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糸井 |
次は、祖父江さんですね。
祖父江さんは、最初は工作舎という
ややこしいというか、特殊な会社に
はじめは勤めていたわけですけど・・・。 |
祖父江 |
そこにいた時は、ややこしいなんて
感じなかったんですがね・・・。 |
しり |
忙しすぎたんじゃない? |
糸井 |
働き者だったって話ですよね。 |
祖父江 |
働き者だったねぇ!! |
しり |
うん。 |
糸井 |
やっぱり、
しりあがりさんと祖父江さんは、
多摩美の漫研で一緒だったから、
おたがい知ってるんだ、そのことはもう。 |
しり |
そうです。 |
祖父江 |
ぼくは生まれてから、
あんまり、男と女について
考えたことがなかったんですよ。
だから、ちょうど
今日、いい機会だなぁと思って・・・。 |
糸井 |
あははは(笑)。
「ちょうどいい機会」! |
祖父江 |
男くさいっていっても、
別に筋肉とかではなさそうだし、
何だろうなぁって・・・ただ、もともと、
「男子っておもしろ味がないな」
とは、思ってたんですよ。 |
糸井 |
おお! |
祖父江 |
男子って、つまんないですよねぇ。
男社会の中にいたことって、あまりないんです。
大学の時に男子寮だった、
というくらいなんですよ。あとはだいたい、
男も女もいるようなところで生きてきたんです。
ただ、男子っていうか、
「男!」みたいな感じの男子って、なんか、
やってることが同じようなことばっかりなんです。
・・・「よく飽きないな」って感じでね。 |
糸井 |
(笑)うまいこと言うなぁ。 |
祖父江 |
大学の寮にいるのは全員男だったんだけれども、
毎日やることが必ずもう決まっていて、
ぼくの部屋は、麻雀を打つ部屋だったんですよ。 |
糸井 |
うんうん。 |
祖父江 |
それで、みんな食べてるものも
それぞれ好きなものが決まっていて、
この人はこれを必ず食べるし、
この時間にみんな集まるし、
同じことをやって、くりかえしの毎日で、
「ワーッと行って、ドーンとかやって、ワー!」
そういうような・・・。 |
田中 |
(笑) |
糸井 |
その通りだよ。 |
祖父江 |
飽きちゃってねえ。あんまり寮にいなかったよねえ。 |
糸井 |
その観察は、見事です。
たとえば、経済新聞片手に
赤鉛筆使ってる人でも、毎日で言うと、
同じことをくりかえしているわけですよね? |
柳瀬 |
そうです。毎日やってます。 |
糸井 |
で、毎日だいたい
同じような話をして、飲んだくれてますよねぇ。 |
柳瀬 |
ええ。「日本の経済について」とか。 |
田中 |
(笑) |
糸井 |
しりあがりさんが言ってた
Gメン75たちも、
お昼食べに行く時は毎日その姿だよ。
男からすると「・・・バレたか」っていう
すごい観察ですよねぇ。 |
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祖父江 |
だけど、工作舎の時に、男子のことを
「あ、かっこいいな」
って思ったことは、あるんです。
それは何かって言うと・・・
だいたい、女性社員って、
「ほどあい」を知ってるんですよ。
「もう疲れたから帰りたい」とか、
「それはちょっと無理です」とか・・・。
女子には、身体と仕事のバランスがあるんです。 |
糸井 |
うん。 |
祖父江 |
ただ、男は身体が壊れても
半分寝ながら原稿を書いているし、
靴の紐を結びながら睡眠してるし・・・。
とにかくね、やり過ぎるというか、
がんばっちゃうんですね。
で、がんばっていいかどうかは
わからないんですけど、
何かその夢中になるなり方っていうか、
とてつもなくハマッていくところが、
逆にかっこいいなぁと思いまして。 |
糸井 |
そこは肯定的にとらえることが
できたわけですか。 |
祖父江 |
うん。 |
糸井 |
自分もそうだったんですか? |
祖父江 |
自分も、そうでしたねえ。
なんか、やっていくとどんどん・・・。 |
糸井 |
もしかしたら、そういう祖父江さんを見て、
他の社員たちが祖父江さんのことを
「男っぽいなぁ」って見てたかもしれないですか? |
祖父江 |
あ、それはぜったいないんじゃないかなぁ。
女子と遊ぶのが、割と好きだったんですよ。
そのほうが、ラクなの。
男子と遊んでる時って、何か気負いと言うか、
「よしっ!」っていう気持ちが必要で・・・。
「この人とおつきあいするぞ」という・・・。 |
糸井 |
男とは、人間関係が「社会」ですよね。 |
祖父江 |
はい。社会。
男子とは、気楽にお話できないんですよね。 |
しり |
そうですね。
漫研でも、女の子といる時は
すごいキャーキャー話してるけど、
男といる時には敬語になってたりしなかった? |
祖父江 |
してたしてた。 |
糸井 |
(笑) |
祖父江 |
そういえば、しりあがりさんも、
「戦争」っていう
鉛筆立ててチョンチョンチョンってやるのが
すごく好きでねえ。
同じクラブだったんですけど、
部室に行く度に
「戦争やろう、戦争やろう」って言って、
みんなが「またかよ・・・」って。 |
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→ |
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「戦争」 |
田中 |
(笑) |
糸井 |
それも、過剰にやってたわけですね。 |
祖父江 |
過剰なんですよ、必ずそれなんです。
それ、きっと鍵じゃない? |
糸井 |
なるほどなぁ。
共通して確かに、
「過剰」っていうことについては
男像として、浮かび上がってくるね。 |
しり |
過剰っていうか、
女の人って「自分が大切」とか
「自分」っていうのをモロに出すけど、
男の場合は仕事とか会社とか、
漫画なら漫画に燃えるっていうような
大義名分がないと、
何か、かっこつかないような・・・。
「自分のために何かをする」っていうのは、
ちょっとダメみたいな気が起こっちゃってて。 |
糸井 |
それもキーワードですよね。
ぼくも確かに「男らしい」っていうのは
基本的には、ニガテなんですよ。
でも、虚構としてはすごく好きで・・・。
さっきのGメン75の画面みたいっていうのも、
俺は絶対に「おー!」って感動するんですよ。 |
田中 |
(笑) |
糸井 |
それに、スポーツも好きなんです。
そこのところで、過剰に男っていう
マッチョな世界をものすごく好きで、
泣いたりしてるわけ・・・でも、
自分の生活の中には、その要素がまったくない。
つまり、ポルノグラフィと同じように、
男像がファンタジーなんですよ。
勝新がおもしろいっていうのはわかるんだけど、
「ほんとは、そういうヤツは強くない」
っていうのを、同時にどこかで感じているわけです。
その「過剰の滑稽さ」を、
いつもたのしんでいるような気がするなぁ。 |
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(つづく) |