第9回
男の欠点はコレだ!
糸井 『じみへん』っていう中崎タツヤのマンガで、
こういうのが、あったんです。

まず、男が故郷に帰って、
おふくろと黙ってメシを食う場面が延々とつづく。
そこで男が訊くんです。
「おふくろ、何か考えたこととか、あるの?」
そうすると、おふくろが表情を変えずに、
「あるよ。寝る前にすこし」
・・・あれは、スゴイと思った!
しり (笑)あはははは。
糸井 女とか母とかが、
ぜんぶあの中に含まれている。
ぼく、かみさんに対しても、そう思うもん。
きっとあいつは
「寝る前にすこし」なんだろうなぁ、と。
田中 なるほど。
糸井 あるいは、ひとりでいる時だとか、
ともだちの話をきっかけにして、だとか。
男には、そういう大らかさはないよね。
柳瀬 (笑)ええ。
男は、もっとチマチマしてます。
糸井 祖父江さんは、
寝る前に少し派ですか、
それともチマチマずっと?
祖父江 チマチマです・・・。
「どうしたらたくさん寝る時間をとれるのか」
についてさえ、寝る前に、チマチマ考えてます。
糸井 (笑)殿山泰司の『日本女地図』という
文庫本の解説は、ぼくが書いてるんです。
なんで解説してるのかっていうのも、そもそも、
「あれは名作だから文庫で出すべきだ」
って言ったのがぼくだからなんですけど・・・。
柳瀬 あ、そうなんですか。
糸井 その解説の中に、
「男の悪いところは、
 考えることとやりたがることだ」

って書いたんです。
柳瀬 (笑)あはははは。
糸井 つまり、女は、
考えたがっても、やりたがっても、
いないんですよ・・・。
田中 ああ・・・。(笑)
糸井 この二つの大欠点があるおかげで、
男はほとんどの失敗をしてるんですよね。
「やりたがりさえしなければ、
 あんなトラブルにはならなかったのになぁ」
「考えたがらなければ終わってたのに」
そんなことが、男には、よくある・・・。
このふたつは、神から授かったくらい、
真理だと思ったんですよ。

『日本女地図』って哀しいんですよ。
どこの女はこうだとか、
「千葉の女は乳しぼり」
だとか、県別に書いてあるんだから。
田中 (笑)
糸井 やっぱり、男は、
考えるからそういうことを書くんだよ。

じゃあ、考えすぎたり
やりたがらなければいいのかなぁ。
・・・「ガマンしてる」ってどうですか?
けっこう、かっこよくないですか。
しり (笑)かっこいいと思いますねえ。
最近、ガマンないですもんね。
ガマンしないほうがいい、みたいな。
祖父江 あんまり感情が男から出て来ると、
みっともないですよね。
糸井 (笑)そうですよね。
祖父江さん、意外とこういうこと言うんだよ。
むずかしいことを・・・。
しり (笑)
祖父江 女性から見た「いい女」っていうのは、
また、男性から見たのと違いますよねえ。
糸井 女性が言う「いい女」って、基本的には、
男性性の強い人のことを誉めていませんか?
祖父江 そうですかねえ。
糸井 そんな気がするだけなのかなぁ。
すごくオンナオンナしてる人って、
だいたい、キラわれますよねえ。
祖父江 あ、そうかも。
「フェロモンで〜っす」
っていう人は、ちょっと・・・。
糸井 叶姉妹くらいになると、
あれは過剰であるっていう意味では男ですよね。
しり (笑)あははは。
柳瀬 セクシャリティが攻撃型になるから。
糸井 オトコ性って、過剰性ですか?
柳瀬 どうなんだろう。
祖父江 どこ行くか分からないような、ねえ。
糸井 松田聖子がブリッ子だと批判を浴びても、
ブリッ子性が過剰だったりすると、
女の人の人気って下がんないですよねえ・・・。
祖父江 もしかして、過剰に憧れるのかしら?
・・・『過剰(課長)島耕作』って・・・。
糸井 (笑)あはははは。
祖父江さん、案外ダジャレ好きなんですよ。
祖父江 ぶちこわしでしたね・・・。
しり (笑)
糸井 過剰と言えば、しりあがりさん、
Gメンの姿みたいな「男」は懐かしいですか?
しり ちょっと懐かしいなと思うことありますね。
あの、そのモデルがあって簡単だったみたいなね。
もしかしたら、ちょっと肯定的かもしれない。

複雑な事情とかキモチとかを飲みこんで、
「オレはこれでいく!」と
どっかに力入れてるような、そういう美意識は、
ちょっと、残っているかもしれません。

糸井 ぼくがスポーツに惹かれるのと近いね。
「価値のルールを簡単にしてくれよ」
ってことなんですよね?
しり うん。
糸井 早い話、遠くまでタマを飛ばす人がスゴイとか、
足の速い人がスゴイとか、スポーツって、
日常生活の複雑さに耐えられなくて見るんだよね。
柳瀬 (笑)それはありますねぇ。
しり 日常生活は、入る点数が多すぎるんですよ。
柳瀬 ふつうの暮らしでは、
何が点数なのかもよく見えないし・・・。
昔はお父さんもいばっていればよかったけど、
今はいばると娘は出ていくわけで。
  (つづく) 

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2003-03-07-FRI


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