どの時代のどの街にも似つかわしい、 桐箱に入った国宝、桂米朝師匠。



みうらさんが桂米朝および落語を聴き出したのは
お父さんの影響なのだそうです。
みうらさんのお父さんは、粋な方だったのですね。




うちの親父はわりと
小唄なんかもやったりしてね。
僕は親父に教わるまで、そっち方面のことは
全然興味がありませんでした。
ですから、僕が米朝さんにお会いしたときに
「僕に落語を教えてくれた親父にぜひとも」
とお願いして、
親父宛にサインをもらったんです。
一句、添えて書いてくれてね。
そのサインは、京都の実家の玄関先に
かけてあるんです。





へええ、いい話ですね。




しばらく経ったある日、親父が
「なあ、これ
 何て書いてあるのかな」
って言うんですよ。




玄関に飾っているわりには、
わかっていらっしゃらなかったんですね。




ええ。それで、京都新聞だったかな、の、
記者の方が、米朝さんに取材で会うときに
訊いてくださいました。
達筆なんですよ、米朝さん。





まあ、ご本人の、あのオーラを前にしたら、
「何と書いてあるんですか」とは訊けないですね。




楽屋でお会いすると
わりと小さな方なんですけれども、
舞台に出るとおっきく見えるんですよ。
やっぱりね、フェロモンが出てるんです。
きっと、あの方は
大阪から東京に移動されるときは、
桐の箱に入っておられると思います。
だって、人間国宝だもん。




ところで、動画のなかでおっしゃっていた
落語「まめだ」のことなんですが。




「まめだ」って、こだぬきのことなんだよ。
あのね、いたずら好きのこだぬきがね、
(以下、「まめだ」のあらすじを語る、みうらさん)












ひゃー(泣)!!!!




俺もいま、自分で
ちょっときちゃったよ。



俺の語りでそんなに泣いちゃうんだったら、
米朝さんの演じられてるのを聴いたら
たまんないですよ、きっと。



なんだか、聴くのがこわいくらいです。




新作って、現代が舞台になってるものが
多いでしょう。
でも、この噺は、
昔っから人のなかにある、
人情ものなんだよね。すごいよなあ。






そうですね(まだ泣)。




関西の子どもたちは、
その語りぶりによって
笑福亭一門と桂一門に
分別されるシステムがあるのですが
僕は完全に笑福亭系でした。




笑福亭系というのは?




例えば、桂系が
「えー、その道中の陽気なこと」
という場合、笑福亭系は
「え"ー、ぞのどうぢゅうどようぎなごどぅぉ」
と、なるんです。




ちょっと極端に聞こえますが、
つまりダミ声ふう、ということですね。
言われてみれば、鶴瓶さんや鶴光さん、
仁鶴さんも、そうかもしれません。




そんないま、この音源。どう?




‥‥これは?






僕といとうせいこうさんがやっている
「ザ・スライドショー」を、3年前に
ハワイで開催したんです。
そのときに来てくれたお客さんのために
録音したものなんだけど、
このページで、ちょっとだけ公開しちゃいましょうかね。
え"ー、笑福亭組の声でやっておりますな。
マイクの前であてずっぽうにしゃべっておりますな。
登場人物がいっぱい出てきて
わけわかんなくなって、終わります。




では、みうらさんの落語をお聴きになりたい方は、
ここをクリックしてください。
(クリックすると音声が流れます)
思い出す限り一生懸命
しゃべっておられるかんじが伝わってきます。
いつもギリギリさが似合う、みうらさんです。
桂米朝師匠の落語の、
誰にも真似できない、なんとも言えぬ、華やかさ。
自分で落語を録音するまでに至った
みうらさんの心の底には
ふとんのなかで、ロンドンで、フランスで
江戸時代にタイムスリップさせてくれた
米朝師匠の声が根づいています。
(くわしくは、動画でごらんください)
親子2代にわたってお世話になった耳の恋人に、
みうらさんの32個めの恩返しでした。


※動画中で、「まめだ」の原作は桂米朝さん、と
 表現しているところがありますが、
 「まめだ」は昭和41年に
 三田純市さんがつくられたお噺でした。
 訂正いたします。



米朝さんの落語を聴いてみたい方は、
CDをどうぞ。
「たちぎれ線香」は
「特選!! 米朝 落語全集 第二集」
に、
噂の「まめだ」は
「特選!! 米朝 落語全集 第十三集」
に入っています。


桂米朝
落語家。1925年生まれ。
'72年に上方お笑い大賞受賞、'87年に紫綬褒章受章、
そして'96年に、
上方落語としては史上初の重要無形文化財保持者
(いわゆる人間国宝)の認定を受ける。
格調高い話芸が心地よい、上方落語の巨匠。
一門には、ざこば、南光、
月亭可朝、故・枝雀らがいる。

ザ・スライドショー
みうらじゅんさんと、いとうせいこうさん、
スライド機のスライによるユニット
「ロックンロール・スライダーズ」が執り行なうショー。
来る2005年9月10日中野サンプラザホールで、第9回を迎える。
チケットは残念ながら発売日に即完売。
毎回プラチナ級に取りづらいことで有名だが、
今回も2000席に対して2万人が殺到したという。



3年間の沈黙を破り、黄金のトリオが顔を揃え、
迎える9回めのスライドショー。舞台はオールアドリブで、
ほんとうに神業のようなステージです。
写真は今回のライブの「満員御礼記者会見」のようすです。

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2005-08-02 TUE
(c) Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005