恩返し その25 ハニワは横に転がって動く。もとはそれだけで描いた漫画でした。



ハニワといえば、古墳時代のものとはいえ、
墓関係のグッズです。
これをみうらさんは、漫画で主人公にし、
イメージを払拭していった、というわけですね。



人柱、という暗い過去
持っている、そんなハニワですからね。
僕は宮崎に行ったことがありまして、
さすがあそこは神話の郷ですから、
ハニワが有名でして、
商店街のおみやげもの屋さんに
ハニワがたくさん売られていたんです。




商店街に?




ええ。いまはもう
少なくなっちゃったかもしれないけど、
商店街に。
お店の外にボーン!と段ボールが出してあって
「ハニワ大売出し」と書いてあったんです。




大売出し?




ええ。大放出で。
割れちゃったのとか、傷んじゃってるのとか、
売り物にならないなあ、というようなハニワが
大きな段ボールにガッサガサ入ってて、
1個10円とかで売っていたんですよ。
お店の敷地内にも入れてもらえず、
ごっそり段ボールに詰められて
店の前にボーン!です。




しかも何体も、どっさりと。
そんなことが宮崎で
あたりまえに行なわれているとは‥‥。




ええ。そして、そのときに
もっとも衝撃を受けたのは、
ハニワが横倒し
なっていたことだったんです。
そんな姿を僕ははじめて見たんです。






ああ、それは衝撃ですね。
ふだんは教科書などで立派に直立している姿を
目にしているのですから。
あの、空洞の目が地面を見つめているさまは、
せつないですね。




そして、そのときひらめいたんです。
ハニワがキャラとして歩くときは、
足(底)を使って歩くよりも
横に倒れてゴロゴロ転がっていけば、
坂道とか早く行けるなあ、と。
、転がしてみたんです。
そしたら、この、手のところらへんで
引っ掛かって転がらないんですよ。






はははは。




だったら、底の部分で2体くっつけて
転がしたらどうか。
そうやったら、ちょっとは無理矢理に転がりました。
そんなことから、僕は
ハニワの漫画を描こうと思ったんです。
これなんですけどね。
『学園ハニワもの・ハニーに首ったけ』。
家族もので学園ものなんです。






ハニワもので家族もので学園ものなんですね。



主人公はハニーという名前なんですけど、
ハニーもハニパパも、
学校に行くときや会社に行くときは
必ずゴロゴロ転がって移動するんです。
コマで言うと、
ここまでしか考えていないんです。






そんな発想で描いた漫画、
『学園ハニワもの・ハニーに首ったけ』。
古墳時代の大ブームから
千年以上をはさみ、
ハニワをハニーと呼んで転がすことで
第二次ハニワブームを日本で巻き起こした
現代の黒眼鏡の古代人、みうらじゅんさん。
サンリオのハニワキャラクターや
NHKの「おーい! はに丸」が出てくるのは
このあとのことでした。
漫画家としてはじめて「おもしろい!」という
声をもらった、
思い出深いキャラクターでもあります。
(くわしくは、動画でごらんください)
みうらさんの、25個めの恩返しでした。





みうらさんは
『学園ハニワもの・ハニーに首ったけ』
(1986年9月河出書房新社)を世に出し、
ハニワを「ハニー」と呼ぶことで、
人柱だった彼らの暗い過去を解消した。


ハニワ
日本の古墳時代に、
古墳(お墓)に置かれた「お供え」的工作物。
王に殉死する者を生き埋めにするかわりに、
ハニワを古墳のまわりに並べるようになったという説や、
古墳を聖域として守る垣根のような役割だった
という説などがある。
日本一規模の大きい大仙古墳では、
3万本のハニワが使われたらしい。
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2005-07-07 THU
(c) Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005