君は、その



今回、みうらさんは動画の最後を
「自分のグットクリフを求めて一生を終えてください」
というメッセージで締められました。



一生はね、ちゃんと終えないと
いけないと思うんですよ。
それはもう、ほんとうにそう思います。



みんながグットクリフを求めて、
悔いのない一生を
送らねばならないということでしょうか。
グットクリフとは、
グッとくるクリフ、つまり、
心にグッとせまりくるようなすばらしいクリフ(崖)
のことです。
転じまして、
ギリギリのところにある、すばらしい何か、
ということも含むようです。




「いま、自分は崖っぷちに立っている」
などというように、
人生を崖にたとえることもあるでしょう。
みなさんは嫌なイメージで
「崖」という言葉を使っているんです。
さて、崖とは、そういうものでしょうか。
みなさん、長い人生を考えてみてください。
僕は、自分から
わざと
崖っぷちに立ちに行っても
いいんじゃないかなあ、と思うんです。
年を重ねていくと、妊娠と同じで
「安定期」というものに入っていきます。
「なんとなく、まあまあしあわせだし、
 まあまあお金もあるし」
「ちょっと別荘でも買って、余生を送ろうかな」
なあんて、
甘い!
そんなもん、
おもしろくない!!!

そんな人生は、よくないぞ、
ということを崖が教えてくれるんです。
「お前は崖っぷちに立てるのか、
 その"しあわせ"で?」
と、問いかけてくるわけです。





厳しい問いかけですね。
「君子危うきに近寄らず」と言いますが、
崖に近づくと、ともすれば、
落ちてしまう恐れがありますから。




そうです。でもね、
人生は決して
落ちちゃいけない
んです。
落ちるということは、放棄することだと
僕は思うんですよ。



ギリギリのところまで行って
落ちそうになったら必死でしがみつく。
崖っぷちにはね、
とてもい〜い花が、咲いているんッスよ。
平穏無事な生活をしている人には決して見えない、
それはそれは、美しい花がね‥‥。
その花を摘んで、急いで逃げる。
崖っぷちとは、そういうふうに味わうものなんです。




悔いのないグットクリフを求めて、
この「恩返し」も続いております。
悔いのないよう、動画では
このシリーズ初の試みもやっております。
グーッとくるグーットクリフを、
みなさんも、ともに唄いましょう。
島国である日本を取り囲み、360度のあちこちから
「自分の限界に挑戦しているかい?」
「いい崖、出してるかい?」
と問いかけてくれる崖っぷちに、
みうらさんの42個めの恩返しでした。





松本清張さんの啓示により、
みうらさんのなかに急に起こった「崖っぷち」ブーム。
TBSのテレビ番組「はなまるマーケット」に出演した際に
「いい崖を探しています」と話したところ、
多くの反響があり、
その後同番組内で全国の「いい崖」を訪ねるツアーを決行、
その模様が放映された。
みうらじゅん、泉麻人、山田五郎、
安斎肇の4人の偉大な識者による
共著「日本崖っぷち大賞」をはじめとする、
崖をテーマにした書籍も出版。


崖っぷち
山や海岸などの、削ったように切り立った場所のふち。
「崖っぷちに立たされる」などという言い方で、
追いつめられた、あとのない状況のたとえにも用いられる。
海水の浸食によってくびれている崖は特に、
いつ崩れるかわからない恐怖を備えている。
実際の崖っぷち
および意味的な崖っぷちを訪ねるときは、 注意が必要。
崖に咲く美しい花を摘み終えたら、
すみやかに元に戻ることが鉄則。

グットクリフ
グッとくるクリフ(崖)のこと。
みうらさんのなかでは、
松本清張作『ゼロの焦点』でラストシーンとなったヤセの断崖が、
いまのところグットクリフのグランプリ。

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2005-09-06 TUE
(c) Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005