糸井 |
岡田さんと同じようなことを、
もっと乱暴な言い方で、ですけど、
岡本太郎が言ってるんですよ。
岡本太郎は
「プロ野球を見るのはくだらない。
自分よりも余計に
走れたり打てたり投げられたりする奴を見て
何がたのしいんだ。
おまえが打ったり蹴ったりしろ」
と言うんです。
みんなが「やる」権利を持っている。
昔はプロなんかいなかったぞ、ということが
どうも言いたいらしくて。
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岡田 |
ああ、同じですね。
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糸井 |
『プチクリ』と同じようなことを
熱を持って言うと、
岡本太郎になるんですね。
そういえば、なぜ「岡田斗司夫」は、
同じことを言ってるのに
熱を持たないようにしてるんだろう(笑)?
じつはね、ぼくも同じような傾向があるんです。
たぶん、依存することが
嫌いなんだと思うんですよ。
岡田さんは、人に「頼むよ!」とか、
言いたくないタイプでしょう。
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岡田 |
あ、そうです(笑)。
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糸井 |
岡本太郎は「頼むよ!」の人です。
迷惑だと言われても、
「そんなことは知ったことじゃない!」って、
胸ぐらつかんで頼むんだろうな、と思います。
犠牲者もいっぱい出ます。
岡本太郎のような人たちを見ていると、
「できていいなぁ」という思いと、
「俺はしたくないな」という思いが同時にある。
そんな「熱を持たなさかげん」が、
ぼくの愛のなさだと思う。
岡田さんも、そうでしょ?
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岡田 |
そのとおりです。
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糸井 |
岡田さんやぼくは
「私はあなたと別れたいの」
と言われたら、事情を聞いて、
「なるほどなぁ、そりゃ別れたいだろう」
と、言います。
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岡田 |
はい。まったくそのとおりでございます。
「俺はいやだ」と言ったところで、どうなるか?
と、復縁できる可能性が上がるかどうかを
まずは考えて、
その可能性と、みっともないこととの
リスクのバランスを計ります。
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糸井 |
それは温度をなくす発想なんですよ。
「俺はいやだ」と言う人は、そこで相手に
「愛せ」って言ってる、
ということなんです。
そこで、愛、つまり依存が生まれるんです。
ぼくは愛は依存だと思う。
それがないと
「契約」とか「親切」だけになるんです。
ぼくはなんだか、依存がないのはいかん!と
思いはじめたんです。
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岡田 |
ぼくは、ずっと、
「親切」や「契約」という解釈がないから
みんなが苦しんでるんだと思ってました。
「愛」で4万年くらい苦しんでるから、
そんなの、もうやめようよって(笑)。
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糸井 |
でもね、赤ん坊で
「いや、いいよ、いいよ!」
って、遠慮する奴はいない。
あれが依存の最たるものです。
それがわかっているのに
「あ、いいよ、俺は」と言うのは、
なんだかすごく、寂寥感があるんですよ。
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岡田 |
なんでまた、寂寥感があるんですか(笑)。
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糸井 |
‥‥荒野にね、ひとり歩いてるような
俺なんです。
そんな奴は「勝手にしろ」と、
神様も救わないと思った。
人には何かのつながりがある。
でも、それは契約のつながりじゃなくて、
依存のつながりを前提にしないと、
しっかりつながれないんだと思うんです。
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岡田 |
うーーーーーん。うーーーーーーーん。
依存は愛かもしれない。
けども、やっぱり、その必要性が
あんまりよくわからない。
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糸井 |
依存しないで生きてる人っていないんですよ。
犯罪者だって、きっと
自分が脅せば人はこうするだろうと、
信じてやっているんでしょう。
生まれてきたことそのものが、
自分で意志したものではない。
生命の誕生そのものが強烈な依存だったわけです。
だからぼくは、
「クール」ということを全部やめた、と、
思っている最中なんですよ。
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岡田 |
人間は、ひとりの人間であると同時に、
社会に対しての役目というようなものが
ありますよね?
例えば、電力会社で電力を供給する人は、
その日の気分によって電力を供給するのではなく、
毎日同じように働いて、
毎日同じような仕事を求められる。
たしかに一個人としての幸せは、
依存や愛かもしれないですけれども、
ぼくらはそういうことを
「しない」という約束のうえで、
ここで暮らしているんだと思うんです。
クリエイティブな職業を持つ人もそうで、
とくに糸井さんのところまで行っちゃった人は、
もうあきらめてよ、って
つい思っちゃいます。
糸井さん、ぼくを置いてかないでよ!という、
気持ちです。
そんな「愛だよ」なんていうことは
あきらめようよって(笑)、
約束した仲間じゃないの!
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糸井 |
ぼくはずーっと、30代のときから
「あなたは、置いてかないでよ」って、
言われてきました。
ぼくは、そういう人間なんです。
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岡田 |
じゃ、糸井さんは、
置いてく人なんですね。
しょうがないや(笑)。
糸井さんは、たんなる武将ではないんだな。
つまり、将軍が前線の兵隊を集めて、
戦いの前夜に「愛って何だと思う?」とか
「命の大切さをみんなで話そう」って言ったら、
「俺は明日戦争に行くのはイヤだよ!」と
なります。
でも、糸井さんは‥‥
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糸井 |
そう、俺も撃つのよ(笑)。
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岡田 |
ひどい人だ!
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糸井 |
弾も撃つし、愛も言う。
戦略戦術については
ゲームだと思っているんですが、
「この軍隊はなぜあるのか?」
ということを考えるのが、愛の問題です。
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岡田 |
そうですね。
ちょっと待ってくださいね。
いまから‥‥転向します。
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糸井 |
転向します(笑)?
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岡田 |
‥‥うーーーん、
いや、愛か。
なるほどなぁ。うーん。
理屈というものは、じつは不自由なんですよ。
理屈はね、理屈しか
話せない人のためにあるものなので‥‥。
いちばんいいのは、
目と目で通じ合うことだから。
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糸井 |
そうだよ、そうだよ。
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岡田 |
うーーーん、どうしようかなあ(笑)?
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(つづきます!)