よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。



子どもであっても、
たとえば「殺人」を犯したら、
基本的には大人と同じような「罰」を
与えるべきなのではないか、
という声が大きくなってきた。
すくなくとも少年院を出たあと、
少年たちが被害者やその遺族と
どう向き合っていったのかを
知る必要があるだろう。
ぼくはあらためて思う。
加害者の少年の更生にとって、
被害者の直接の声は
本当に不要なものなのだろうか。
一見うつくしい「少年法の理念」こそが、
少年や子どもに家族を殺された人たちに
対して泣き寝入りを強いてきたんだ。



「悪いこと」したら、どうなるの?


藤井誠二+武富健治(マンガ)


(購入はこちらAmazon.co.jp)
 この本は、最初はじつは、
「少年院」についての本、という企画でした。
著者の藤井誠二さんとお話していて、
少年院ってどういうところか、なにをするところか、
少年世代の子どもたちじしんだって、
その世代と接している親や教師も、
意外とみんな知らないよね……
というところから始まったのです。
私なんてそもそも、少年院と少年刑務所のちがいすら、
ロクに把握していなかったわけです。

 無知とはつくづくと、本当に恐ろしいものです。

 少年院ってどういうところか?
よく考えれば、「少年院」という、独立した、
そこで完結する施設なんて、存在するわけがない、
ということを、すぐに思い知らされました。

 予感はしていました。いくつかの少年院や
少年刑務所に取材に行き、教官の話を聞き、
ときには少年たちのグループワークに
参加させてもらいながら、あるとき、
藤井さんがずっとかかわっていらっしゃる、
「少年犯罪被害当事者の会」の集まりに、
いっしょに出席させていただく機会がありました。

 それからです。いまさらながらというか、ともかくも、
本の構成が大きく変わっていきました。

 巻頭にマンガを描いてくださった武富健治さんも、
最初から、ずっとさまざまな取材に
同行してくださいました。
少年院や少年刑務所の取材をはじめとし、
最後の取材は、沖縄に暮らすご夫婦でした。
息子さんを複数の少年によるリンチで殺された、
少年犯罪被害者の方です。
いわゆる「加害者」の更生を目指す
少年院の教官から聞く「少年院」ということば、
「加害当事者」の方々から聞く「少年院」ということば。
そこには、おなじことばなのに、
まったく異なる響きと意味がありました
(ぜひ、本文をお読みください)が、
そこでようやくはじめて、「少年院」ということばに、
とてつもないリアリティを感じ、気が遠くなりました。

 気が遠くなりながらも、取材の中盤から、この本では、
少年による「殺人」あるいは「殺人未遂」事件に
テーマを完全に絞っていくことに決めました。
少年が犯罪を犯した直後から、少年院や少年刑務所に
送られるまでのプロセスからはじまり、
そこでの生活の紹介、そして更生を担当する教官の話、
少年法とはなにか、そしてなぜ少年法が改正されたのか、
加害者の親たちはどうしているのか、
被害を受けた人たちは「ゆるして」くれるのか、
そして加害者の少年は、将来どうなっていくのかなど、
「少年犯罪」に関するさまざまなことがらを、
複眼的に描いていき、最後に死刑の問題に至ります。

 少年犯罪に関するオーソリティである藤井誠二さんと、
その問題にはじめて取り組まれた武富健治さんが、
この難しいいくつもの難問に、
それぞれどう向き合われているか、
そしてさまざまな立場の人たちが、
なにをどう考えているか。

 少年犯罪、そして「死刑」の是非について、
抽象的な議論の多いこのころですが、
まずはぜひ、ご一読ください。

(編集担当・清水檀)

2008-06-02-MON




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