写真:KKKK(金魚の気持ちを考える会)会長
113枚目:「ほぼ永久金魚すくい」
そんな訳で亡き明治生まれのマイ爺ちゃんは
とても素敵な爺ちゃんだったのです。
そんな爺ちゃんとのおもいで話をひとつ。
当時、私は金魚すくいが大好きな子供でした。
花火大会にあわせて帰省するのが当家の慣習なのですが
その年も花火大会そっちのけで縁日に出かけた私は
一匹も釣れずに…テキ屋のおじさんが情けでくれた
2匹の金魚をさびしく振り回しながら帰りました。
婆:「おや。2匹も釣れたんだ、偉いねえ。」(えらくないよ!)
私:「違うよ、1匹も釣れなかったから2匹くれたんだよ。」
婆:「でもそれはきっと上手だったから金魚屋さんが…」
無理なフォローをする婆ちゃんとそれをじっと眺める爺ちゃん。
それからまた1年後ぐらい。
次に爺ちゃん家(ち)に遊びにいった時のコトです。
爺ちゃんがたくらんでいる顔をしているな…と思ったら
庭に子供用プールが置かれていました。
そしてもうおわかりでしょう。
そこには赤白の金魚がうようよ。
さらに爺ちゃんが懐から取り出したのは
500枚入りの丸くカットされた和紙パック。最中の皮。
片手にひとつずつ掲げたプラスティックの枠が2本。
爺ちゃんが痩せたドラえもんにみえました。
金魚取りをむしり手に取ると
一心不乱に弟と金魚をすくいまくったのですが
よく考えると金魚は無数に泳いでいるし
お小遣いも減らないし
次第に金魚すくいに対して怠惰になってきて
紙を3枚重ねにしてみたり
最中の皮を囓ってみたり
しまいには容器でそのまま金魚すくってみたり。
爺ちゃんにいたっては
「しんちゃん、これなら破けないよ!」
と、和紙の変わりにサランラップを挟んだ
金魚キャッチャーを手渡してきます。
「爺っちゃんナイス!」と思ったのですが
何かそれは違って
私はサランラップの上で跳ねる金魚をみつめながら
ただのビー玉はラムネの瓶に入っているから
届かない夢のままなのだな的な気分になって
でも孫だというだけで無条件にこんなコトをしてくれる
爺ちゃんの愛情が嬉しくて…。
いえ、そういう高級な感情は
いま思い出して勝手にオプションでつけただけで
そのときは金魚はやっぱり無数にいてもな。
とか。思っていたんですけど。
あれは面白かったなあ…。
わしも孫には小さな甘やかしより
まとめて馬鹿なことして強力に印象づけたい。
帰省も墓参りもしてないけど
サランラップで金魚すくいさせてくれた
あなたのコトは忘れてるわけじゃないのですよ、と。
いいわけがましく思いだしてみたり。
これが掲載される頃は
みなさんとっくに仕事初めなのでしょう。
いまさっき、きょとんした気分のうちに年が明けました。
今年もよろしくです。色々と!
シルチョフ・ムサボリスキー
shylph@ma4.justnet.ne.jp
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