SHIRU
まっ白いカミ。

#135 (かってに広告詩→オクスフォード英英辞典)

 

「神さまのことば」

 むかしむかし。
 神さまは山とか森とか海とかアメーバーとか
 いろいろ作られてからぐっすり眠りにつかれた。
 (以下、敬語省略。)
 そして何十億年かして神さまが目をさますと
 そこにはアメーバーからどう変化したものか
 にんげんというぶさいくないきものが繁殖していた。
 神さまはにんげんの世界をのぞき込んでみた。
 そこには自分が作ってないものが色々あってびっくりだった。
 種なしスイカとか携帯電話とかコカ・コーラとかピルとか…
 なによりも神さまがびっくりしたものは
 にんげんたちのつかってる<ことば>という
 変な模様だったり鳴き声だったりするものだった。

 聖書という本がベストセラーになっていて
 そこには自分のことが書かれていると小耳にはさんだ。
 神さまはちょっと照れながら聖書を読んだ。
 すると洪水をおこしたり火事をおこしたり
 身におぼえのないことばかり書かれていてむかついた。
 罪とか罰とか愛とか赦しとか…それってなんだろうと思った。
 にんげんはさわれもしないものを
 ことばにして作れるらしいと神さまは知った。
 神さまは悔しくなってことばについて勉強した。
 ロミオとジュリエットを読んでちょっぴり泣いた。
 そしてその材料としてはアルファベットが26文字と
 オクスフォードの英英辞典が1冊あれば
 すっかり同じものがつくれるんだということがわかった。

 でも神さまは小学校をでてないので作文が苦手だった。
 わたしわ。と書き間違えるたびにむしゃくしゃして
 つい地震や雷を落としそうになった。
 こいつはいけない、と神さまは考えて
 ながいながーい錠前をつくりだした。
 ひとつひとつのシリンダーには
 26文字のアルファベットが刻まれていた。
 かちかちかちとひとつずつ動かしつづけると
 いつしかはそれがカチリとひらいて
 ものすごいことばが生まれるんじゃないか?
 かちかちかち…全部の組み合わせを回してみることにした。
 どうせ自分は死なないから気長に
 それはいい暇つぶしになりそうだった。
 神さまは自分のつくった世界を見守るのも忘れて没頭した。

 

shasho-san@hinden5.com
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2000-03-21-TUE

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