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辛いカレーに限らず、
始めは苦手(嫌い)だったはずの味が、
いつの間にか得意(好き)に
なってしまうことがあるから
人間の味覚というものは
じつに、おもしろい。 |
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どうやったって失敗しない料理。
この包容力はカレーの
最大の魅力のひとつだと言っていい。
何を入れてもどんなふうに作っても、
それらをすべて受け入れて
それなりの味に仕上がるわけだから、
逆に追求し始めたらキリがないのだ。 |
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誰かのために作らなければ、
カレーはおいしくならない。
食べてくれる人のことを
頭に思い浮かべながら、カレーを作る。
それが一番大切なことなんだと思う。 |
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ボクにとって、カレーは、
絶対に手放したくない、
人とのコミュニケーション・ツールだ。
そして誤解を恐れずにもっと言えば、
カレーはボクにとって
大切な大切なオモチャなんだ。 |
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いちばんさいしょに、
水野さんの事務所で、水野さんとお話したときのこと。
約4時間のあいだ、
水野さんの口から縦横無尽に語られた話のうち、
「カレー」以外を話題とするものは、
なにひとつとして、ありませんでした。
最初はそのあまりの偏愛ぶりに、
あきれ果ててみようかと思ったけれど、
時間が進むうちに、だんだんと私の頭の中には、
もしかすると「カレー」というのは、
あの、黄色くてからい、
食べもののひとつとしての「カレー」じゃなくて、
なにか、世界のなかの「海」とか、「山」とか、
「人間」とかに値するような、
そのくせ、いままで忘れられていたような、
大きなひとつの単位だったんじゃないかという疑いで
いっぱいになりました。
いつだって身近なくせに、
けっして特別には語られてこなかった、
そんな「カレー」をあらゆるものに介することで、
「世界」の見えかたも、関わりかたも、
まったくかわってくるのかも……。
水野さんの全身全霊を駆使した、
気分のいい魔法にかかった気がしました。
帰りがけ、もうひとりの編集者と、
夜中の渋谷を、「カレー」をもとめて彷徨ったのは、
いうまでもありませんでした。
(編集担当・清水檀)
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2010-05-14-FRI
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(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun
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