■ニュース その1■
田島めぐりの旅。
第8回
なにもかもいつも型破り。
これから田島貴男番長がチャレンジするのは
田島万古焼(たじまばんこやき)
という陶芸です。
工房の名前は、勝三窯(かつぞうがま)。
入口にいるワンちゃんが
怪しい一行を吠えたてます。
不審者扱いもしかたないです。
今日お世話になります、
室井勝良先生です。
すみません、なんだか
わけのわからないことをお願いして‥‥
先生
「いいえ、ようこそ。
どうぞどうぞ」
田島万古焼は、
てびねりでつくる、この地方の、
歴史の古い焼きものなんだそうです。
雰囲気は常滑焼に似ています。
焼き時間をのぞいて
2時間ほどで成形できるそうですよ。
先生
「ふつうの焼きものは、素焼きしてから
うわぐすりをかけてもういちど焼くんですが
田島万古焼はうわぐすり等は一切使わないんです。
地元の粘土だけで焼きしめるんです」
使えば使うほどつやが出てくる、と
お知らせに書いてありました。
どんなものをつくりましょうか。
小皿とか、花瓶とか、
シンプルなものが
かんたんかと思いますが。
「悩むなあああ」
先生
「では、つくりたいものを
デッサンしてみましょう」
「どーーーーしよーかなーーー!!
なんか縄文ぽいものがいいんだよ。
あの、宇宙人みたいな顔してる
遮光器土器ってやつ」
(‥‥宇宙人? 縄文?)
あ、あの、サングラスかけた
土偶みたいなやつですか。
「うん。その、土偶のようなやつの、
どびんをつくりたいんだよ、どびん。
先生、どびんとか急須ってむずかしいでしょうか」
先生
「いや、できますよ」
「そっかー。
ちょっと描いてみますね。
んーー、むずかしいなあ」
(番長のデッサンに時間がかかるので、
工房内を見てまわるオレのニュースクルー)
番長、先生の作品、すばらしいですよ。
すごい細工です。
先生の大作。花びらがきれいです。
「うううううーーーー」
まずい。
さらに熟考に入ってしまいました。
(何かがちがう方向に
向かっているような気が‥‥)
番長。
このペースだとデッサンだけで
先生とのお約束の2時間を
費やしてしまいそうです。
このままですと、
日も暮れます、年も暮れます。
軽くかわいらしい小皿をつくるとか、
そういうことはできないのでしょうか、この人は!
「うーん、うーん、
こんなところかな」
できましたか! どれどれ、
見せてくださいよ。
「はい」
みなさま、
みなさま‥‥。
この絵を目にしたときの衝撃を
何とお伝えしたらいいのか、
もう正直、言葉がありません。
頭のどこかが限界を迎え、
ただただ、ニッコニコの番長を前に
数秒間凍りついた、
それだけでした。
「注ぐところを太〜くすることって
できますか?」
先生
「できますよ。
新聞を丸めて入れておけば
燃えちゃって空洞になるから。
小学生の作品なんかでも
バランスがとれないようなやつが
よくあるんですよ。
でも、できます。
そこに水が溜まって使いづらいけど」
使いづらいでしょうね。
「ッハハハハ! それに洗いづらいよね。
鼻とか、立体的にしたいんですよ」
先生
「できますできます」
「ふたから、花びらが
ビラビラ出てるみたいにしたいんですよ」
先生
「できますできます」
ほんとに?
ほんとにですか?
先生、やけになっていませんか‥‥。
心配そうにデッサンを見守る先生。
心なしか、ほほ笑みが?
ところで番長、この急須を
どのくらいの大きさにしますか?
「あんまり大きくっても、あれだな。
このくらい??」
しかし、言い方でわかります。
番長は、ほんとうはもっと大きくしたい、
そうに決まっています。
‥‥先生、大きいほうがつくりやすいですか。
先生
「そうだね、
鼻や目を立体的にくっつけるんだったら、
大きいほうがやりやすいと思います」
じゃあ、大きくする!
このくらい。
こんな大きな急須?
*
何もかも型破りな、この急須。
「型破り」という形容が、番長には似合います。
そのことをわかっていたはずなのに
悔しいくらいに忘れていました。
一連のようすを動画でごらんになりたいみなさんは、
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このあと、涙の出るような根気の要る作業を経て、
急須の完成は、次回です。
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