よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。




今日の、ひとことパン!セ

「死んだあともその人が、
宇宙(うちゆう)のどこか、
人の心のどこかで生きている、
そのことを何て言うと思う?」。
夢二、夜空を見上げている。
闇(やみ)の中の点状(てんじよう)の光、
無音(むおん)の音が聞こえるような、
聞こえないような大空。
風が吹く。波の音が、今度は海の方から聞こえる。
『死後生(しごせい)』。なかなか、いい言葉だろ。

徳永進『死ぬのは、こわい?』より

著者の徳永進さんは、ホスピスケアのある、
鳥取は「野の花診療所」の院長先生。
「院長つったって、医者はボクひとりしかいないからさあ」
生と死が毎日隣り合わせの職場。
かすかないい香りがする。
小さな野の花がそこかしこに。
「あのねえ、中2の男子を、
 ボクのあとくっついて来させる。いい?」
「え」
「ボクの仕事、
 ここの診療所のみんなのこと、
 ここで起きてること、
 彼にすべて見せたいの」
「あ、いいですね、彼の名前は何と」
「え〜と、なんだっけな、あ、そうそう「夢二」にした。」
つづいて院長は、どこまでも明るく、元気に、
2畳弱、ほの明かりのある小さな部屋のドアを開ける。
「見て見て、ここ、瞑想室ね。
 死ぬまえは、ひとはひとりになりたくなるでしょ。
 けっこう順番待ちだよー。
 やっぱ、作ってよかったなー。」
そうして1年間、夢二くんは、
回診のときも往診のときも、
診療所のお祭りのときも、
霊柩車と救急車が同じ晩に来たときも、
古田さんや夏美さんが家族に見守られて死んだときも、
ずっと院長といっしょだった。
もうすでにこの世にはいなくて、
院長が思い出として語ってくれた、
不思議なことばを残して亡くなった高2の鈴木くんや、
酒好きだった伸二さんのことも、
なぜかすごく気になるようだった。
いっぽう院長は、「死後生」とか「生誕死」とか、
「天寿がん」とか、聞いたこともないいろんなことばを、
夢二くんに、一生懸命教えていたように思う。
夢二の反応にがっかりしたり、びっくりしたりしながら。
本ができつつあるとき、私は院長先生に思いきって、
聞いてみた。
「ずっと先生のあとをくっついている夢二くん、
 だれなんだろうか。」
「たぶん中2のときのボク。」

(編集担当 清水)





その3 自分が書けることしか、書けない。
糸井 たとえば、このシリーズが
詩集というかたちをとっていれば
まだなんとか、らくなのかもしれないけれども、
この「よりみちパン!セ」は、ちがう。
原寸大で読者に向かいあうということをしています。
ですから、まずは
読者に向かい合うところに
たどりつくまでがたいへんです。
みなさん、よく書いたし、
著者にお話を持っていって
引き受けさせた清水さんもすごいなあ。
清水 いえ、ふつうです(笑)。
この本は中学生以上の年代に向けて
書かれたものですが、
著者の方の多くが、
「その年代の人たちと
 共有しているものがない」
と、まずは考えているところが
いざ読者に向かい合おうとしたときに
引っかかるところかもしれませんね。
でも、その引っかかりは、
決して意味のないことじゃないと思うんです。
たしかに表面的には、共有しているものは
なにもないかもしれないけれども、
もしかしたらちがうところで
つながることができる可能性があるということだから。

著者のみなさんにとっては、
「下手をすると言っていることが
 ぜんぜん伝わらないんじゃないか、
 理解されないんじゃないか、
 そしてそれももしかしたら
 自分の思い込みなんじゃないだろうか」
とか、いろんな心配があるわけです。
ふだんものを書くときの前提とは
まったくちがう。
著者のみなさんが、
そうやって、言葉に対して迷ったり、謙虚になったり、
大胆になったりしながら
コミュニケーションを一(いち)から
考えていくところがおもいしろいですよね。
心の動きをおもしろく感じるんですけれどもね。
糸井 著者のみなさんは、
どういうところに気持ちを持っていって
読者に伝わるものを
書けるようになるんですか?
清水 いろいろと試行錯誤されながら、
「結局は自分の書けることしか書けない」
というところにストーンと落ち着いて、
書くものや書き方が決まり、筆が動くようです。
私などは、最初からスラスラ書き出した場合とは
伝わり方ががちがう、と
信じているようなところがあります。
とにかくそういう余計なプロセスが
このシリーズの独自性につながっていると思います。

(ふたりのはなしは、つづきます)

2006-01-15-SUN



さーて、おたよりを紹介します!

=
ほぼ日で「パン!セ」に出会うとは思いませんでした。
自分(28歳)も数冊所有しております。

雑誌の片隅に載った「人生相談」を単行本にしたような
スクラップを代行してくれたような本です。

自分が中学生のときに読めていたら‥‥と
素直に思います。
いまだって、随分いいですけど。
自然にそう思います。

確かに‥‥執筆を引き受けるのは難しそうです!
(I)



=
ほぼにちわ。
実はうちに「よりみちパン!セ」が全巻あります。
創刊されたとき、こどもは4年生だったのですが、
「ほしいと思ってから買いはじめたのでは遅い」
と思い、買いはじめました。
こども(6年生)は物語は好きで読むものの、
このシリーズはまだ読んでいません。
でも、目に付くところに置いています。
ともだちにも勧めていますが人によって
反応はまちまちです。

どの本もいままで読んだことのない内容で
よいと思いましたが、
特に「さびしさの授業」と
「バカなおとなにならない脳」の
二冊がよかったと思います。
とても感ずるところがありました。
ほぼ日さんの対談で裏話が聞けるのが楽しみです。
(エス)



=
この連載、うれしいです。
「よりみちパンセ」シリーズ大好きなんです。
28歳なんですけど。

重松さんの「みんなのなやみ」1巻の帯のコピー
「だいじょうぶ。希望はキミのなかに、ちゃんとある。」
に元気をもらっています。
(K)



=
直接「よりみちパン!セ」の話じゃないのですが、
大好きなほぼ日に
大好きな100%ORANGEさんの絵があったので、
嬉しくなりました。
ちょっとしか挿絵はないけど、
ページを開けると嬉しくなります。
(ステレオ)



みなさんも、どしどしおたよりを
お寄せくださいね。
アドレスは、postman@1101.comです!




(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun