SHIRU
まっ白いカミ。

48枚目:「歳をとって弱る。」

 

ゴキブリとひとつ屋根の下で暮らすシルです。こんにちは。

…ていうか勘弁してください。
私は蜘蛛1匹倒すにもティッシュペーパーを
3センチぐらいは束で握りしめる人間。
今日の朝ごはんだってマシュマロだったし
虫一匹殺せないメルヘン野郎にすぎません。
ニセコオロギなんて見た日には…。

引っ越して以来、初のGoki。
ニセコオロギを目撃してこれを書いています。
1匹みつけたら30匹はいると伝え聞く彼ら。
きっとあと30匹。この部屋に巧妙に隠れているのです。
…でも黄金のスタルチュラよろしく
隠れている30匹を上手にみつけると
今度は900匹になってしまって
1人不幸の手紙状態でどうしようもなく
もう自分でも何言ってるかわかってないんですが
何も考えないで魔人バルサンを召還します。

ありんこ

「いでよバルサン、この世界を毒の霧で覆い尽くせ!」

ところがバルサン。
彼が暴れている間の数時間は
飼っている小鳥と一緒に庭に出て
ぼけっとしてないと駄目なので
晴れた日じゃないと喚べません。
梅雨時だってのに…。バルサンのばか!

ああ…それにしてもまだ胸がどきどき。
初恋の子とS・キングと一緒に
お化け屋敷で100メートル競争をしたって
こんなに心臓が脈打つ事はないでしょう。
いったいぜんたい、どうしてこんなに
昆虫って奴らは嫌らしいのですかね。

世の中には変な形の生物はたくさんいますけど
大抵は美味しそうですし。
グロテスクな深海魚だって恐くはありません。
嫌なのはこの虫けらばかり。
特にゴキブリなんて小さいくせに
動きといい脈絡のない飛びかたといい
人をどうしたら恐怖のどん底にたたき落とせるかを
熟知しているかのような動きです。
もしかして太古の昔。人はゴキブリに支配されていて
その恐怖感がいまだ人類の深い記憶の底に
こびりついてたりするんじゃないでしょうか。

ところが、よくよく思い出すと子供の頃って
誰もがそれなりに小さなバルサン(*1)
銀玉鉄砲にだんご虫をこめて生体兵器にしてみたり。
ゴキとまではいかなくても、ミミズやだんご虫。
バッタに蝶にトンボぐらいなら私も手で掴んでいたのです。

それなのにそれなのに。
その当時4、5歳の頃の私が
今、こんちうを手に今やってきたら
たぶん20歳の私は必死で逃げ回るのです。
歳とともに私はなぜか弱くなっています…。
なんてこと!

(*1) バルサン
旧約聖書(クロゴ記)中に登場する伝説の勇者。
ほうさんだんごを手にゴキブリキングを倒して、
人類をその圧制から解放、約束の地へ導いた。

 

シル
shylph@ma4.justnet.ne.jp

from 『深夜特急ヒンデンブルク号』

1999-07-06-TUE

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