岡田 |
行きつけの店のサービスというものが
ぼくは嫌いなんです。
行きつけの店でサービスしてくれるということは、
行きつけじゃない人には
冷たくあたるわけですよね。
その不均一さが、ぼくはイヤなんですよ。
そんな、常連かそうでないかというようなことで
サービスの多寡をやるのは、
プロの技ではないな、と
つい思っちゃう。
もし、自分の家であれば
友達が来たら「おうどうぞ」、
知らない人が来たら「帰ってください」は
あたりまえなんだけど、
プロだったら、理性の限り
均一なサービスをしてほしい。
でないと、安心してこの世の中に参加できない。
すべてを気持ちで決められたら、
恐くてやりきれないです。
|
糸井 |
世の中って、恐いんですよ。
どこまでも「好きな人のことは好き」なんです。
それがたぶん、現実でしょう。
|
岡田 |
そうですよね。
いやだなぁ。
この、「いやだなぁ感」はいやだなぁ!
ぼくは、糸井さんに
「んー、そうだね、でも、
そこは無理してでも均等に」
と言ってほしい!!
|
糸井 |
ハハハハ。
世界をそういうふうには、できないよ。
|
岡田 |
わちゃー!
さっきも言いましたけど、
ぼくより上の世代の人たちが、
なんだか15年くらい前から
「人間のあるがままの状態でいいじゃん」
と言い出したように思うんです。
大人であることを
やめちゃったような気がするんですよ。
そういうことを言うのは青年のはすなのに。
「あ!これはえらいことになるぞ!」
と思いましたよ。
|
糸井 |
でもね、
ドラマの中に出てくるような
しっかりした大人、というのは、
「こういう人がいたらな」
というものが描かれるだけですから、
現実はそういうわけにはいかないですよ。
|
岡田 |
いやいや、そういうモデルタイプがいないと、
みんなユルユルになる一方ですよ。
物語にいる「あったらいいだろうな」という
タイプすら見失ってしまっては、
生きにくいですよ。
人は、物語化しないと
生きられないとおっしゃったのは、
糸井さんじゃないですか(笑)!!
|
糸井 |
そうですね(笑)。
|
岡田 |
みんな、それぞれの歌を歌わないと、
モデルケースがないと、
しんどいと思います。
自分自身で目標を探せるほど強くないし。
みんながそういう幻想をいだいてでも、
規律側のことを言うのが大人の役目だと、
ぼくは思っちゃうんです。
|
糸井 |
う〜ん。規律というものをつくっても、
いつも「どのくらい守れるか」
という問題があると思う。
|
岡田 |
規律にグレーゾーンをどれくらい設けるか、
ということが出てくると思います。
さっき言った、
「均一した商売をするのがプロだ」
という考えと同じように、
ぼくは、法はできるだけ平等であるべきだ、
という考えを持っています。
法律が増える一方なのはしかたがない。
個人の判断にゆだねるグレーゾーンは
ある程度は設けるんだけども、
そのためには中心となるモデルケースを
きっちりわかりやすいように
まとめなきゃいけないと、考えちゃいますね。
|
糸井 |
熱いコーヒーをこぼして火傷をしたら
客か店のどちらが悪いか、のように、
いまは実際にルールがどんどん増えています。
ルールは、放っておくと、
無限に増えていくような気がするな。
|
岡田 |
それは、グレーゾーンが
ルールに侵略されつつあるということですね。
それはぼくもストレスだと思います。ただ、
グレーゾーンが規律の本来のかたちなんだとも、
無秩序で大丈夫だとも、ぼくは言えない。
|
糸井 |
決まりというのは、
必要あるから考えるもので、
ほんとうは、ないのが理想なんですが、
そういうわけにはいかない。
でも、みんなが文句がないような不公平だったら
別にあってもかまわないと思うんです。
|
岡田 |
それは、闇市の親方みたいな考え方ですね(笑)。
トタン屋根でみんな、
雑炊かなんかやってて、
そこで糸井さんが、
「おお、みんな、勝手にやっていいんだよ!」
「ちょっと待てよ、おまえ、
それは見逃せないよ俺は」
なんてやってる姿が、目に浮かびます。
|
糸井 |
それ、ぼくは理想ですね(笑)。
野良猫の社会のように、
ルールがあっても裏があるし、
破る奴がいるし、無闇に守る奴がいる。
何でも目くじら立ててルールを作って
たとえば、プチクリでたのしくやっている人に
「定職を持ちなさい」なんて人がいたら、
いやですよ。
|
岡田 |
でも、ルールがあることで
ようやくグレーゾーンが
活躍できるんだと思うんです。
誰かがキリキリって締めてくれたら、
やっと「遊べるなぁ」ということになる。
|
糸井 |
そこは、締めちゃダメなんじゃないかな?
せっかくみんな
ぶったり蹴ったりもせず、
元気で生きてんだから。
でもね、石原慎太郎都知事が
カラスを退治するのを見ると、
すげえな、と思うことは確かです。
ほんとにカラス、退治しましたね。
|
岡田 |
しました。いなくなりましたね。
|
糸井 |
行政手腕というのは
あるんだなぁと思いました。
石原さんのような人がやることって
やっぱり上手で、感心します。
岡田さんも、ああいう人なんでしょうね。
|
岡田 |
なるほどなぁ‥‥おせっかいなのかなぁ。
おせっかいをやめようかなぁ。
というより、ぼくは交通整理をしたいんですよ。
|
糸井 |
やっぱり岡田さんは究極のSですねぇ(笑)。
おそらく、何かのかたちで
都市計画のようなものをしたいんでしょうね。
そういった、Sというか、
「オペレートしたい人たち」の争いが、
ずっと歴史を作ってきてるんだなと、
思いますよ。春秋戦国時代から。
|
岡田 |
自分が世界支配しないよりも、するほうが、
みんなが幸せになるんだと
本気で思っているんです。
|
(つづきます!)