104枚目:「ドクター・ヘリバート」
遺伝子工学の世界的権威である ドクター・ヘリバートは 才ある科学者にありがちなことに 子供のような悪戯心と 悪魔のような(もしくは神さまのような) 傲慢さをあわせもっていた。
ある日。
助手のエリスがヘリバート研究室の前を通りかかると 自分の腕だって囓りたくなるぐらい、いい匂いがして…
「今日は実験じゃからひとりにしてくれ。」
そんな博士の言いつけも忘れて 耐えきれなくなったエリスは つい研究室の扉をあけてしまった。
部屋には 口からもぐもぐ何かが飛び出した博士と みたこともない片腕の生物。
それは檻の中から切なげにエリスをみあげた。
あまりに愛らしくって、かしこくって。 それでいて 地球上のどんな生物にもまして 美味しい肉がとれるという新生物。
「"ボナペチ"と命名したんじゃ。」
ヘリバートはエリスに得意気に言った。
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1999-12-06-MON