぱり、不自由があるから
自由が生きるわけで。
ほぼ日 はぁあ、なるほど。
みうら 自由同士だと
仕事はなんにも来ないですからね。
もしも
「なんとなく自由に出そうかな〜」
なんて思ってる
雑誌の編集長がいたら、
そもそも依頼がないですもん。
その人が、不自由なことを
あれこれ味わいながら、
自由な人を寄せてやってもいいや、
とおっしゃったことで
いただいた自由です。
それはもう、みなさんのおかげと思ってます。
ほぼ日 その、不自由にもらった自由でも‥‥
不況もものともせず
ここまで来られたわけですよね?
みうら ぼくが一応デビューしたことになってる、
1980年代は「バブリー」の時代です。
とんねるずが「一気、一気」と言ってた、
最も苦手な体育会系悪ふざけの時代です。
ぼくには、そのとき、
なんにもなかったです。
恩恵でもあったら、
しがみつこうとも思ったろう。
しかし、全く恩恵がない。
ですから逆に、不景気にも
恩恵がないんですよ。
ほぼ日 ああ、なるほど。
みうら 不景気も、景気いいも、
ありません。
それでも‥‥確かに
ちょっと儲けたときとかありました。
いま、告白しますけど、ありました。
ほぼ日 ‥‥はははは。
みうら みんなは、
「それ、うし御殿建てたときだろ?」
とか、わかりやすくしたがるけど、
うしで御殿なんて建つわけないじゃないですか。
お金は、ちまちました仕事をしてたから、
貯まっていったんですよ?
ほぼ日 はい、はい。
みうら そして、ぼくはマイブームの名のもとに
趣味は全部仕事に回してました。
だから結局、この部屋にあるグッズすべて、
経費で買ってるわけですよ。
これ、意外と
気がつかれなかった戦法
なんですけど、このへんにある、
例えば双体道祖神のグッズに対しても、
「すいません、領収書ください」と言ってる、
ぼくの陰の努力をみんな、
知らないんですよ。
ほぼ日 そうですね。
みうら 「無駄遣いをして」
「バカだなぁ、あの人」
と思われてきたかもしれませんし、逆に
「自由でいいなぁ、憧れるけど、
 いやぁ、俺ぁ、なりたかないな」
ぐらいな感じでしょう。
違うんです。
ぼくのやったことは全部、
領収書があってのことなんですよ。
ほぼ日 ははぁ。
みうら ぼくはもういっそ
「領収書」と呼ばれてもいいぐらい、
誰よりも領収書を取ったもんですよ。
アンパンマンジュースひとつだって
領収書取ってるようなヤツでございます。
飲み屋で「俺がおごっとくから」と言って
ぱーっと払って外に出る人がいますが、
ぼくは必ず、
「すいません、みうらじゅん事務所で
 お願いします」
と、必ず、人に気づかれないように、
腹話術みたいな声で言います。
そこの努力が積み重なって、
ちょっとお金持ってたときが、確かにあります。
でもそれは領収書の努力ですよね?
ほぼ日 その陰の努力、ぜんぜん知らずに
みうらさんは景気がいいなぁ、なんて
勝手に思ってました。
みうら みやげものやおかしなグッズに対して
領収書を取るのは、
なかなか恥ずかしいわけですよ。
値段がまた、5万円とかであれば
堂々と取れるけど、
「450円とかで取るのか、この人は」。
ちっさい人間だと思われることは
乗り越えていかなきゃなりません。
「自分は小さい人間だから、小さい人間だから」
そう思って領収書を取ってきました。
ほぼ日 みうらさんの景気は領収書が
支えていたんですね。


力の入ったみうらさんの素晴らしい語り、
今回も動画はバッチリございます。
どうぞごらんください。


それでは、また明日。
(つづく)


2010-08-12-THU

HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN