さて、つぎはみうらさんが「神様」と呼んでおられる
ボブ・ディランです。
みうらさんは、ディランによって
人生を変えられた、とおっしゃっていますが、
そもそもは、吉田拓郎さんが
ディランに影響を受けられたことから
みうらさんも聴くようになったわけですね。
レそうです。
吉田拓郎さんの『気ままな絵日記』という本に、
そう書いてあったんです。
拓郎さんが影響を受けたんなら、
僕も受けなきゃなんないんでね。
‥‥なるほど。
聴いていくうちに、
日本のフォークがボブ・ディランに
影響を受けていることが
とてもよくわかったんです。
あの当時は、ボブ・ディランが
ネタの「とって出し」だったんですよ。
いわゆる「ネタ元」ね。
日本のフォークシンガーのなかには、
ディランさんを、ある意味「パクる」かたちで
スタイルを確立していった人も
多いんじゃないかと思います。
僕のあこがれていたもののルーツを
ディランさんは見せてくださった。
だから「すごい!」と思ったんです。
でも、ディランさんにはディランさんの
これまたルーツがありまして、
トラディショナルなフォークソングなどが
そうだったんですけれども、
ディランさんのCDのなかに
「どう聴いてもあのトラディショナルナンバーと
全く同じじゃないかな?」
というものが入っていたんですが、
堂々と「作曲ボブ・ディラン」と書いてありました。
著作権はぐるぐる、
メビウスの輪のように
回っていくんだな、
ということを、そのときに知ったわけです。。
そして、初来日のコンサートでは。
美空ひばりさんも途中で席を立たれるような
すごいことになっていました。
(くわしくは、動画をごらんください)
ボブ・ディランは、その時期によって
いろんな変遷があるようですね。
ディランさんが、カントリーソングに
傾かれた時期もあってね。
ロック系のアルバムを出したあと、
次のアルバムのジャケットで
いきなりテンガロンハットのようなものを手にして
にこにこ笑って登場なさり、
僕らをビックリさせてくださったものです。
困ったなあ、と思っていたら
今度はトラディショナルなナンバーを歌う、ということで
サイモン&ガーファンクルの「ボクサー」を
カバーされたりして、
僕はもともとオリジナルソングを歌う
ディランさんが好きだったのに、
またもや突き放されたり。
「みうら、変わってんなあ」という友達に、
心のなかではちっともそう思っていないにもかかわらず
「これがいいんだよ」と
言いつづけることによって
自分もだんだん好きになっていく、
という手法をとってきました。
好きになるものに対して
ひじょうにがんばりの見える、みうらさんの手法。
無理に好きになろうとするうちに、
自分がどんどん侵食されていき、
いつのまにか一生に影響を受けてしまうほどの
存在になっていく。
みうらさんの漫画『アイデン&ティティ』には、あらゆる局面で
ボブ・ディランが忽然とあらわれ、教えを与えます。
何かのルーツになっているものには、
どうしようもないほどの、歯止めが効かない力がある。
年を重ねてもロックをつづける
英雄たちの背中は偉大です。
みうらさんの、20個めの恩返しでした。
アメリカを代表するアーティストのひとり。
現在も、もちろん活躍中。
■「TENGU&ハニー香立」
プレゼント当選者発表 池田 さま がご当選されました。 |
ボブ・ディラン
ミュージシャン、詩人。デビュー以来、多大な影響を同時代の人々に与えてきた。
詩人としては、なんとノーベル文学賞にノミネートされたこともある。
ロック史においてだけでなく、20世紀半ば以降の文化において重要な人物。
みうらじゅんさんの「神様」だそうです。
『アイデン&ティティ』に登場するボブ・ディランの曲をまとめたCDが、
みうらさんのイラストをジャケットにして2004年に発売。
漫画のジャケットを好まないディランであったが、
10年以上ものあいだ、
機会あるたび交渉しつづけた結果の悲願達成だったそうです。
みうらさん渾身のセレクションの一枚を、ぜひ聴いてみてください。
IDEN & TITY/BOB DYLAN
サイモン&ガーファンクル
日本では「サイモンとガーファンクル」とも呼ばれる。
「サイモント」というひとりのミュージシャンのことを指すのではなく、
ポール・サイモンとアート・ガーファンクルのふたりによるフォークデュオ。
小さくてギターがうまく才能のある人と、金髪で歌のうまい人のペア。
でも両方才能があって両方歌もうまい。
「明日に架ける橋」「サウンド・オブ・サイレンス」
「コンドルは飛んで行く」など、
名曲ぞろいのCDは、こちら。