よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。



この本の目標は、「とは」力と
「なぜ」力をつける、です。

同じ気持ちで
同じ方向に進もうとしている人が
集まっているときには、
「とは」とか「なぜ」なんて、
必要ありません。
そんなことをしなくても、
わかりあえるし、
対立はしませんから。

でも、別の利害をもっていて,
別々の方向に進もうとしている人が
集まるのなら、そうはいきません。

暴力は避けたい。
だけど、自分の主張も通したい。
自分のたいせつなものは、
ちゃんと自分で守りたい。
そういう人に必要なのは、
「とは」と「なぜ」の力です。



生き抜くための数学入門

新井紀子

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編集者というのは、
たいてい数字の話に弱いもので、
「原価率が何%で、利益は、、、」なんて話題になると、
誰かに助けをもとめたくなります。僕もまあ、
そんなタイプの編集者なので、
このたび「数学」の本の編集を
お手伝いすることになって、
正直なところ、ちょっと心配でした。

でも、新井紀子さんの著書を読ませていただき、
「数学」についてのイメージが、ずいぶん変わりました。
「ノートに円や四角形を描きなさい」と言われれば、
僕たちはコンパスや定規を使って、
円や四角形を、簡単に描くことができます。
でも、「円とは何ですか?」「四角形とは何ですか?」
なんて突然聞かれると、戸惑ってしまいます。

同じように、マイナス1とマイナス1を掛けたら
プラス1になることは、知っています。
でも「なぜ、そうなるの?」と問われたら、どうでしょう?
あたりまえと思っていることも、あらためて
「とは?」「なぜ?」と質問されると、
きちんと説明するのは意外に難しいものですね。

僕たちは、数学の勉強で、
いろいろな図形の面積や体積の求め方を習ったり、
複雑な計算式の解き方を覚えたりしてきました。
たいていは、公式を丸暗記しておけば、なんとか答えは
出せるけど、試験が終わったとたんに
全て忘れてしまいます。
じゃあ、なんのために長い時間かけて、
数学の勉強なんてしてきたんだろうって、空しくなります。

新井紀子さんは、
『生き抜くための数学入門』の中で、
数学の勉強でほんとうに大切なのは「とは」「なぜ」の力を
鍛えることだとおっしゃっています。
それは、根本から問い直し、
筋道を立てて説明できる力を身につけること。
なるほどなあ、と思います。

数学というと、とかく数字が得意な
理系の人のものと思ってしまいがちですが、
僕たちのような文章を扱う仕事にも、それは大切な力。
そればかりでなく、
こんな数学体験が、あやふやな情報や、
へんな出来事がいっぱいあるこの世の中で、
自分を見失わずにしゃきっと生き抜くために、
必要なエネルギーになると思うのです。

(編集担当・小宮山民人)

2007-07-19-THU




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