BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第41回 オトナ語発展編:その4 ■■■

いや、もう、ほんとうに、心底思う。
ビジネスマンの頭が固いなんて、うそっぱちだぜ。

出題しておきながらなんだけれども、
今回の問題は、そうとう難しいだろうと思っていた。
「男女の別れ編」でかなりの投稿があったとはいえ、
あまりに回答の拠り所がなさすぎるからである。

けれども、寄せられた投稿のクオリティーたるや
驚くほどに高かった。
率直にいって、メールが届くたびにげらげら笑った。

あ、ご挨拶が遅れました。
全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。
まずはその難題を振り返ってみよう。


  実践問題その17 

 
『桃太郎』や『かぐや姫』といった、
 古くから伝わる「むかしばなし」の一場面を
 オトナ語を使って自由に演出してください。
 どのお話を選ぶかも、センスの見せどころ。
 もちろん、有名なお話であれば、
 日本のものでなくてもかまいませんよー。
 誰もが知っているような場面をモチーフにして、 
 コンパクトにまとめてくださいねー。
 (もとになったお話の題名を添えてください)
   

こんな問題出されても、途方に暮れるのがふつうだと思う。
たしかに投稿数はいつもより少なかった。
けれど、届いた投稿の出来映えは、
見事というほかなかった。
本日は、その傑作選をお届けする。
まず最初は『桃太郎』の有名な一場面より。
桃太郎に向かって猿がなにやら言っているようです。

『桃太郎』
猿  「お世話になります。
    唐突なお話で申し訳ございませんが、
    お腰のきびだんごにあたるものを頂戴する、
    というわけには参りませんでしょうか」
桃太郎「こちらこそお世話になります。
    ええ、ええ。かまいません。
    ただ、一点、ご説明申し上げておいたほうが
    スムーズかと存じますが、
    こちらのきびだんごに関しましては、
    当方で今後視野に入れております、
    鬼退治という極秘プロジェクトの
    プロセスにおいて活用したいと考えております」
きじ 「と、おっしゃいますと?」
桃太郎「ええ、端的に申し上げますと、
    プロジェクト参加に対するフィーと、
    お考えいただいてよろしいかと存じます」
犬  「横から失礼いたします。
    それは、退治完了時点での成功フィー、
    とかんがえたほうがよろしいのでしょうか?」
桃太郎「ご質問ありがとうございます。
    いえ、このプロジェクトに関しましては、
    かなり時間的労力や物理的リスクが
    見込まれますので、
    参加時点でのフィーと考えております」
猿  「つっこんだ質問で恐縮ですが、
    成功した折には、
    きびだんごとは別途のフィーが
    発生する可能性もある、ということでしょうか」
桃太郎「そう考えていただいて結構です」
きじ 「生々しい話で恐縮ですが、
    具体的にはどのようなものが
    見えてきますでしょうか」
桃太郎「現時点ではなかなか見えにくいのが実情ですが、
    手前どもの古い人間にききましたところ、
    鬼が島には、かなり金銭的価値のある
    資産が存在するということでして、
    また、その資産は法律的には
    どこにも属さずフリー案件ということですので、
    確約はできないものの、
    そのあたりの現物支給などが
    フィーとして考えられると思います。
    あ、この件は、
    くれぐれもオフレコでお願いいたします」
猿犬きじ「了解です」
(提供者:むらい)

■いや、もう、参ったよ、降参だよ。
 「鬼退治という極秘プロジェクトのプロセス」って。
 きじが「と、おっしゃいますと?」って。
 犬が「横から失礼いたします」って。
 猿が「きびだんごとは別途のフィー」って。
 おじいさん、おばあさんを指して
 「手前どもの古い人間」って。
 もう、おもしろすぎなんだけど、
 その一方で、犬と猿ときじが
 桃太郎に向かってプレゼンしているという
 投稿も来ているわけですよ。これです。

『桃太郎』
犬「え~、ももたろう様。
  本日は、私どもに提案の機会を賜り、
  誠にありがとうございます。
  早速、今回のゴブリンズ・アイランド・キャンペーン、
  略してGIキャンペーンに対する、
  私どもからの提案を説明させて頂きます。
  今回のテーマは、鬼退治とお伺いしておりますが、
  これは換言すれば鬼を対象にした狩猟と定義されます。
  そこで、狩猟と言えば、
  欠かせないのが、犬ということで、
  まずこの私イヌがお供させて頂こうと考えました。
  次が横におりますサルでございます。
  イヌにサルというのは、
  一見奇異に感じられるかもしれませんが、
  そこが手前どもの狙いになっています。
  実は、サルというのは、女性誌のアンケートで、
  敵に回したくない動物の密林部門で
  堂々の2位に入っております。
  僅差でワニが1位でしたが、
  3位のピラニアには大差をつけています。
  その魅力は、何と言っても卓越した知恵にあります。
  必ずや、ももたろう様の貴重な戦力になれるものと、
  確信致しております。
  最後が、今回の一番の目玉、キジであります。
  私どもの提案のキモと言っても過言ではありません。
  ももたろう様が戦略を立案される際に、
  キジによる空中からの情報収集力が、
  間違いなくお役に立ちます。
  ぜひ、イヌ、サル、キジの3名を、
  今回プロジェクトにご採用賜りますよう
  お願い申し上げまして、
  私どもからの提案にかえさせて頂きます。
  本日は誠にありがとうございました」
(提供者:はっさん)

■も、もう、なにがなんだか。
 かと思うとね、川から拾ってきた桃を前にして、
 おじいさんとおばあさんが議論してるんだよ。

『桃太郎』
おばあさん「手前味噌に過ぎるかもしれませんが、
      かように大きな桃を入手できましたのも、
      やはり毎日かかさず
      川に洗濯に行っていればこそ、と考えます」
おじいさん「あなたの実力のほどは
      十分、評価しております。
      ですが、やはり桃の本当の価値というのは、
      大きさうんぬんよりも、
      味にこそあるということは
      申し上げるまでもないでしょう」
おばあさん「もちろん、その点を
      なおざりにするわけではなく、
      味についても、この色、つや、匂いから
      十分期待できる、と踏んでおります」
おじいさん「とにかく、早急に、食してみないことには、
      まだ議論のスタート地点にも
      たっていないのではないでしょうか?」
おばあさん「言われるまでもありません、
      とにかく割ってみます」
桃太郎  「ほぎゃー」
おじいさん「これは、
      どう解釈すればよろしいのでしょうか?」
おばあさん「まったく予想外の事態と言わざるを得ません。
      早急に帰社し、本部長の渡辺と
      緊急対策会議を開催いたします」
(提供者:Inu)

■は、腹が痛い。なんだこりゃ。
「早急に帰社」って、どこ行くんだよ。
 読み返してみてもおかしい。
 桃太郎の「ほぎゃー」がなぜかおかしい。
 そんでもって、こんなものまで届いてます。

『桃太郎』
Memo & Minutes
To:桃太郎渉外部長
From:渉外部 猿 Date:2003.9.2(火)
Subject: 鬼が島(株)との
     金銀財宝に関する事業提携について
Date & Time : 2003.8.29(金) 14:00 -16:00
Place: 鬼が島(株)会議室
Member : 鬼が島(株)
  赤鬼金銀財宝事業本部長、
  青鬼金銀財宝事業推進室主査
当社渉外部
  桃太郎部長、犬主査、雉主任、猿
経緯:
・数度に亘り鬼が島(株)(以下O社)が来社し、
 当社との金銀財宝に関する事業提携の提案がなされた。
・その際、当社よりO社に対し、
 当社の金銀財宝のサンプルを提供した。
・O社に対し、当社として金銀財宝に関して
 事業提携できない旨およびサンプルの返還を求める旨の
 意思表示を行うべく、O社を訪問した。
結論:
・両社は金銀財宝に関する事業提携を
 行わないことに基本的に合意した。
・両社は、当社がO社に提供した当社の
 金銀財宝のサンプルをO社が返還することに
 合意した(当日受領済み)。
・ただし両社は、引き続き友好関係を
 維持することに合意した。
・9月の1日の週中にO社が当日の議事録を作成する。
以上
配布先:おじいさん常務、おばあさん取締役
(提供者:JM)

■わーーー、議事録だ、議事録だ!!
 赤鬼と青鬼がやってきて、宝物に関して、
 桃太郎と犬とキジと猿と話し合ったんだ。
 けっきょく物別れに終わったんだ。
 それをおじいさんとおばあさんに報告してるんだ。
 ……もう、発展型が来てるわけか。すげー。
 あ、もちろん、『桃太郎』以外も来てますよ。

『かぐや姫』
~かぐや姫が求婚する皇子たちに
 無理難題を突きつけるシーン~
姫「今回のコンペへのご参加、誠にありがとうございます。
  どのプレゼンも非常に甲乙つけがたく、
  上でも意見が分かれてしまいましたので、
  再度のプレゼンにてよーいドンで仕切りなおし、
  つまり話をフラットにした状態で
  それぞれにテーマを設け、
  最終段階のすり合わせを行なってゆければ、
  ということで。
  えー、そのテーマは佛の御石の鉢、
  蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、龍の頸の玉、燕の子安貝、
  以上となっております。
  テーマがテーマだけに明確な納期は申し上げません。
  ですが、ASAP、とだけ申しておきましょうか。
  では、それぞれ独自のカラーを生かしたものを
  期待しておりますので、
  よろしくお願いいたします!」
(提供者:ユキ)

■よろしくお願いします、じゃねえだろ、姫!
 まあ、たしかに実際の姫もムチャ言ってんだけどさ。
 もちろん、海外の物語からも来てますよー。

『七匹のこやぎ』
トン、トン、トン。
子ヤギ達「どちらさまでしょうか」
オオカミ「私、母と申します。
     扉を開けていただけないでしょうか」
子ヤギ達「あの、失礼とは存じますが、
     どちらの母さまでしょうか」
オオカミ「当家の、ということでご了解頂ければ幸いです」
子ヤギ達「左様でございますか。然しながら当家の母は
     いま少し高い声を持っております。
     そちら様の声とは
     少々異なるようにお見受けいたします。
     もしや、オオカミさまでは
     いらっしゃいませんか?」
オオカミ「その件に関しまして
     私から申し上げることは何もございません」
子ヤギ達「はあ。実を申しますと、当家の母から、
     近々にオオカミさまが
     いらっしゃるかもしれない旨、
     申し受けております。
     諸般の事情により残念ながら
     オオカミさまを当家にお迎えすることは
     大変難しいこととなっております。
     そのあたりお察しいただけると嬉しく思います」
オオカミ「なるほど。
     当方も声に関しては失念しておりました。
     ではこの場はこれで失礼させていただきます。
     また後ほど改めて参上いたしたく思いますので
     よろしくお願いいたします」
(提供者:ぬばたまの)

■ひ~ひ~、もー勘弁してくれ~。
 「当方も声に関しては失念しておりました」
 じゃないだろうよ。「改めて参上」するって
 言っちゃダメだろうよ、オオカミさん!
 そして、つぎもいろんな意味でぶっ飛んでいる。

『おお、ブレネリ』
~異種業種交流会にて~
男「あっ、ブレネリさん。こんばんは」
女「あ、どうも、こんばんは。
  いつもお世話になっております」
男「ブレネリさんは、どちらにお住まいですか」
女「私、スイッスランドに住んでいるんですよ」
男「ああ、いいところにお住まいですね~」
女「実家なんですけどね。
  ウサギ小屋みたいな家なんですけど、
  綺麗な湖のほとりなところだけが、取り柄で」
男「いやー、ブレネリさんって、お嬢様なんですねぇ」
女「いえ、いえ、そんなことないんですよ」
男「ところで、ブレネリさん、
  ご職業はなにをされているんですか」
女「いまどき、ちょっと、アレなんですけど、
  羊飼いなんですよ。」
男「あ、羊飼いをされているんですか。
  ブレネリさんって、お嬢様に見えて、
  意外にガテン系なんですね。
  外回りも多いでしょうから、色々、大変でしょう」
女「いえ、私、これでも、結構、
  体力はある方なんで、大丈夫なんですよ。
  仕事としても、好きですし。
  でも、狼出るのが、ちょっと、恐いですね」
(提供者:みけ)

■ていうか、昔話じゃないじゃん!
 童謡だろ、これ! おもしろいからよし!

というわけで、まだまだおもしろいのがあるんですが、
今回の掲載は、あえてここまでにします!
と、いうのも、ですね……。


  実践問題その18 

 
つぎの問題は、実践問題17と同じ!
 昔話「など」を、自由にオトナ語でアレンジ!
 日本の昔話だろうと、海外のおとぎ話だろうと、
 童謡だろうと、民謡だろうと、JPOPだろうと、
 俳句だろうと、小説だろうと、なんでもOK!
 いちおう、原題だけ添えてください。
 もう、好きにしてくれー。
   

いまのところ、『浦島太郎』『鶴の恩返し』
『したきりすずめ』などが来てますよー。
とくに、『浦島太郎』の後日談が最高なんですけど、
そのへんは次回に掲載!
ぜひ、いっしょに遊びましょう。
初投稿の人も増えてきてますよー。
カモンジョイナス。

この実践問題の受付は終了いたしました。
 たくさんの投稿、ありがとうございました!


■■■ オトナの基本用語 ■■■

基本用語のほうも、これまでどおり募集します。
あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語基本」としてください。
「これはもう出てたっけ?」というものでも
気にせず自由に気軽にメールしてください!
ちなみにネタの説明文は
こちらで書き起こしておりますので、
適当に書いていただくだけでかまいません。

■■■ アシスタントより ■■■

オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-09-03-WED

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