#42 "高倍率な望遠鏡"
ナイフの様な細い月が
黒いドームを切り裂いた。
雑多な虹色に汚れたドームを
毎夜、月が掃除する。
胸を締めつけ
憧れていたモノが
一瞬で色褪せるから
残酷にゴミ袋に詰め込む。
きゅう!小さな悲鳴。
ケッ。
ベランダに座る。
高倍率な望遠鏡。
シャワーを浴びるお姉さんも
道ばたに寝転がるルンペンも
何年も昔に零れた星光も。
レンズが透かし集めて
僕の瞳に注ぎ込む。
月夜の公園で靴紐を結んでる少年。
旅人の寝首を狙うキャラバン。
砂漠で牧草の夢をみる牛。
ビルから携帯電話を投げつけた。
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