いやげ物は、僕が買いましたので、 みなさん、安心してください。



前回の「カスハガ」は、
もらってもうれしくない絵ハガキでしたが、
今回も、もらってもうれしくない、
いやなみやげ物=いやげ物がテーマです。
この「じゅんの恩返し」は
みうらさんの事務所で収録させていただいていますが、
ここに飾ってあるものは、ほとんどが
いやげ物関係ですね。






ほぼ、そうですね。
というより、ここにいる人間、つまり僕、が
世の中からすればいやげ物だ、
ということでしょう、きっと。
ここにあるのは、いま現在の、コレクションなんですよ。
一応、フィギュ和(フィギュワ)と呼んでいます。




フィギュア、ではなく、フィギュ「ワ」。




昔でいうところの
「おじいさんの水屋」においてあったコレクションを
僕が引き継いでいこうと、こう思いましてね。
たとえば、これは、
京都の三条大橋にある、
「もう、だめだろう!」というような
おみやげ屋さんで見つけた人形です。






かなり価値のありそうなお人形ですね。




昭和初期あたりの、古い人形なんですよ。
最近の人形は手がプラスチックのものが多いんですが、
これはちゃんと、紙粘土みたいなものでできています。
これがですね、奥のほうの汚いショーケースで
30年もの長いあいだ、売られつづけていたんです。




30年間‥‥。
ほとんど無意識の領域に入っていますね。




うん。これを、
店のおじさんにうまいこと言った結果、
「持ってっていいよ」ということになり、
いただいてきたわけなんです。
店もきれいになる、僕も手に入ってうれしい、
でも今度は僕の家が汚くなる、
つまり地球上のものは、
何も増えていないし何も無くなっていない、という
ブッダの教えが
ここにも通じているわけです。




ヘンな栓抜き=ヘン抜きや、二穴オヤジ‥‥
おなじいやげ物でも、それぞれのブームのたびに、
目についたものを
買っていらっしゃるわけですよね?




はい。





これまでの、膨大なアーカイブというか、
コレクションというか、は、どこに‥‥?




スライドショーなどのイベントをやってくれる会社の
倉庫に預けっぱなしにしてあります。
もう帰ってきてほしくない
とまで思っています。




ヘン抜きの、野球少年。
本人は明るく笑っていますが、
これ、意外に重いですね。






だって、南部鉄器だもん。
重いし、値段も高いんだよ。
これをいくつもいくつも、買うんだよ。
清水の舞台から、何回飛び降りたか!




購入費と場所代が、すごいですね。




いやげ物はみんな僕が買ったから、
もう、みなさんは、
安心して買わなくていいです。




ところで、自分の出身地のいやげ物を見ると、
捨ててきた故郷を、まざまざと確認させられるような
ちょっといやな気分になりますね。




おかあさんやおとうさんの、
あの野暮ったいかんじを捨てて、
みんな、都会人になりすましているわけですから。
こんな話をしているときも、
おかんがうしろに、
「あ、いつも、じゅんがお世話になっています!」
と出てきたら、
「もう来ないでくれ!!」となりますよ。
いま、はりきって、俺は出ているんだから!!
はりきって、ひとりで生きているような
フリをしているんだから!!
せっかく東京で新しい生活をしているのに、
「冬は寒いだろうから」って
綿入りはんてんを送ってこられたり。
そりゃあ、泣くけど!
泣くけど、東京ではかんべんしてくれ!
つまり、こういうものは、
遠くにあって思うもの、なんですよ。
近くにあって思いたくないんです。






インパクト過多なものが
集結しがちな、地方のみやげ物店。
あの、天橋立の股のぞき木彫り人形4500円は、
高いでしょうか、安いでしょうか?
心配めさるな、とみうらさんは語ります。
いやげ物を買い集める役を買って出たみうらさんが、
みんなに忘れてほしくないことは
「君の田舎にはこんなものがあるんだぞ」
ということだけです。
シティライフで忘れかけていた日本の土着文化を
思い出させてくれるいやげ物に、
みうらさんの37個めの恩返しでした。





二穴オヤジとは、小人の人形と、
その傍らに開いた2個の穴で構成された鉛筆立てに、
地名の看板を無理矢理立てたみやげ物のこと。
函館のみやげ物店では「HAKODATE」、
長野のみやげ物店では「NAGANO」という
シール状のものが貼りつけられている。


いやげ物
もらってもうれしくない、みやげ物のこと。
甘えた坊主(坊主が木魚に甘えている置物)、
ヘンジク(変な掛け軸)など、
このページで紹介したもののほかにも、
いやげ物は膨大に、世の中に存在する。
探求心のある方はぜひ、
みうらさん著の文庫『いやげ物』を、
手に取ってみてくださいね。
トップページへ戻る


2005-08-16 TUE
(c) Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005