生前偉かった人も、耐え忍ぶ。 熾烈な毎日を送る銅像。



まず、街のなかで裸になっている人、という時点で、
銅像というものはおかしい、と気づくべきでした。







逆に言うと、銅像というカテゴリーのなかにいれば、
何を出していてもやっていける、ということですから、
「俺だって銅像なんだ!」と公言すれば
出してもいい、ということでしょう。
銅像の「どう」は堂々の「どう」ですから。
あんなにおもしろいものが
平気で街にいるこの社会がすごいですね。




銅像は、どうして
たいがい裸なんでしょうか。





裸だけでなく、
裸+サックス、
ブラウスいっちょう、
もちろんパンツいっちょうの方もいらっしゃいます。






裸の銅像が多すぎて、
パンツをはいているほうが
不自然のような気さえしますね。





そうなんです。
隠せば隠すほど目立つ、ということが
現実問題として、あります。
ですから、銅像は
「気になることは、みんな
 出していけばいいんじゃないかな?」
ということを
教えてくれているんだと思います。
裸でポーズを取る方だけじゃなく
楽器を持っておられる方もたくさんいて、
ほら、女子十二楽坊なんかも
結成できたりするわけです。






銅像は、ふだんはどこにおられるのでしょうか。





駅前または森のなかです。
駅前にあったかと思うと、
途中はゴソッと数が減って、
今度は森に侵入するまで出会えない。
それはなぜでしょうね。




住宅街に突然あっても困るとは思いますが。





さて、銅像といえば、
次に行くべきは蝋人形ですね、当然。
でも、蝋人形は「蝋像」とは呼ばれません。
蝋人形は銅像よりも忠実にできているため
リアリティがありすぎ、
ホラー度が出てしまっているんです。
一生懸命つくればつくるほど
気持ち悪がられるんです。
僕は、それはよくないと思って、
もっと親近感を出すために
蝋人形の肩に手を乗せてみたり
鼻の穴に指を突っ込んだりしてみました。









みうらさんは、像の、
いろんなことに貢献されていますね。




偉人ばかりですから、
生前はなかなかできない行為ですよ。
でも、こういうことは、
監視の目をかいくぐってでも、
やっていかなくちゃならないんです。
銅像や蝋人形は、
みなさんと
親しみやすいように、
という目的で存在するわけですから。





偉かった社長もハトのフン害に耐え白く染まり、
額に「肉」と書かれても、文句も言わずに
彼女と語らいつづける若者‥‥。








いじらしいでしょう、親しさを感じるでしょう。
でも、昨今は
銅像と人間のあいだに
溝ができてしまっていると僕は思うんですよ。
さ、ここでクイズです。
銅像の台座についている題名と
その銅像本体をランダムに並べたものがここにあります。



さ、「Mari」! 「Mari」はどの人でしょうか。




ええと、ええと。





わからないでしょう。
じゃ「慈しみ」は?




うー、わかりません。





ほら。「慈しみ」のような
簡単な問題まで解けなくなってしまっている。
これで、「銅像が、人と心を隔ててきているんだなぁ」
ということがわかります。
ですから僕は街へ出るとすぐに
銅像のいる場所へ足を向けるようにしています。




1体のヌードサックスの銅像をきっかけに、
めくるめく銅像界に足を踏み入れたみうらさん。
仏像、銅像、蝋人形、そしていつかは石像の世界まで
疾走していくみうらさんに、
私たちはいつの日か、
追いつくことができるのでしょうか。
恩返しも、あとひとつ。
残されたオーラスのネタに思いを馳せ、
みなさん、明日は必ずこのページを覗いてくださいね。
銅像よ、森を抜け出して、カムバックトゥ駅前!
みうらさんの49個めの恩返しでした。





銅像はおもに路上をはじめとする
野外に裸で立っていることが多く、
鳥のフンに見舞われたり、
落書きの標的になりやすい。


銅像
銅でつくった像。
駅前広場や緑豊かな公園にオブジェとして設置されていたり、
胸像として大会社の社屋前に偉人を生き写しにして立っていたりする。
楽器を持つ者、勢いよく回転する者、
ギョッとさせるようなポーズをとる者、
通行人そっちのけで話し込む者など、
目を向けてみるとじつに個性的な像が、
日本の空間を支配している現実に気づく。

ラストに近づいてきましたので
おたよりコーナー
ぼにちわ。
みうらじゅんさま、ほぼ日乗組員さま、
毎度お疲れさまです。
「じゅんの恩返し」が大好きな満28歳女子です。
はじめまして。
早速ですが‥‥‥‥‥‥
このコーナーが終わるなんて、絶対イヤです!!!!
この際地球博にこだわらず、
次の万博まで続けちゃうなんてどうですか?
バンパク produced by みうらじゅん!
とにかく、できる限りつづけてください。
ほんとにお願いします。
イエーッ!(みうら)
みなさまのあたたかい声がほんとにうれしいです。
泣けてきました。(ほぼ日)

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2005-09-21 WED
(c) Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005