ショーガール。
奥野史子・ラスベガスからの出発。

第13回 筋肉系の生き方。

みなさんごきげんよう。
実は今、日本です。
一時帰国中です。
ショーが2週間のお休みに入ったため、
日本に帰ってくることができました。

ひさびさの日本は、
とにかくごはんが美味い!
ほんとに美味い。
日本人の味覚の繊細さは素晴らしい!
と実感する毎日です。
しかしまずい、このままでは太る。
すでに太ってるかも…。

この時期日本は忘年会真っ盛りですね。
食べすぎ飲みすぎ注意ね。
私も同じく注意ね。
食べたら動く。
筋肉動かす。
体脂肪燃やしましょう!

さてさて、前置きはこれぐらいにして本題に…。
前回、シャバール(お馬さんたちのショー)について
お話ししましたが、
今回は、“MYSTER”についてお話しします。
こちらもラスベガスで行われている
CIRQUE DU SOLEILのショーで、
今年で、はや8年目になるショーです。
このショーはとにかく人間の身体能力の素晴らしさを
これでもかっ!
と言わんばかりに見せつけてくれるショーで、
ワタシ、観ていて口がぽか〜〜〜んと開きました。
特に兄弟2人がやっているハンドバランスは圧巻。
人間の筋肉の限界に挑戦しているような、
こんな事があってもいいのかというような内容です。

人間の筋肉というものは簡単に言うと
「速筋」と「遅筋」の2つに分けることができます。
その名の通り、瞬発系と持久系です。
人によって速筋が多い人、遅筋が多い人と
タイプが分かれます。
それでいうと、先ほどのハンドバランスの兄弟は
「遅筋の王様」。
常に一方がもう一方の上にハンドバランス等で立ち、
ふたりがお互いの体重のバランスを取り合い、
ゆっくりゆっくりと動きを変えていきます。
これ、パッと見には凄いバランスだな〜、
くらいに思えるかもしれませんが、
そのバランス感覚もさることながら、
想像を絶するパワー、そして持久力がすごいんです。

重いものを持ち上げる時、
人間は反動や早さを利用しますよね。
どんな人でも重い荷物を持ち上げる時、
ふんっ!と瞬間的に動きますよね。
重い荷物をゆっくりゆっくりじわじわ持ち上げる人は
いないでしょう。
そんなんしたら、しんどいです。
それを彼らは人間の肉体同士でやってのけるのです。
想像するのは難しいかもしれませんが、
これは芸術的な筋肉の美です。
特に筋肉を鍛えた経験のある人があの技を見たら、
うお〜〜〜っ!って唸ること間違いなしです。
スポーツ競技のパワーや技、
それを原点に、
さらに芸術的に姿を変えたアスリートが
続々と登場します。

普通じゃない世界がそこにはあります。
こんな人たちがこの世にはいるんだ〜〜〜っ、
って思えます。
人はそれぞれいろんな生き方してるなって。
これは筋肉だけの問題じゃなくって、
筋肉が凄いっていうことが言いたいだけじゃなくって、
人間の潜在能力の凄さを言いたい訳で…。
鍛えればここまでできるんだよ、
ってことを教えてくれているような気がするんです。
そうなるには、そりゃあ人並みはずれた努力は必要で、
そういう環境も必要で。
だけど、人には必ずチャンスってものがある。
彼らもチャンスをつかみ、努力をし、
あんな風になれたんだと思う。

CIRQUE DU SOLEIL にいるアーティストの多くは
ロシアや中国といったスポーツ大国出身者たち。
ハンドバランス兄弟もロシア人です。
スポーツ選手時代の実績、技術を、
引退後、ここサークで生かしています。
スポーツはひとつのエンタテインメントであり、
競技選手のスキルを最大限に生かした
エンタテインメントの一つの形が、
サークのショーと言えるでしょう。

では、そのショーに出演するチャンスを得た
アーティスト達の
エンタテインメント、
またプロに対する意識ってどうなのか?
これは国民性、また個人の意識によって
当然違うので一概には言えないんですが、
皆が共通して思うことは、
人々に喜びや感動を与えること、
そして、プロとしての対価。
特にロシアや中国などでは一般の人々の収入は
それほど多くありません。
そんな国のアーティスト達は収入に対する意識が強く、
「プロは稼いでなんぼじゃい」くらいの勢いを
強く感じます。

夢や理想の世界というよりも、
もっともっと現実的な、人間臭い世界なんです。
日本ではスポーツ選手がお金にこだわることを
潔しとしない、そんな風潮がみられますが、
彼らと共に仕事をしていると、
お金にこだわること、それがプロ意識であり、
そうじゃなきゃ、プロって言えないよ。
って思います。
お金お金ってそれだけじゃ困るけど、
この世界で自分の価値を評価されるのはお金なんだから。
だから、日本のプロの人たち、
もっと胸はってお金のこと気にしていこうぜ〜!
ワタシももっと稼ぐからよっ。

んじゃ、また来週!

2001-12-11-TUE

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