西田 |
これは「死の天使」ドクツルタケです。
死亡例もある、猛毒のキノコですよ。
食べて一週間くらいで、肝臓を破壊します。

かわいい顔して怖いのです。 |
田島 |
マッシュルームに似てて、
まちがえそうですね。
‥‥ところで、いま、何時? |
── |
おそらくお昼過ぎ‥‥1時か2時
くらいでしょうか。 |
田島 |
なんかさ、雰囲気が夕方みたいじゃねぇ?
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── |
ここは、日暮れが思いっきり早そうですね。 |
田島 |
やばいな。 |
── |
やばいですね。 |
西田 |
これは、カバイロツルタケね。
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田島 |
マイペースですね、西田さん。 |
── |
本日の目玉であったホンシメジを採り終え、
意味のないような斜面が続き、
全員のテンションが、
人間として至極まっとうに下がりつつあるなかで、
西田さんだけは起伏がなく
ルンルンしていらっしゃるのです。 |
田島 |
きっと、根っからキノコが好きなんだ。
キノコが好きなんだ、キノコが。 |
── |
あ、また西田さんがニコニコしています。 |
西田 |
シモフリシメジを見つけましたよ。
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中山 |
じゃあ、よく見たほうがいい。
このへんは群生地ということだから。
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田島 |
よし、了解。
このあたりを一度に捜索だな。
踏まないように。
あ、これがそうかな? |
中山 |
それは、
ドングリだ。 |
── |
キノコ名人への道はほんとうに遠いです。
そろそろ帰路なタイミング‥‥と思っても、
車が駐車してあるところまでは果てしなく遠い、
ということは
全員が心底わかり切っています。
足取りは、何かをあきらめた昆虫のごとく
どんどん重くなっていきます。

こんなときに助けてくれるのはやっぱり、
そうです、西田さんです。 |
西田 |
いつも嫌になるとね、
僕は歌をうたうんです。 |
── |
え、どんな歌を‥‥?
山林にウラ声がこだまする。
どうぞ動画でお聴きください。
(↑こちらをクリックしていただくと、動画をごらんいただけます。)
|
田島 |
西田さん、すげえ人だな。 |
── |
ええ。なんだか、妖精さんみたいです。
昨日、キノコの森で妖精に会いたいなどと
我々はうそぶいていましたが、
キノコの妖精は、さしずめ西田さんだった、
ということになりますね。 |
田島 |
そうだな。

あたりいちめんに胸の高さの
ヘナヘナした細っこい木が
びっしり生えている地帯に到達しました。
この木、もしかして? |
── |
この一帯、ウルシらしいです! |
田島 |
さわったらまずいのかな! |
中山 |
いや、いまはかぶれない。 |
荒谷 |
春先だけ。
いつもならもうちょっと
紅葉しているんだけどね。 |
田島 |
そうなんだ‥‥すげえ、何でも知ってるな。 |
── |
ウルシと聞いただけで
都会もののひ弱さを露呈してしまいました。
あ、急激に視界が開けて‥‥ |
中山 |
もうすぐ、車のあるところだよ。 |
── |
たどりつきました。
おつかれさまです。 |
田島 |
ああああー!!

着いたぜ!
いやー、恥ずかしながら我々、
ようやく出口にたどり着きました。
予想以上にヤバい山でしたね。
ほんとに、どうやって道を覚えるんだろう? |
荒谷 |
起伏で覚えるしかないですね。
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田島 |
そうか。木で覚えても、
生え変わったりするから。 |
荒谷 |
ええ。それに、どうしても
似た風景が限りなく現れちゃったりするんで。 |
田島 |
発言ひとつひとつが、
やけに怖ええな。
ああ、車が見えた!
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── |
文明の利器、日本産業の大黒柱、
自動車を見て安堵の番長です。 |
田島 |
カッパもビリビリで、
すごい冒険をしてきたような
風貌になっていますが、
これは、キノコ狩りです。
中山さんによると、
これでもなだらかなコースらしく、
「ハイヒールでも入れる山」だそうです。
嘘ですぜったい。 |
── |
番長、収穫のほうは、どうですか。 |
田島 |
なかなかいいよ。
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荒谷
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うーん、今年は、ダメですね。 |
田島 |
これでもダメなんだって。
‥‥豊かなんですねぇ、山は。
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