SHIRU
まっ白いカミ。

kami-129:「たとえばこんな平行宇宙」
words:Shylphchov feat. Kei Amano
shepherdess:Atumon


「羊の毛を刈るという概念がうっかり生まれなかった人類史」


 

めえめえめえめえめえめえめえめえめえめえめえめえめえ。

その日も疲れた父は家に帰ってくるなり
羊を抱きかかえると背広も脱がずに寝てしまった。
(あなた、家のことなんて羊置き場だと思ってるんでしょう。)

翌朝、羊から知らない香り。
(…ほんとに仕事で遅くなってるのかしら。)

母、クリーニング屋にいって羊をひきとってくる。
溜息をついて羊の耳からタグをとる。

ああっ、羊のせいで春のボクの部屋はけっこう毛だらけさ!
こういうのってなんとかならないのかい、ナターシャ?

あーら、ボブ。そんな時には、このデコ社の抜け毛防止スプレーよ。
気になる抜け毛にさっとスプレーするだけで…。ほら!

ワオ! こいつはなんてクールなスプレーなんだい。
でもこういうのって…きっと、ほら。高いんだろ?

!?

ママー! この羊、お爺ちゃんくさいのー。

最近、食費のあまりかからないエコ羊っていうんですか…あれが

それより、奥さん。この長毛種。冬なんてねもうあったかくて

いまならもう1匹ついて、なんとお値段19,800円。19,800円でのご奉

!??

プロポーズには羊を差し出す風習。
(if O.K. その羊で眠る。 else 青く染めてその羊を返す。)

街の酒場でさえない男がいじめられている。

「お前の羊、青いなー。」
「もう、色落ちねーよ。」

申し訳なさそうな顔をした羊の顔までが青く染まっている。
家に帰り風呂場で羊を洗う男。

排水溝に消えていく青いお湯。
気持ちよさそうな顔をした羊。

!???

「どうしたの寝不足? クマできてるよ。」
「最近、羊の機嫌が悪くて…。」
「餌、変えてみたら?」

「羊と仲良くできないようなヤツは出世しないな。」

『羊と仲良くする101の方法。』

 

「でも俺…なんか、そういうハウツー本って好きになれない。」

 

2000-02-19-FRI

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