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いままでの記事 2006/03/20  
 
第8回 ルールは、あったほうが幸せか。
岡田 行きつけの店のサービスというものが
ぼくは嫌いなんです。
行きつけの店でサービスしてくれるということは、
行きつけじゃない人には
冷たくあたるわけですよね。
その不均一さが、ぼくはイヤなんですよ。

そんな、常連かそうでないかというようなことで
サービスの多寡をやるのは、
プロの技ではないな、と
つい思っちゃう。
もし、自分の家であれば
友達が来たら「おうどうぞ」、
知らない人が来たら「帰ってください」は
あたりまえなんだけど、
プロだったら、理性の限り
均一なサービスをしてほしい。
でないと、安心してこの世の中に参加できない。
すべてを気持ちで決められたら、
恐くてやりきれないです。
糸井 世の中って、恐いんですよ。
どこまでも「好きな人のことは好き」なんです。
それがたぶん、現実でしょう。
岡田 そうですよね。
いやだなぁ。
この、「いやだなぁ感」はいやだなぁ!
ぼくは、糸井さんに
「んー、そうだね、でも、
 そこは無理してでも均等に」
と言ってほしい!!
糸井 ハハハハ。
世界をそういうふうには、できないよ。
岡田 わちゃー!
さっきも言いましたけど、
ぼくより上の世代の人たちが、
なんだか15年くらい前から
「人間のあるがままの状態でいいじゃん」
と言い出したように思うんです。
大人であることを
やめちゃったような気がするんですよ。
そういうことを言うのは青年のはすなのに。
「あ!これはえらいことになるぞ!」
と思いましたよ。
糸井 でもね、
ドラマの中に出てくるような
しっかりした大人、というのは、
「こういう人がいたらな」
というものが描かれるだけですから、
現実はそういうわけにはいかないですよ。
岡田 いやいや、そういうモデルタイプがいないと、
みんなユルユルになる一方ですよ。
物語にいる「あったらいいだろうな」という
タイプすら見失ってしまっては、
生きにくいですよ。
人は、物語化しないと
生きられないとおっしゃったのは、
糸井さんじゃないですか(笑)!!
糸井 そうですね(笑)。
岡田 みんな、それぞれの歌を歌わないと、
モデルケースがないと、
しんどいと思います。
自分自身で目標を探せるほど強くないし。
みんながそういう幻想をいだいてでも、
規律側のことを言うのが大人の役目だと、
ぼくは思っちゃうんです。
糸井 う〜ん。規律というものをつくっても、
いつも「どのくらい守れるか」
という問題があると思う。
岡田 規律にグレーゾーンをどれくらい設けるか、
ということが出てくると思います。
さっき言った、
「均一した商売をするのがプロだ」
という考えと同じように、
ぼくは、法はできるだけ平等であるべきだ、
という考えを持っています。

法律が増える一方なのはしかたがない。
個人の判断にゆだねるグレーゾーンは
ある程度は設けるんだけども、
そのためには中心となるモデルケースを
きっちりわかりやすいように
まとめなきゃいけないと、考えちゃいますね。
糸井 熱いコーヒーをこぼして火傷をしたら
客か店のどちらが悪いか、のように、
いまは実際にルールがどんどん増えています。
ルールは、放っておくと、
無限に増えていくような気がするな。
岡田 それは、グレーゾーンが
ルールに侵略されつつあるということですね。
それはぼくもストレスだと思います。ただ、
グレーゾーンが規律の本来のかたちなんだとも、
無秩序で大丈夫だとも、ぼくは言えない。
糸井 決まりというのは、
必要あるから考えるもので、
ほんとうは、ないのが理想なんですが、
そういうわけにはいかない。
でも、みんなが文句がないような不公平だったら
別にあってもかまわないと思うんです。
岡田 それは、闇市の親方みたいな考え方ですね(笑)。
トタン屋根でみんな、
雑炊かなんかやってて、
そこで糸井さんが、
「おお、みんな、勝手にやっていいんだよ!」
「ちょっと待てよ、おまえ、
 それは見逃せないよ俺は」
なんてやってる姿が、目に浮かびます。
糸井 それ、ぼくは理想ですね(笑)。
野良猫の社会のように、
ルールがあっても裏があるし、
破る奴がいるし、無闇に守る奴がいる。
何でも目くじら立ててルールを作って
たとえば、プチクリでたのしくやっている人に
「定職を持ちなさい」なんて人がいたら、
いやですよ。
岡田 でも、ルールがあることで
ようやくグレーゾーンが
活躍できるんだと思うんです。
誰かがキリキリって締めてくれたら、
やっと「遊べるなぁ」ということになる。
糸井 そこは、締めちゃダメなんじゃないかな?
せっかくみんな
ぶったり蹴ったりもせず、
元気で生きてんだから。
でもね、石原慎太郎都知事が
カラスを退治するのを見ると、
すげえな、と思うことは確かです。
ほんとにカラス、退治しましたね。
岡田 しました。いなくなりましたね。
糸井 行政手腕というのは
あるんだなぁと思いました。
石原さんのような人がやることって
やっぱり上手で、感心します。
岡田さんも、ああいう人なんでしょうね。
岡田 なるほどなぁ‥‥おせっかいなのかなぁ。
おせっかいをやめようかなぁ。
というより、ぼくは交通整理をしたいんですよ。
糸井 やっぱり岡田さんは究極のSですねぇ(笑)。
おそらく、何かのかたちで
都市計画のようなものをしたいんでしょうね。
そういった、Sというか、
「オペレートしたい人たち」の争いが、
ずっと歴史を作ってきてるんだなと、
思いますよ。春秋戦国時代から。
岡田 自分が世界支配しないよりも、するほうが、
みんなが幸せになるんだと
本気で思っているんです。
(つづきます!)
 
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