- 渡辺
- 持田さんて「エイベックスというお城にいる、
すごくかわいい、型破りなお姫様」だと思っていて。
- 持田
- 型破り?
- 渡辺
- はい。あれ、そう思われないですか?
- 持田
- 型破り(笑)?!
- 渡辺
- 若干、思ってらっしゃらない?
- 持田
- 「すごい会社だなあ、
こんなにいろんなひとが所属していて」
というふうには思いますけれど(笑)。
いろんなことをやっている会社ですから、
自分の身の回りの人たちとはよく話しても、
ほかのチームのかたとは、あまり接する機会が
なかったりもして。大きい会社ですよね。
- 渡辺
- 大きいですよ。
本当に大きいエイベックスというお城のなかのお姫様。
- 持田
- やっぱり浜崎あゆみさんや倖田來未さんとかって、
すごく「歌姫」というような印象がありますけれど、
わたし、ひとりじゃないし、このごろ一朗さん、
バラエティ色も強いし(笑)。
- 渡辺
- たしかに(笑)!
- 持田
- (笑)なので、あんまり
「お姫様」というような感じは、しないんですよ。
でも、自分自身も、デビューした時とは、
いま、ちょっと違う感じはします。
- 渡辺
- デビューした時っていうのは、どんな感じでしたか?
- 持田
- デビューした時は、会社が一丸となって、
「よし、Every Little Thingというものを売るぞ!」
みたいなものを感じていましたし、
すごくプッシュしてもらっていたと思います。
それに最初の頃は、女の子1人に男の人2人という
イメージ付けがあったんですけれど、
いつ頃からか、そういいイメージ付けがなくなって、
一朗さんと二人三脚となったいまは、
いろんなことを、けっこう、
好きなようにやらせてもらえてる感じになりました。
そのことがすごく楽しいです。
いまは「いや、それはちょっと!」
って言う人はいないというか。
- 渡辺
- はい、いないと思います(笑)。
だから心配もされてないでしょう?
つまりはナチュラルで型破りなお姫様なんだな(笑)。
- 持田
- やっぱり「お姫様」が付くんですね(笑)。
- 渡辺
- 「あ、姫がそうしたいなら、どうぞ」みたいな。
- 持田
- いえ! すごく普通な感じですよ。
普通な感じっていうことが
普通じゃないのかもしれないですけど。
- 渡辺
- でも、持田さんがそれを望まれたから、
そうなったんでしょうね。
“普通”って大事だと思いますもん。
その「お姫様」っていう言われ方も、
「いや、違うんだけどなぁ」っていう。
そういうところを望まれて、
無理なく自然に
こうなってきたんだろうなって思うんです。
- 持田
- 「わからなくなっていっちゃったら嫌だな」
っていう恐怖感はずっとありました。
よく、「お金をたくさん手にしたら、
感覚がわからなくなっちゃうよ」
なんてことを聞いてたんですね。だから、
「え? どんなふうになるんだろう」と。
「そういうふうにならないでいたいな」と。
そのことをすごく思っていました。
でも、そういうふうにならないでいようって思うことが
もう、なんていうか、ちょっと変ですけれど。
- 渡辺
- そういう景色を見られる人っていうのは
本当に少ないわけですから、
“普通”でいることの大変さは
なかなか理解とか共感とか、
してもらいにくいものですよね、きっと。
すごく大変だろうなって想像できるんですけど‥‥
持田さんはどんなふうになさっていたんですか、
「わからなく」ならないようにするというのは。
- 持田
- わたしの場合は、まず、かげで悪口を言われたら
嫌だなぁ、っていうところから始まったと思うんです。
わたしの目の前では言わなくても、
いなくなった時に「あいつ、最悪だよ」みたいな感じに
言われていたらどうしよう? と。
なので、極力、「自分の中でのいい人像」を
すごく意識していた時がありました。
- 渡辺
- 20代? 売れた後ですか、それって。
- 持田
- はい、そうですね。
振り返ると、きっと感じが悪い時も
いっぱいあったなと思うんですけど(笑)。
- 渡辺
- そんなぁ‥‥。そうですか?
- 持田
- というのも、昔なじみの人に会うと、
「あの頃、怖かったよね」と言われることもあって。
自分では思い出せないんですけど(笑)。
- 渡辺
- それは、きっと、
「ちょっと話しかけないで」っていうような。
- 持田
- それに、ちょっと三白眼だし(笑)!
- 渡辺
- ご自分の文章の中でも
「白目ちゃん」て書いてますものね(笑)。
- 持田
- 周りにいる皆さんがお兄ちゃんたちだったので、
あまり喋らなかったんですよ。
たとえば、MAXさんとか、SPEEDさんとか、
「いいなぁ」って。なんだか楽しそうで、
学校の延長みたいな感じがして。
きっと大変なこともあったと思うんですけど、
見てる限りだと、「わぁ、すごい!」。
本番の3秒前くらいまで──。
- 渡辺
- キャッキャしていてね。
- 持田
- それを、すごくいいなぁと思っていた時がありました。
わたしを見ると、なんか髭の濃い人と、
ガリガリに痩せてる人と、みたいな。
しかも、小っちゃい時から知っている
お兄さんたちじゃないから、
わたしは自ずと静かにしている、みたいな感じで。
- 渡辺
- そうですよね。
それが「ちょっと怖かったよ」
みたいに思われたんですね。
- 持田
- ただ、すごく忙しかった時は、
覚えがなくても、
そういう時があったのかもしれないです。
- 渡辺
- わたしは、持田さんを見ていて、
カッコいいなぁ~と思ってました、その頃。
- 持田
- あ、ニコニコしない感じが?
- 渡辺
- はい。不必要にニコニコしないところが、
とてもカッコよかったです。
大地をしっかと踏みしめて歌うスタイルも、
ずっと好きだったし、
簡単には笑わない感じの空気も非常に好きでした。
- 持田
- でも、紅白とか、テレビに出ることは
やっぱり怖かったですよ。
- 渡辺
- えっ、なぜ?
- 持田
- 芸能界のことを知らなかったから、
「ご挨拶」とか全然できなくて。
わたしがデビューした時、特に音楽の人たちの中では
そういうしきたりがあまりなかったんです。
だからお会いした時に、ちゃんと目を見てご挨拶しよう、
というくらいの認識で、大御所のかたとも
普通に話してもらおうなんていう気持ちでいたんです。
- 渡辺
- むずかしいですよね。
- 持田
- そうなんですよ。むずかしかったですね。
でも、むずかしいけど、
行ったらいいんだなっていうのを学んで。
- 渡辺
- そういうのを経ながら、こう、持田さんとしては、
悪く言われないっていうか、
思われないようにしようという思いが、
強まってきたわけですね。
- 持田
- 今は、自分が思うほど、人は自分を思わないから、
「どう思われよう」みたいなことも
考えなくてもいいんだなっていうのは思うんですけど、
若い時は「極力、いい印象でいたい」
というような願望が強かった人間だと思います。
- 渡辺
- じゃあ、さっきおっしゃっていたように、
20代の終わりくらいになって、
ちょっと楽になってきた?
- 持田
- 普通のことを普通にしていればいいのかな、
というような感じで。
取ってつけたようなものではなくて、
そうしたいと思った時に
そうすればいい、という感じになりました。
- 渡辺
- それができることはすごいことですよ。
大変ではなかったですか?
普通のことを普通にするって。
- 持田
- わたし、歌いながらにして、
音楽のことに詳しくないまま来てしまったんですね。
ほとんど勘違いのままに、
音楽をやってきているような感じがして。
なので、いま、自分が好きなミュージシャンの方とか
アーティストの人たちに会って、
音楽を一緒にやらせてもらったりするようになってから、
すごく変わりましたね、いろんなことが。
いろんな会社で働いてる人たちがいて、
「あ、ここはこういうやり方なんだ」
っていうことが見えてきたりとかして。
- 渡辺
- うんうん。
- 持田
- そうすると、「あ、それは素敵だな」
っていうことがわかってくる。
「わたしは今までマネージャーさんが
送り迎えをしてきてくれたけど、
それは特別なことだったんだ」と。
そうすると、マネージャーさんも、
送り迎えは仕事かもしれないけど、
それがちょっと減ることによって、
何か違う仕事ができるんだとしたら、
全然自分で電車で行くこともできるなぁ、とか。
なんかそういうふうな考え方になっていくと、
すごく楽しいな、と思えたんです。
お互いに余裕ができるし。
- 渡辺
- じゃあ、マネージャーさんも含めて、
そのチームはやっぱり持田さんにとって、
とても大事なんですね。
- 持田
- わたしは、一緒にやるってなったら、
すごく仲よくなりたいタイプで。
それは、ぶつかり合いながらも、熱く、
「やっていこうよ!」みたいな感じです。
いっぽう、一朗さんは、
ちょっと遠くから見守るみたいな感じで、
もちろん会社なので人事異動もあるんですが、
今、この20周年というきっかけもあったりするので、
すごくいい感じで、ひとつの方向に向かってる感じが、
すごく、します。
(つづきます)