BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第52回 オトナ語専門用語編:その2 ■■■

前シリーズの「発展編」が
あまりにも奔放で、自由で、抱腹絶倒だったため、
今回募集した「専門用語編」は
いくぶん落ち着いたトーンになるかと思われた。
我々としては、どちらかというと、
ほほお、ふむふむ、と、
感心できる読み物に仕上げていこうかと考えていた。

ところがどうしてどうして。

やはり、全国のオフィスでがんばる
諸先輩方の発想は豊かであった。
その非凡なる傑作の数々をいきなりお届けしていこう。
まずは、新シリーズのテーマをおさらいします。

 オトナ語専門用語編テーマ 

お勤めする職場、業界に、特有の言葉はありませんか?
そこでは当たり前のように使われているものの
一般社会では絶対に通用しない言葉はありませんか?
そのような言葉を、現代語訳とともに紹介します。
身のまわりにある
「冷静に考えたらなんだこりゃ?」な言葉を
どしどしお送りください!


さあ、栄えある第1回目の掲載です!
いわば新シリーズの開幕です!
景気よくいきましょう! 華々しくいきましょう!
おめでとう、ありがとう!
最初の専門用語はこちらの作品です!

【葬祭業界:上司への報告】
「ビキ絡みで一日延びて
 明後日の12時出しになりました。
 オカマもOKです。
 崩したらそのまま七日に付いて、
 終わり次第次の飾りに向かいます」

▼現代語訳▼
「友引の日はお葬式が行えないので、
 日程を一日延ばして明後日の12時に出棺します。
 火葬炉の方も予約済みです。
 お葬式後に祭壇を撤去しましたら
 引き続き行われる初七日法要に立ち会って、
 終了次第次のお葬式の会場に移動して
 祭壇の設営を行います」
(提供者:もず)

■いきなり、縁起わるいわッ!
 と、お約束でまずは突っ込ませてもらいました。
 いえいえ、もちろん職業上のことですから
 縁起が悪いもくそもありません。
 にしても、興味深い業界の専門用語である。
 葬式延期の理由は「ビキ絡み」。
 うーん、オトナの言い回しだなあ。
 火葬炉を「オカマ」というのも興味深いが
 そもそも「火葬炉」という言葉が未知である。
 祭壇が「飾り」で、祭壇の撤去が「崩す」。
 いや、マジでためになるわ。
 実生活に役立つかどうかは別にして。


【法律業界:弁護士と秘書の会話】
秘書 「今年は、いそ弁とりますか?」
弁護士「うーん。ヤメケン紹介されたんだけど、
    どう思う?」
秘書 「民事もやっていただけるなら
    よろしいかと‥‥」

▼現代語訳▼
秘書 「今年は勤務弁護士を新規採用しますか?」
弁護士「検察官をやめて弁護士登録した人を
    紹介されたんだけど、どう思う?」
秘書 「民事事件も担当していただけるなら
    よろしいかと‥‥」
注釈:
いそ弁>「居候弁護士」の省略形で、
    やがて独立することを前提として
    「ボス弁」のところに数年間勤務する
    弁護士のことをいいます。
(提供者:すー)

■もしも電車のなかでこういった会話を
 たまたま小耳に挟んだならば、
 「お昼は弁当とりますか?」
 「あそこの弁当屋の兄ちゃん、
  意外にイケメンなんだよなー」
 という会話だと勘違いしてしまいそうである。
 堅苦しい書類をやり取りする職業においても
 平素の会話は略語だらけなのが興味深い。


【飲食店:店員への指示など】
「えーと、ウェイティングおあと4-2-2です。
 ウェイドリ8お願いしまぁす。
 で、小泉ちゃん小泉ちゃん。
 T2とT5、下げでアフター解除。
 そのあと、これハリでよろしくね」

▼現代語訳▼
「店長、お待ちのお客様が
 4名様、2名様、2名様いらっしゃいます。
 お待たせ用のドリンク、全部で8個お願いします。
 あのすみません、小泉さん。
 テーブル2卓と5卓、
 メインのお食事終えられたようなので、
 デザート、出してもらえますか?
 そのあと、このオーダー、
 急ぎでキッチンに通してください」
(提供者:satoko)

■各店舗によって用語は異なるのだろうけれど、
 「おあと」あたりは共通専門用語か。
 「アフター解除」の「解除」が興味深いな。
 たぶん、お客さんがメインを食べ終えるまで
 「デザートはまだ出すな」という
 意味合いの決まり事があって、
 それを「解除」せよ、ということなんだろうな。
 学べよ学生、バイト先で、オトナ語を。


【内装設計業界:先輩と後輩の会話】
後輩「ここのタイルは馬、芋どっち?」
先輩「馬で」
後輩「これ‥‥アタリでいいですか?」
先輩「とりあえずいいよ」

▼現代語訳▼
後輩「ここの床の仕上げタイルの貼り方なんですけど、
   目地を一段ごとにくい違えて貼るのと
   (外壁のレンガ貼りなどでよく見られる)、
   目地をそろえるのと、どっちにします?」
先輩「目地を一段ごとに食い違えて貼りましょう」
後輩「現況図面のここの寸法がぬけてるんですけど
   縮尺定規で計った数字でいいですか?」
先輩「とりあえずそれでプランをすすめてください。
   あとは現場合わせでいくから。
   もしくは、施工屋が近々に現場実測して
   フィードバックしてくるでしょう」
(提供者:ちまちま)

■「馬」! 「芋」! なんだそりゃ!
 「アタリ」ってのは、業界によって
 意味がいろいろと変わりそうな言葉だなあ。
 ちなみに投稿者が先輩に
 「馬」と「芋」の語源を訊いたところ
 納得のいく説明は返ってこなかったとのこと。


【映像業界:本編集前の打ち合わせにて】
A「明日さ、OLのオシリ、ちょっといじっていいかな?」
B「全然オッケーです」

▼現代語訳▼
A「明日の編集で、オーバーラップしているカットの
  後半を修正してよろしいですか?」
B「もちろんかまいません」
(提供者:し)

■んまあ、なんてふしだらな!
 OLのオシリをいじる相談をするなんて!
 などと周囲の者が眉をひそめそうなやり取り。
 「冷静に考えるとこりゃ変だ!」の見本ですね。


【不動産業界:先輩と後輩の会話】
女性先輩A
「あ、来週ね、これ、JJに載せるから」
新人
「‥‥‥‥!」
男性先輩B
「おまえさ、勉強の為にJJだけは目を通しておけよ」
新人
「‥‥‥‥!」

▼現代語訳▼
女性先輩A
「この担当物件を、来週の住宅情報に載せます」
新人
「(ファッション雑誌に掲載?)」
男性先輩B
「他者物件と営業トークの勉強のために
 住宅情報は読んでおくようにしてください。
 昨今のお客様は知識が豊富ですから」
新人
「(ファッション雑誌を読んでおけ?)」
(提供者:きゃお)

■つまり、不動産業界で「JJ」といえば
 ファッション雑誌の「JJ」ではなく
 「住宅情報」を指すのである。
 なかには、ほんとに「JJ」を買ってしまった
 新人もいたそうである。やむなし。


【バイオ研究業界:後輩を怒る先輩】
「コンタミしたって? どんな風に?
 菌があぐった? 違うよ、お前振り過ぎなんだよ。
 コンタミじゃないよ、さちゅってんだよ!
 もっかいシングル拾ってO/Nで振り直せ~!
 大体朝イチでラボに来ないからこうなるんだよ!」

▼現代語訳▼
「培養している菌に他の菌が混入したと
 おっしゃるのですか? どの様に? 
 培養している菌が固まりになってしまった?
 それは他の菌が混入したわけではなく、
 あなたが振とう培養をやり過ぎて、
 菌が限界まで増えてしまったせいですね。
 もう一度寒天プレートから単一の菌株を採って、
 一晩かけて振とう培養で菌を増やし直しましょう。
 そもそも朝から研究室に来ないから
 こういう事になるんですよ」
注釈:
コンタミ >contamination。混入、汚染。
あぐる  >aggregateする。凝集する。
振とう培養>液体培地に細菌を植えつけて、
      ばしゃばしゃ振って培養する事です。
さちゅる >saturateする。飽和する。
O/N    >オー、バー、ナイト と発音します。
      over night の意味です。
      実験ノートにもこのように表記しています。
(提供者:かずら)

■うははははは、わけわからんが大爆笑だ。
 注釈まで丁寧にありがとうございます!
 「お前振り過ぎなんだよ。
  コンタミじゃないよ、さちゅってんだよ!」
 あたりの、専門用語駆使で怒ってるあたりが
 とくにおかしい。いろんな業界があるもんだなあ。
 「大体朝イチで来ないから‥‥」のあたりは
 どの職場でも共通であろう。
 ちなみにこのへんの言葉は、やはりテキストなどなく、
 新人はひたすら現場で学ぶことになるのだとか。
 お疲れさまです、ほんとうに。


【財務監査業界:指示】
「MPは、CYはリベニュー使って、
 インテリムでテスコンやって
 アールはローでお願いします」

▼現代語訳▼
「重要性のある金額は、
 本年度は売り上げを使って算出してください。
 中間監査期間で内部統制のテストを実施し、
 (問題がなければ)R(リスクファクター)を
 低い数値で算出してください。お願いします」
(提供者:しゃおめい)

■なにがなんだかわからんわい!
 現代語訳とつき合わせてみても、
 なにがなんだかわからんわい!
 就職活動中の若人たちよ、
 学校で学ぶことはほんの一部なのだということを
 キモに銘じたまえよ。


【コンピュータソフトウェア業界
 :プログラマーへの指示】

「親が死ぬ前に子供を全部殺せ」

▼現代語訳▼
「親(メイン)プロセス(プログラム)を終了させる前に、
 親プロセスが起動した子プロセスを
 全部終了させなさい」
(提供者:マーマー・ヨ)

■んまあ、なんて物騒な!
 などと思われるに違いないので、
 公共の場でそのような専門的な会話をしないように。

というわけで今後どんどんと紹介していきますよー。
みなさんの身のまわりのおかしな専門用語、
気楽にお送りください!

 募集中! オトナ語専門用語 

お勤めする職場、業界に、特有の言葉はありませんか?
そこでは当たり前のように使われているものの
一般社会では絶対に通用しない言葉はありませんか?
そのような言葉を、現代語訳とともに紹介します。
以下のフォーマットを参考にして、身のまわりにある
「冷静に考えたらなんだこりゃ?」な言葉を
どしどしお送りください!

~投稿例~
【出版業界:上司の机にて】
「この写真、眠いからピン来てるやつに差し替えて。
 キャプはトルツメして、
 キャッチだけキンアカにしとこうか。
 戻し、いつ? 今日マジケツ? 引っ張れよぉ」

▼現代語訳▼
「この少しぼけた写真をピントの合ったものに変更し、
 写真の下に添えた文章は削除して、
 見出しの文字を『マゼンタ100パーセント、
 イエロー100パーセント』にしましょう。
 印刷所に校正を届ける締切はいつですか?
 今日が絶対的な締切だというのはほんとうですか?
 印刷所と交渉して締切を延ばしてもらいましょう」
(提供者:ソフト)


あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語専門」としてください。
よろしくお願いいたします!!


■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■

こんにちは、関西生まれの美人アシスタントです。
こちらはオフィスからの自由なメールを
募集、掲載していくコーナーです。
本日はロンドンからの投稿を、ご紹介いたしますね!



私、ロンドンに暮らしております。
いつも、懐かしい気持ちになりながら爆笑しております。

この国に暮らしていると、
「おいおい、ちみたちにはオトナ語っつーもんが
 ないのかね、味気ねーなっ」
と思うことが度々あります。

例えばですね、
朝っぱらから郵便配達がやってくるわけですが、
たまにインターフォンがブッブーッ鳴るんですよ。

「すいませーん、お荷物のお届けにあがったんですが~、
 お客様のお荷物がちょっと大きいようで、
 ポストにはいらないんですよぅ。
 申しわけないんですけど、
 表玄関の方ちょっと開けていただけませんかねぇ、
 すいませーん、お手数かけます。
 ええ、朝早くにすいませんですぅ~。
 入り口のところに置いてきますんで、
 よろしくどうぞ~!」

くらいのことは期待しちゃうわけですよ。
期待しちゃうんですが、
ブッブーッって呼び出された後、
「ポストマン」の一言‥‥。
ポストマンだから、なんだ? 用件は何だ??
「今開けますから~」とか言ってるうちに、
ボンっと荷物が投げ入れられる音がした後、
無言で去って行きます。
青と白のシマシマのおにーちゃんが懐かしいです。
(提供者:うさっち in London)

おうおうおう、そらぁさみしいよなあ。
あんまりにもさらっとしすぎやんけ、ロンドンの郵便屋。
ちょっと鼻高い思てイキってたらあかんで。
フィッシュ&チップスまずいっちゅーねん。
荷物も真心も一緒に運んだらんかい。
うさっち、がんばりや。
‥‥コホン、みなさまからのメール、
お待ちしております! ほななー。


オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-09-29-MON

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