バカレコードとは、おもに
ジャケットが味わい深いものを
指すようなのですが、
レコードが「CD」になってから、
ジャケットデザインというものが
人々に与えるインパクトが
半減したような気がします。
そうだね、きっと
終わった文化なんでしょうね。
みうらさんは、これらの
味わい深いレコードを
どこで見つけられたんですか。
神田や高円寺の古レコード屋さんの
店頭ワゴンに売っていました。
たいがい僕のさがしているレコードは、
ワゴンセールになっているんですよ。
ワゴンのなかに、
1枚10円とかのシングル盤が
バーッと並んでるんです。
しかも、ワゴンは店の外にあり、
太陽の光がさんさんと
降り注いでおりますんで、
ジャケットが褪色してしまって
もう誰だかわからない、
判別できないような人たちが
ズラッと勢ぞろいされている、
そんな状態になっていました。
それらをまとめて買ったりして
店の親父から
「な〜んのために買うのかなぁ?」と
不思議そうな顔をされたもんです。
自分のお店で売っているんだから、
そんな顔をしなくても‥‥。
ところでこの、ジュディ・オングさんと
杉良太郎さんのレコード、
いったい何がおかしいんでしょうか、
美男美女なのに。
左に値札があるでしょ。
10円って貼ってあっからね。
10円!
ええっと、歌のタイトルは、
「恋は夢のなか」。
ワゴンのなかだったけどね。
おふたりとも、腕がシャーッとなった
服を着ていらっしゃいます。
ダブルシャーだね。
どっちのシャーなのかが、
下に行くにしたがってわかんないね。
おもしろいものの反対語は
「おもしろくない」ではない。
そう思いついたみうらさんが拾い上げたものの数々。
時代に埋もれて消えることなく、こうして蘇り、
なかには高値で取り引きされるものも
出現してしまうことになりました。
それぞれの持つ底知れぬパワーが
ほかの誰でもない、みうらじゅんという人を
「おい! おい!」と呼び寄せたその理由が、
わかる気がします。
愛すべきバカレコードのみなさんに、
みうらさんの31個めの恩返しでした。
バカレコードのひとつ、「?パパはメキシコ人?」。
名盤解放同盟と銘打って、
似た領域のレコードを収集している漫画家の根本敬さんと、
みうらさんの
バカレコードの定義をはっきりさせようという話になり、
この「パパはメキシコ人?」を
お互いの境界線にしようという調停が成立したという。