ペットふとんとは、
簡単に言ってしまうと動物のかたちをした寝袋、
きぐるみのような寝床ですね。
ペットふとんは、みうらさんに
いったい何を与えて去っていったんでしょうか。
いま思えば「無駄なものを思い切って買う」ということの
いちばん最初のものだったのかもしれないね。
千円単位なら買えていたけど、
万円単位で
くだらないものを買うというのは、
ほんとに、ドッキドキしました。
このペットふとんを買うことで
そのあたりのことが一気に大丈夫になって、
「何十万の高級ナントカ!」なんかでも、
平気で買えるようになりました。
自分すら「要るのかな?」と思っているものを買う、
その原動力になった最初のものが
ペットふとんだったような気がします。
だって、こんなの、いらないもん。
あ、それは、怖いライターですね。
ね?
こんなものを、何万も出して買う。
そのおかしさって、僕にとっては
ペットふとんからはじまったんですよ。
まあ、実用を兼ねていたとはいえ、
やはりペットふとんが大人の男性の家に
なにげなくあったら、おかしいですね。
しかも、買うときに
「イヌちゃんですか、クマちゃんですか?」
と訊かれるんだよ。
ふつうに、ですか。
ふつうに。早口で。
「イヌちゃんですか、クマちゃんですか?」
そんなイヌちゃんの、
ステッチがボロボロになって、
ヒゲのボツボツがつるつるになりそうになったとき、
みうらさんはついに
ペットふとんを手放す決意をなさいます。
そして、それをオークションで競り落として、
手に入れた学生さんがいます。
そうです、
むかし学生、いまミュージシャンの、
あの方です。
ずいぶん経ってから、
「これ、捨てていいですか?」って
電話がかかってきたんだよ。
「買った者としては、
訊いてから捨てなきゃと思って」
だって。
すっげえ、うれしかったです。
その方はいま、「ほぼ日」で
「明日に向かって捨てろ!!」
というコンテンツを連載なさっています。
ハハハ、捨ててんだ!
捨ててます。苦手そうに捨てていらっしゃいます。
じゃあもしかして、
意を決して捨てるものの、いちばん最初は
ペットふとんだったのかもしれないね。
ペットふとんは、
捨てる際の原動力にすら、
なっていたのかもしれません。
ふしぎな存在感のあるものなんですね、
ペットだし、ふとんだし。
しかも、十何年も、
いちども水を
くぐってないし。
イヌちゃんの、おそろしく変わり果てた姿を
ひと目見てみたかった、そんな気にさせられます。
隠しておくのもナンですので申し上げますと、
そのミュージシャンとは、
スチャダラパーのボーズさんです。
ことの顛末は、右側にある
「ナローバンド」「ブロードバンド」の
ボタンをクリックして、ぜひ動画でお聞きくださいね。
買ってもいいものだろうか、
捨ててもいいものだろうか、
大人ふたりが、それぞれ
ばかばかしくも英断をくだす羽目になった、
偉大なペットふとん"イヌちゃん"へ、
みうらさんの、26個めの恩返しでした。
イヌの頭のついたふとん。
これで寝る大人の男。
いったいどんな夢を見るのでしょう。