その1 ぼくには、書けませんでした。
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「よりみちパン!セ」の、うみの親(つまりは編集者)、
理論社の清水檀さんから糸井重里に、
このシリーズへの執筆依頼があったのは、
3年前のことでした。
糸井は、このシリーズで本を書くことを、断りました。
そのあたりから、ふたりの話はスタートします。
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糸井 |
このシリーズがはじまろうとするときのことを
ぼくはよく憶えています。
こうやってすばらしいシリーズになったことは、
えらい、えらい。えらいですよ。 |
清水 |
いちばんはじめの段階で、
糸井さんには執筆をお願いしたんです。
でも、「無理です」とおっしゃっていましたね。 |
糸井 |
無理です!
ぼくには無理だ、ということと同時に、
この企画そのものが無理かもしれない、
という思いもありました。
たぶん「そうとうむずかしいですよ」というお話を
当時、したと思います。 |
清水 |
はい、よく憶えています。
あまり気にしないようにしましたけれど(笑)。 |
糸井 |
13歳あたりの年代に向けたような、こういう企画は、
みんながやりたいにきまっているんです。
でも、みんながやりたいと思っていることは、
じつはちょっとちがっている、ということも、
また、みんながわかっている。
たとえば、百科事典をつくるような発想をしちゃったら、
うまくできっこない。
むずかしい、やった人はいない、
清水さんたちには、それが、できたんです。
だから、ほんとうにえらいと思う。 |
清水 |
執筆依頼に行っても
すぐに「はいはい、やりますよ、できますよ」と
おっしゃる著者は、まずいませんでした。 |
糸井 |
うん、そうだと思う。 |
清水 |
とても興味を持ってはくださるのですが、
「すこし考えてみます」と、みなさんがおっしゃいます。
でも、そういう著者にこそ書いてほしかったんです。
で、引き受けてくださってからも、
まずは、つっかえつっかえです。
考えて、考えて、
考えが一周してから、やっと書けるそうなんです。 |
糸井 |
そうでしょうね。 |
清水 |
たとえ得意なテーマであっても、
文体を含めた内容はもちろん、
「考えすぎる」ことを
まずはやらなくてはいけなくて、
それまでに時間がすごくかかってしまう、と。
きっと糸井さんは
その時間までお読みになっていたんでしょうけれども。
(ふたりのはなしは、つづきます)
2006-01-10-WED
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