糸井 |
岡田さんは、みうらじゅんと同い年ですね?
たしか村上隆さんも、そのくらいなのかな?
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岡田 |
村上さんは、3つ下です。
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糸井 |
なるほど。
岡田さんも、みうらも、村上さんも、
役割を自分で決めて
そこで邁進しようと踏ん張るタイプの
人たちですね。
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岡田 |
そうですね。
みんな、心はソルジャーなんですよ。
着ている上着の裏地が、迷彩柄。
でも、なぜ戦うかは問わないんです。
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糸井 |
たしかに、みんな裏地がアーミーだね。
みうらは、とにかくレッテルを
自分で張りたがりますよ。
「ロックンロールはそんなことしない」とかね。
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岡田 |
わかりすぎてイヤになりますよ、それ(笑)。
ぼくも「SFはそうじゃない」って
言いますから。
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糸井 |
みうらを見ていると、
「自分自身まで人工生産物であるような
ふりをしたいんだな」
と感じることもあります。
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岡田 |
そうじゃないと、
世の中に自分がいる価値や意味が
よくわからないからです。
糸井さんがおっしゃるように、
無条件で愛してほしいし愛してもらえる、
という自覚なり自信が、
まっっったく、小指の先ほども、ないです。
どうしてかというと、
自分が他人をそのように
愛さないからなんです。
自分が他人を「いい」と思うときは、
何かしらいいポイントが見えるからであって、
「その人だから」ということではないんです。
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糸井 |
「なぁ〜んか、いいなぁ」
ということは、ないんですか?
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岡田 |
ないです。
そういう場合は、言語化されてないだけ。
「言語化できないものがある」なんて
言っちゃったら、
ぼくは物書きなんてできないと思っちゃうから、
言わないです。
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糸井 |
でもね、たとえば
モナリザはダ・ヴィンチの顔に似ていた、
というようなことがあります。
自分にわざと似せたのか、
そのあたりはよくわからないけど、
ダ・ヴィンチは、とにかく
「いい」と思って描いたわけです。
自分に似たものを「いい」と思うのは、
安心感があるからだと思うんです。
そこで「安心感があるから」と
文章化しようがしまいが
「いつも俺は
こういうタイプの奴を好きになるなぁ」
というときには、
先に「好きだ」と思うものですよね?
「何々だから」と、
理念に合わせては、選ばないです。
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岡田 |
そうですね、そうですね、
順番は、そうですね。
あ! 俺が理屈で負けてる!
人生貴重な体験!
はい、つづけてください(笑)。
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糸井 |
はい(笑)。
心や頭が先に反応したことに対して
言葉が追っかけていくんだと思います。
最初は「快、不快」の、
スイッチの1か0かのところで
判断するんじゃないかな。
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岡田 |
うん、うん、うん。
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糸井 |
アメーバのような生物でも、人間でも
「快」のほうに自分が生きる正解があって、
「不快」のほうには生きる正解はない。
「不快」には危険や毒があったりするから、
快へ快へ、行くわけです。
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岡田 |
うーーーん。
好きなものを好きでありつづけなければいけない
と思った瞬間に
人は理屈に頼るのかな。
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糸井 |
楽しくなくなったときには、やめる、
というのは、どう?
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岡田 |
そうですね。そうですが、何かこう、
糸井さんは、中華料理の真髄を語られていて、
ぼくは和食がいい、というような気が‥‥(笑)。
だいいち、ぼくは、自分の欲望じたいに
自信がない、ということもあります。
自分の欲望のレベルが上下するので
それに乗っかりきれないんですよ。
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糸井 |
うん、うん、うん。
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岡田 |
ぼくが心の底から
ぞくぞくする興奮があるポイントは
「うまくいきつつあるとき」なんです。
本を書いてるときでも、
あ、全体構成が見えてきた!
というときがいいんです。
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糸井 |
うん。そういうときは、
うれしいですね。
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岡田 |
アニメを作るときでも何でも、
どんどんものごとが決まりつつあって、
勝算があがっていくときは、
ものすごくぞくぞくする快感がある。
それは「自分がどれくらいやりたいか」に
関係がないんです。
「今回はすごいとこまで行けそうだぞ」
というときが、ものすごく楽しい。
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糸井 |
問題解決型、なんでしょうか。
その問題が、難問なら難問なほどいい?
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岡田 |
いや、難問解決というのは
M的な解釈ですよ。
ぼくはSなので、
「勝算が見えてくれば快感がある」
となるわけです。
難問であればいい、ということではない。
でも、ちょっと‥‥かなり、ぼくは、いま
話していて衝撃ですよ。
自分に関して「そうか!」と
ずっと思っています。
さっき「転向します」と言ったことが、
いまだに、喉のあたりに
ひっかかてるんですから(笑)。
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糸井 |
岡田さんのような人が、怒らずに、
自分のことを
全部説明してくれるという機会にあうことは、
ぼくはほんとにめずらしいから、
ぼくも衝撃です。
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岡田 |
ハハハハハ。
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(つづきます!)