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いままでの記事 2006/03/13  
 
第3回 それは、契約か、愛か。
糸井 岡田さんと同じようなことを、
もっと乱暴な言い方で、ですけど、
岡本太郎が言ってるんですよ。
岡本太郎は
「プロ野球を見るのはくだらない。
 自分よりも余計に
 走れたり打てたり投げられたりする奴を見て
 何がたのしいんだ。
 おまえが打ったり蹴ったりしろ」
と言うんです。
みんなが「やる」権利を持っている。
昔はプロなんかいなかったぞ、ということが
どうも言いたいらしくて。
岡田 ああ、同じですね。
糸井 『プチクリ』と同じようなことを
熱を持って言うと、
岡本太郎になるんですね。
そういえば、なぜ「岡田斗司夫」は、
同じことを言ってるのに
熱を持たないようにしてるんだろう(笑)?

じつはね、ぼくも同じような傾向があるんです。
たぶん、依存することが
嫌いなんだと思うんですよ。
岡田さんは、人に「頼むよ!」とか、
言いたくないタイプでしょう。
岡田 あ、そうです(笑)。
糸井 岡本太郎は「頼むよ!」の人です。
迷惑だと言われても、
「そんなことは知ったことじゃない!」って、
胸ぐらつかんで頼むんだろうな、と思います。
犠牲者もいっぱい出ます。
岡本太郎のような人たちを見ていると、
「できていいなぁ」という思いと、
「俺はしたくないな」という思いが同時にある。

そんな「熱を持たなさかげん」が、
ぼくの愛のなさだと思う。
岡田さんも、そうでしょ?
岡田 そのとおりです。
糸井 岡田さんやぼくは
「私はあなたと別れたいの」
と言われたら、事情を聞いて、
「なるほどなぁ、そりゃ別れたいだろう」
と、言います。
岡田 はい。まったくそのとおりでございます。
「俺はいやだ」と言ったところで、どうなるか?
と、復縁できる可能性が上がるかどうかを
まずは考えて、
その可能性と、みっともないこととの
リスクのバランスを計ります。
糸井 それは温度をなくす発想なんですよ。
「俺はいやだ」と言う人は、そこで相手に
「愛せ」って言ってる、
ということなんです。
そこで、愛、つまり依存が生まれるんです。
ぼくは愛は依存だと思う。

それがないと
「契約」とか「親切」だけになるんです。
ぼくはなんだか、依存がないのはいかん!と
思いはじめたんです。
岡田 ぼくは、ずっと、
「親切」や「契約」という解釈がないから
みんなが苦しんでるんだと思ってました。
「愛」で4万年くらい苦しんでるから、
そんなの、もうやめようよって(笑)。
糸井 でもね、赤ん坊で
「いや、いいよ、いいよ!」
って、遠慮する奴はいない。
あれが依存の最たるものです。
それがわかっているのに
「あ、いいよ、俺は」と言うのは、
なんだかすごく、寂寥感があるんですよ。
岡田 なんでまた、寂寥感があるんですか(笑)。
糸井 ‥‥荒野にね、ひとり歩いてるような
俺なんです。
そんな奴は「勝手にしろ」と、
神様も救わないと思った。
人には何かのつながりがある。
でも、それは契約のつながりじゃなくて、
依存のつながりを前提にしないと、
しっかりつながれないんだと思うんです。
岡田 うーーーーーん。うーーーーーーーん。
依存は愛かもしれない。
けども、やっぱり、その必要性が
あんまりよくわからない。
糸井 依存しないで生きてる人っていないんですよ。
犯罪者だって、きっと
自分が脅せば人はこうするだろうと、
信じてやっているんでしょう。

生まれてきたことそのものが、
自分で意志したものではない。
生命の誕生そのものが強烈な依存だったわけです。
だからぼくは、
「クール」ということを全部やめた、と、
思っている最中なんですよ。
岡田 人間は、ひとりの人間であると同時に、
社会に対しての役目というようなものが
ありますよね?
例えば、電力会社で電力を供給する人は、
その日の気分によって電力を供給するのではなく、
毎日同じように働いて、
毎日同じような仕事を求められる。
たしかに一個人としての幸せは、
依存や愛かもしれないですけれども、
ぼくらはそういうことを
「しない」という約束のうえで、
ここで暮らしているんだと思うんです。

クリエイティブな職業を持つ人もそうで、
とくに糸井さんのところまで行っちゃった人は、
もうあきらめてよ、って
つい思っちゃいます。
糸井さん、ぼくを置いてかないでよ!という、
気持ちです。
そんな「愛だよ」なんていうことは
あきらめようよって(笑)、
約束した仲間じゃないの!
糸井 ぼくはずーっと、30代のときから
「あなたは、置いてかないでよ」って、
言われてきました。
ぼくは、そういう人間なんです。
岡田 じゃ、糸井さんは、
置いてく人なんですね。
しょうがないや(笑)。
糸井さんは、たんなる武将ではないんだな。
つまり、将軍が前線の兵隊を集めて、
戦いの前夜に「愛って何だと思う?」とか
「命の大切さをみんなで話そう」って言ったら、
「俺は明日戦争に行くのはイヤだよ!」と
なります。
でも、糸井さんは‥‥
糸井 そう、俺も撃つのよ(笑)。
岡田 ひどい人だ!
糸井 弾も撃つし、愛も言う。
戦略戦術については
ゲームだと思っているんですが、
「この軍隊はなぜあるのか?」
ということを考えるのが、愛の問題です。
岡田 そうですね。
ちょっと待ってくださいね。
いまから‥‥転向します。
糸井 転向します(笑)?
岡田 ‥‥うーーーん、
いや、愛か。
なるほどなぁ。うーん。
理屈というものは、じつは不自由なんですよ。
理屈はね、理屈しか
話せない人のためにあるものなので‥‥。
いちばんいいのは、
目と目で通じ合うことだから。
糸井 そうだよ、そうだよ。
岡田 うーーーん、どうしようかなあ(笑)?
(つづきます!)
 
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