布施 |
ここは、ハレポハクの図書室です。 |
田島 |
オレ、見たかったんですよ、こういうの!!
全部論文なんですね。
(英文の論文のページをすごい勢いで繰る番長)
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布施 |
これから自分で行なう研究が、
過去に研究されていないかどうかなど、
こういう論文で調べたりします。 |
田島 |
ああ、いまから天文学者に
なれないかなあ。
布施さんは理系の大学に
行っていたんですか? |
布施 |
ぼくはもともと国立天文台の大学院にいました。
でも、天文学というのはおもしろいもので、
かならずしも専門の勉強を
していなければならないか、
例えば、国文学や考古学専攻で
意味がないかというと、
そうじゃないこともあるんです。
例えば、あまり多くの人は
研究していませんけれども、
昔の天文の記録がたくさんあります。
「昼間でも明るく見える天体があった」
なんて古文書に書いてあったとして。 |
田島 |
ああ、それが例えば
超新星爆発で、
何年にあったかを調べる、と‥‥。 |
布施 |
そのとおりです。
そういった過去のことを研究するのは、
文系の分野ですね。
考古学で隕石を掘り出したりすることも
あるだろうし、
地質学者がクレーターを見つけて、
その原因を調べたり、時代を特定したり。
専攻や得意分野がどうであれ、
自分の方針さえ決まっていれば、
何かが天文学に結びつくんですよ。 |
田島 |
ほおー!
ぜんぶひっかかっていくんですね。
布施さんは、いろんな研究を
進めていらっしゃると思うんですけど、
そのアイデアって、
どんなところから出てくるんですか? |
布施 |
そうですねぇ‥‥。
自分で考えて「これを知りたい」と
思っても、文献を調べたらすでに
わかっていることだったりします。 |
田島 |
世界中、そんなことだらけでしょう? |
布施 |
みんな競争ですよ。
いまやっている自分の研究は、
共同研究者が台湾にいるんですけれども、
電話やメールでやりとりして
進行状況を連絡しあっています。 |
田島 |
問題意識をもって、
ターゲットを探すのって、たいへんですよね。
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布施 |
そうです。ま、そこがいちばん
たのしいんですけれども。
実際に観測するのは、
ほんとうに、一瞬なんですよ。 |
田島 |
観測は、音楽で言えば、
きっと歌を録音する部分かな。
最初に、作曲して、
どういうことをテーマとして歌ったらいいのかを
考える部分が
言ってみれば、僕らにとっての競争です。
それはまったく同じだな。
そこはたのしくもあり、たいへんでもあり。
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布施 |
オリジナリティを出して。 |
田島 |
観測方法も自分たちで
考えるんでしょう? |
布施 |
そうです。
すばるという、すばらしい道具は
あるわけですけれども。 |
田島 |
だって、系外惑星を発見する方法を
考えた人もさ。 |
布施 |
あれもほんとに見えたわけじゃなくて
動きで間接的にわかったんですよね。
みんな信じてなかったわけですよ。 |
田島 |
ノイズだったんじゃないかとか。 |
布施 |
そうそう。
そんな方法で見つけられるわけない、と
誰もが思っていたんです。
でも、あのグループは
人に何と言われようと、
自分たちでデータをためた。
ためたから「見えた」んです。
そこはオリジナリティですよね。
道具があって、見つけたいという目標があって、
アイデアがあって、努力があって。 |
── |
宇宙ばなしは、とどまるところを知りません。
まるでご学友かとすら思えてしまう
なかよしなふたりのようすを 動画でおたのしみください。
(↑こちらをクリックしていただくと、動画をごらんいただけます。)
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田島 |
ああ、星を見たかったなあ。
まだ晴れる可能性はあるかな?
きれいなんだろうな、頂上で見る星は。 |
布施 |
でも、ひとつ盲点がありまして、
頂上では平地の6割しか酸素がないわけです。
頭が正常に働いているかどうかが
最終的には問題です。
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田島 |
ハハハハハ!!
そっか、ボーッとしながら
見なきゃいけないんだ。 |
布施 |
視神経が、おそらく
100%は動いていないですからね。
空の状況がよいのが強いか、
頭がボーッとしているのが強いか、ですね。
ですから、このビジターセンターあたりのほうが
人間の機能からすれば、
はっきり見えるかもしれません。
すばる望遠鏡で観測をしているときも、
いちいち確認をしていないと、
「自分はこれをやっている」と思って
コンピュータを操作していても、
じつはちがうことをやっている、
ということが、なきにしもあらず、で。 |
田島 |
ハハハハ!
もう、宇宙船にいるみたいな状況ですね。
実際にここでも、こんなに「くる」んだって
びっくりしてますよ。 |
布施 |
しゃべっているだけでも
頭の酸素を使いますからね。 |
── |
ドキドキが止まらないし、
ちょっと動くだけで息切れがすごいです。 |
布施 |
それだけからだに
酸素をまわそうとしているんですよ。 |
田島 |
いつもできることができないんだよ。
革ジャンのチャックがひっかかったのが、
さっきからとれないんだよ!!! 12:30

↓ 15:30
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── |
3時間かけて、まだ取れないんですか。
危ないですね。
宇宙おしゃべりが盛り上がっているところ、
たいへん名残惜しいのですが、
そろそろビジターセンターに
戻らなくてはいけない時間です。
しかも、ちょっと日が差してきましたよ。
星空を拝める可能性があるのではないでしょうか。
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布施 |
しかし、さっき
上に観測しに行こうとしているチームに
訊いたところ、
今日はちょっと絶望的だ、ということでした。 |
田島 |
うーん。晴れ乞いの儀式、やろうか。
女神を味方につけてね。 ハレハレハーとか。 |
── |
怒りをかうとたいへんなんで、
番長、本気でお願いします。
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