ジャンルを得ることで、らくがおは、 たくさんのヒーローを生みました。



らくがおとは、
人の顔にほどこすらくがきのこと、
または
らくがきされた顔のこと、
をいうのだそうです。
つまり、こういうことですね。






これは、もともとは
舛添要一さんの写真です。




え? ま、ますぞえさん‥‥。
よくオッケーを出されましたね。




はい。いろんな方々に
らくがおの「もと」になっていただきました。
僕は、小学館の雑誌「小学6年生」で
らくがおのコーナーを連載していたんです。
何万通も投稿が来る、
大人気のコーナーだったんですよ。




みんな、教科書の偉人にらくがきをするのが
好きだったんですね。
(本を見て)味のあるらくがおばかり‥‥。




らくがおは、
小学校6年生くらいまでの子どもたちには
すごく才能があるんですよ。
中学生以上になると
「らくがおは、こうすればいいんだ」
という考えが働いてしまって、
ウケ狙いをするようになってしまうんです。
性の目覚めとともに、急に
常識が芽生えてくるんでしょうかね?
でも、小学生は、むちゃくちゃだから!
人を人として
認識していない
んですよ!
だから、いいんだよね。





本能でやってますからね、
グリグリグリグリと。




らくがおの極意って
そのグリグリを
「どこで止めるか」なんですよ。
そうやって、寸止めの精神が、
らくがおにより
育成されていくんです。




子どものもつ、得体の知れないすごみが
この一冊にみなぎっていますね。
「小学6年生」のそのコーナーは
さぞ盛り上がったことでしょう。




ええ。
この本の表紙になった
らくがおを描いた子どものお母さんから
お礼のハガキが来ましてね。



「うちの子は、学校で何の取り柄もなく、
 勉強もできないし、体育もいまひとつ。
 でも、雑誌に、自分の描いたらくがおが
 掲載されたことによって
 学校でヒーローになったんです」
と書いてありました。
鼻毛を描いただけで、
ヒーロー
になる。
「やってはいけない」と言われていたことに
ジャンルをつけることによって
褒められたり、アートになったりする。
そうやって常識は覆されるんだと思うんです。





勉強の苦手なみうら少年が
学校でいちばん上手にできたことは、
教科書に載っている偉人の顔を
ベストな状態に仕上げることでした。
みうらさんが教室であたためていた
らくがおというアートの新ジャンルが、
日本国じゅうの「1位になれない子どもたち」を
やすやすと1位にしたのでした。
みうらさんは、よくこんなふうに言います。
ジャンルをつくれば誰でも1位になれる。
アートというものを、はじめて教えてくれたらくがおに、
みうらさんの35個めの恩返しでした。




みうらさんが
雑誌「小学6年生」(小学館)で連載していた
らくがおのコーナーが一気にブレイク。
時の総理大臣宮澤喜一氏も
らくがおモデルを快諾したという。


らくがお
らくがきされた顔のこと、
顔写真にいたずらがきをすること。
おもに笑いをとるのがねらいだが、
中学生以上の大人より、
「らくがきしたい」という純粋な欲求を
素直に出す傾向にある小学生のほうが、
一般的にはうまい。
女子も男子も変わらず、
いいらくがおを発信するとのこと。

正岡子規(まさおか・しき)
1867〜1902年の、明治時代の俳人。
俳句雑誌「ホトトギス」を創刊したことで知られている。
教科書に掲載されていた正岡子規は、
頭を剃った横顔が多かったと推察される。
教室アートの基本は、この人にあるのかも。

島崎藤村(しまざき・とうそん)

1872〜1943年の、明治から昭和にかけての作家。
代表作は『夜明け前』。
らくがおに耐えうる、メガネのハンサムな男性。

舛添要一(ますぞえ・よういち)
1948年福岡生まれ。
らくがおの下敷きモデルになることを、
初期に快諾した勇気ある人。
もと東京大学教養学部政治学助教授で、
現在は参議院議員。

おしらせ
前回の「カエルに恩返し」の回で
みうらさんが服装を変えましたので、
8月9日にメールをくださった方のなかから
抽選で2名さまに歯磨きセットをプレゼントします。
当選された方には「ほぼ日」から
住所などをおうかがいするご連絡をいたします。
次にみうらさんが着替えるのは、意外に、すぐです。
服装が変わった日の更新の24:00までに
メールをくださった方のなかから
抽選で1名さまに
満州菊富士ホテル特製スリッパ
ペアセット(カードつき)

プレゼントいたします。
これは、みうらさんのオリジナルグッズではなく、
ある偉大な映画監督の偉大な映画の特製スリッパです。
なかなかの貴重品です。どうぞ着替えをお見逃しなく!
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2005-08-11 THU
(c) Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005